Topics 2009年 防災とボランティア週間

REPORT 3 新宿区・工学院大学 学生がボランティアとして主体的に参加 新宿駅周辺滞留者対策訓練

工学院大学は、学生に防災ボランティア活動のきっかけを提供。平成20年には、新宿駅前滞留者対策訓練に参加した。

防災ボランティア活動のきっかけづくり

 JR新宿駅西口から徒歩5分のところにある工学院大学は、首都直下地震などに備え、「学生の安全を確保すること」と、「学校が地域の防災拠点として、普段から地域に貢献すること」が学生の安心に繋がると考え、地域の防災マップづくりや学生ボランティアの育成などを行っている。平成20年には、「いのち・つなぐ・ちから—学生連携型地域防災拠点の構築—』」が文部科学省の学生支援GPに選定された(※)。
 学生ボランティアは、災害時の情報収集、救援・救護などの研修や訓練を重ね、地域の防災活動に役立てるよう備えている。

※独立行政法人日本学生支援機構
平成20年度版 事例集工学院大学「いのち・つなぐ・ちから—学生連携型地域防災拠点の構築—』」
https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h20/01/pdf/jireih20_010.pdf (PDF形式:1.1MB)別ウインドウで開きます

新宿駅前滞留者対策訓練を実施

 東京都では、首都直下地震が発生した際、新宿駅周辺に約16万7000人の滞留者、約9万人の帰宅困難者が発生すると推測している。新宿区では、平成20年1月25日と10月22日、東京都の重点事業である駅周辺滞留者対策として、「新宿駅周辺滞留者対策訓練」を行った。
 訓練には、自治体や地域の事業者などが参加。工学院大学には新宿駅西口地域本部が設置され、災害情報受発信訓練、超高層ビルの発災対応型訓練・傷病者対応訓練が行われた。
 学生ボランティアは、仮設トイレなどの設置、傷病者の介護や軽傷者の誘導、トリアージなどを実施。また、携帯電話などを利用した、広域帰宅支援情報の収集・発信を行い、新宿駅周辺からの情報を、後方支援施設である工学院大学・八王子キャンパスの学生が取りまとめ、長距離無線LANで受発信する試験も行った。
 新宿区区長室危機管理課の藤林文男さんは、「地区内の大学や学生がこういった取り組みを行ってくれるのは珍しいし、たいへんありがたいです」と、協働に感謝を表した。

上/JR新宿駅構内から、鉄道事業者や百貨店、ホテルなど地域の事業者が、多くの滞留者を広域避難場所へ誘導する訓練。
左/工学院大学1階ロビーでトリアージを訓練体験する学生ボランティア。運搬役だけでなく傷病者役も行う

上/学生ボランティアなどから寄せられる交通情報などを、西口対策本部でまとめることで、ほかの帰宅支援施設でも同じ情報が見られる
左/目や耳が不自由な、要援護者支援体験をする学生

鉄道事業者や病院、百貨店などの企業の従業員も、徒歩帰宅者に向けての情報を入力し、発信する

約15万1200人が避難できる新宿御苑。ここで数多くの被災者が、帰宅支援情報を受け取る

新宿駅周辺滞留者対策

大学や地域などの継続的な取り組みが必要

 工学院大学で新宿駅周辺滞留者対策訓練を担当した久田嘉章教授は、「東京DMATや東京医科大学病院を含めたトリアージを体験し、学生間の認知も高まりました。防災活動は、大学や地域といった、継続的に続けられる基盤が必要です。地域の共同体として、今後も新宿区と協働していきたい」と、語っている。

久田嘉章さん

工学院大学 工学部 建築学科 教授 久田 嘉章さん
「2007年より行っている地域の防災マップづくりでは、学生が積極的に町へ入っていきます。学内にいると受け身になりがちですが、地域の住民の方と話すことで、自発的に取り組んでいけますし、地域の方に、学生を認識してもらうこともできます」と、防災の面で成果が上がったこと以外に、学生の自発性の向上も見られていると語った。

資料提供:新宿区、工学院大学 撮影:坂本政十賜

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.