Topics 2009年 防災とボランティア週間

REPORT 2 料理ボランティアの会 被災地を料理で支える一流の腕

「被災者」ではなく「お客様」へ……料理人の姿勢と誇りをもって、活動を重ねている人たちがいます。

「炊き出し」ではなく「料理」を振る舞う

 高級ホテルの料理長、有名寿司職人、人気パティシエ、行列のできるラーメン店のオーナーなどが被災地を訪れ、その場で仕上げ、盛り付けをして振る舞う活動を続けているのが、「料理ボランティアの会」。平成16年に発生した新潟県中越地震で、「被災者のために、料理界でも何かできないか?」と、旧知の間柄である料理評論家の山本益博さんと、コンサルティングなどを行っている株式会社ギリー代表の渡辺幸裕さんが立ち上がりました。その想いに一流料理人たちが共感し、一行は新潟県越後川口町と長岡市へ。会場にいすとテーブルをセッティングし、被災者に「炊き出し」ではなく、「料理」を振る舞いました。その後、継続的に活動できるよう、正式に会を発足。平成19年には能登半島地震、平成20年に新潟県中越沖地震の被災地も訪れました。

おいしいものを食べて元気を出して!

 「料理ボランティアの会」の特徴は、地震発生直後ではなく、数カ月後に行動を起こすこと。報道されなくなった頃に被災地を訪れて、被災地の支えとなっています。そして、前菜、主菜、デザートを揃えて楽しい食事を演出し、一流料理人たちによるオリジナルメニューが作られること。例えば、2軒のラーメン店が共同で作ったスープや、5軒のホテルで別々に作られたブイヤベースを持ち寄って作ったブイヤベースご飯など。さまざまな有名店のデザートが同じテーブルに並ぶのも、他ではない機会です。
 「みんなの善意だけで実現している活動です。『おいしいものを食べて、元気を出してください』を合い言葉に被災地へ行きますが、実際は自分たちが元気をもらって帰ってくるんですよね」と話すのは、会の運営を担っている渡辺さん。料理に満足した子どもに「大きくなったらコックになりたい」と言われたり、仮設住宅に引きこもっていたお年寄りが外に出てきてくれたりと、心温まるエピソードは尽きません。
 「料理ボランティアの会」は、被災地の状況を伝えつつ、活動資金を集めるチャリティーも行っています。海外では盛んな慈善活動ですが、「社会的な影響を持つ人たちを巻き込んで、日本に足りないものを作っていきたい」と、渡辺さん。
 「何かあったら行動する」という使命感でつながった料理界のネットワーク。「おいしかった」と言われるうれしさと、協力してくれる人たちの熱意に支えられ、今後も途切れることはありません。

左上/輪島市では、70人の料理人と60人の応援者が約500人をもてなした
右上/運営規模が最も大きかった柏崎。コックコートのシェフにサービスされ、子どもたちも大満足
左/会場の手配や保健所への申請など、裏方の仕事を引き受けている渡辺さん

山本益博さん

代表 山本 益博さんの想い
「料理は、作る人と食べる人とのコミュニケーションが大切なので、料理人だからこそできる被災地でのお手伝いがある、と思いました。ただ、料理人は一匹狼な上に、異なるジャンルの付き合いがない。そこで、僕がみんなのまとめ役をかってでたわけです。ボランティアは、自分ができる範囲のことを、自然体でするのが一番。今後は、同じような活動が他のエリアでも生まれれば、と思います。自分たちの会が、そのきっかけになるとうれしいですね」

稲村省三さん

パティシエチーム元代表 稲村 省三さんの想い
「能登のときは、独自で下調べに行きました。料理基地からの所要時間、機材の動力源、仮設住宅の向きやトイレの位置などの見取り図も書いたんです。当日、こちらが右往左往しては、せっかくのもてなしが台無しですから。とにかく、お客さまにおいしいお菓子を食べてもらいたいので、問題点は徐々に解決しています。大勢のシェフと被災者の方が同じ時間を共有できる感動は、みんなが抱いています。この経験は、また違った形の活動を生むと思いますよ」

これまでの活動と料理

料理ボランティア活動
平成17年2月20日

「料理ボランティア活動」

新潟県越後川口町

●この日のメニュー
カレーライス、カツサンド、スープ、ラーメン、ロール・ピッツァ、シュークリーム、ショコラ・ショー

川口中学校の体育館で、カレーライスやラーメンなど日本人になじみのある料理で構成。初めての活動ということもあり、スタッフにはどことなく緊張感が。

料理ボランティア活動
平成17年4月4日

「料理ボランティア活動」

新潟県長岡市

●この日のメニュー
ポトフ、ちらし寿司、ショートケーキ、ショコラ・ショー

2回目からは寿司職人も参加。そのほか、寒さが残る季節を考えた温かいポトフや、各有名店のショートケーキも用意され、彩り豊かなメニューに。

新潟ボランティア料理を賞味する会
平成19年2月20日

「新潟ボランティア料理を賞味する会」

東京都・ホテルメトロポリタンエドモンド

長岡市でのメニューを再現し、あえて簡易食器で提供したチャリティー。200人が参加し、開催直後に発生した能登半島地震での活動資金を調達できた。

料理ボランティア活動
平成19年7月8日

「料理ボランティア活動」

石川県輪島市

●この日のメニュー
ローストビーフ丼、にぎり寿司、チョコレートケーキ、バニラ・アイス、マンゴ・ブリオッシュ

2カ所の被災地を訪問。石川県産の食材を使ったローストビーフ丼は、高齢者にも食べやすい柔らかさ。江戸前のにぎり寿司を初めて食べたと感激した人もいた。

輪島ボランティア料理を賞味する会
平成19年9月5日

「輪島ボランティア料理を賞味する会」

東京都・帝国ホテル

輪島市で提供したメニューを再現したチャリティー。2部に分けて行われ、合計400人が参加。チャリティーオークションでは、輪島塗や輪島の塩も販売した。

料理ボランティア活動
平成20年5月25日

「料理ボランティア活動」

新潟県柏崎市

●この日のメニュー
ブイヤベースご飯、シュークリーム、ショコラ・ショー、寿司、ラーメン

総勢120人が参加し、1400人もの柏崎市民が訪れた。新潟県産の海産物や柏崎産の米を使用したブイヤベースご飯は、風評被害をぬぐうことに配慮した逸品。

チャリティーの会
平成20年6月20日

「チャリティーの会」

東京都・ホテルオークラ

柏崎市で提供したメニューを再現して行われたチャリティー。ブイヤベースご飯などが振る舞われた。

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