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アナウンサー 手島 里華さん

「震災の時、ラジオは強力なメディアになります。だからこそ、生き延びるための正確な情報と心を癒し、リラックスできるような情報を伝えていきたいんです」そう話すのは東京のFM局「J-WAVE」のアナウンサー・手島里華さん。
阪神・淡路大震災のときも、多くの被災者が情報を得たのはラジオからでした。昨年から民放ラジオ局による緊急地震速報も開始。ラジオは震災時に何を伝えようとしているのか、お話を聞きました。

必死に耳を傾けている人に正確で安心できる情報を

 中越地震後の新潟を取材していた手島さんは一人のお母さんに出会いました。小さい子どもを二人連れ、途方に暮れていたそうです。
「お母さんは家に帰りたいのですが、子どもたちは恐くて家に入りたくない。心理的なショックは和らげてあげたいけど、買ったばかりの家を手放すわけにはいかないのでどうしたらいいのか、と話していました。救援物資も大切ですが、被災した方の心に寄り添って、話を聞くことも重要なんだと実感しました」
 こうした取材を通して、ラジオから伝えられることは何かをあらためて考えたそうです。
「地震が起きて、どんな生活になっているのか、私たちには想像もできない。だからこそ、被災された方の言葉をダイレクトに伝えたいんです。ラジオは声だけで想像してもらうメディア。『つらいんです』と言わなくても、話すイントネーションや声の調子で伝わることも大きいんです」
 そう話す手島さんが、再び新潟の人に出会ったのは、東京マラソンに出場したときでした。
「ゴールしてぐったりと疲れきっていたとき、おにぎりを配っている人がいたんです。聞いてみたら新潟の方でした。震災のときに東京からたくさんの人がボランティアに来てくれたんで、恩返しがしたいと新潟のお米で作ってきたそうです」
 確実に広がっているボランティアの輪。阪神・淡路大震災からと言われていますが、震災時のラジオ放送が変わったのもこの震災がきっかけ。
「阪神・淡路大震災を教訓に、『ラジオライフラインネットワーク』を立ち上げたんです。震災が起きたときに必要な情報に“いつ電気が復旧するのか”“水の供給はどうなるか”などがありますが、どの放送局もこうした情報を得ようと殺到すれば現場は混乱してしまう。そこで、NHKと民放ラジオ6局と東京電力、東京ガス、NTT東日本などの会社で協力して、震災後にとりまとめた情報を放送することにしました。どこの局でも同じ情報が聞けるんです」
 現在、“防災の日”と“防災とボランティアの日”には、予行演習をかねて、各社共通の10分弱の番組を放送しています。また、ラジオでの緊急地震速報も始まりました。
「速報を受信したら、機械による音声を流すのですが、誤差はあります。正しい数字や状況をいち早く把握し、どのように伝えるかが、送り手側として一番の課題。ラジオライフラインネットワークもそうですが、私たち自身が、日頃から緊張感を持っていなければ、何人もの人を救うことはできません。電話さえあれば現場から声が届けられるラジオは速報性のあるメディアですし、声というのは五感に訴えることができる。その可能性を信じて、頑張っていきます」
 ラジオから聞こえる優しい声には強い意志が秘められていました。

手島里華さん
撮影:花井智子
手島里華さん
Profile てじま・りか
東京都出身。立教大学卒業後、ニッポン放送、TOKYO FMを経て、J-WAVEに入社。「J-WAVE LIFE INFORMATION」「J-WAVE EC ONLINE TOKYO PREMIA」「J-WAVE Brand-new J Seven Seas」などの番組でメインナビゲーターを務める。走ることが大好きで、第2回東京マラソンでは3時間19分という素晴らしいタイムで完走。
いざという時のために手島さんの職場のデスクに置かれているシューズ。
自宅には阪神・淡路大震災の被災体験をもとに作られた48時間防災セットを用意。震災後、救援物資が届く2 、3日を生き抜くためのセットだ

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