Topics 2009年 防災とボランティア週間

REPORT 1 日本テディベア協会 テディベアがつなぐ支援の輪

日本テディベア協会は、チャリティーオークションによる義援金の寄付や、ベア自体を贈る遠方からの被災者支援に力を入れています。

オークションで集まった義援金を被災地へ

 愛くるしい表情や肌触りの良さで、手にした人の心を和ませるテディベア。1902年の誕生当初から、単なるおもちゃとしてだけでなく、世界各国でさまざまな社会奉仕活動に役立てられてきました。1993年に設立された特定非営利活動法人日本テディベア協会も、ベアを日本に広めることはもちろん、ベアを介したボランティア活動に携わることが、その主旨に掲げられています。
 協会が初めてボランティア活動を行ったのは、1995年のこと。協会員がアメリカ在住のテディベアコレクター、リンダ・マリンズさんの元を訪れた直後、阪神・淡路大震災が発生したのがきっかけです。被災者を何かの形で支援できないか——。そんな一報が、リンダさんから日本テディベア協会に入ったのは、震災発生からすぐ。そこで協議されたのが、テディベアをオークションにかけて、その義援金を被災地に送るという案だったのです。世界中のテディベア作家に呼びかけて、オークションにかけるベアを集めたのはリンダさん。そして集まったベアを、日本テディベア協会がオークションに出品しました。この時、出品されたベアは99体、落札総額は2200万円。これが全額、ボランティアで被災者の治療にあたっていた医師団体「日本小児精神医学研究会」に寄付されました。その後、2005年のスマトラ沖地震発生の際には、インターネットでのオークションに切り変えて、協会独自で義援金を収集。2007年には中越沖地震の被災者支援に対するネットオークションを行うなど、活動を続けています。

中越沖地震の際、チャリティーオークションに寄付されたテディベア。左から、粕谷育代作、(有)ビーンズ社提供

テディベアがつなぐ支援の輪

ベアの“癒し”効果が被災者の支えに

 日本テディベア協会では、オークションで得た義援金を被災地に送る以外に、ベア自体を被災者に寄付するというボランティアも行っています。その始まりも、阪神・淡路大震災。発生から5カ月後、被災した子どもたちを元気づけようと、200体ものベアが、震災の中心地である神戸市長田区の保育園に届けられました。その場に立ち会った日本テディベア協会の内田陽雄さんは、「最初ははにかんでいた子どもたちが、ベアを手にし始めると表情が一変して、パーッと明るくなったんです。この時、ベアが癒しにつながると確信しました」。これには、同行していた日本小児精神医学研究会の医師も驚いたと言います。ただ、ベアを寄付するには問題も出てきました。病院に入院している子どもたちに寄付する場合、生地から発生するダニや感染症が心配なため、直接子どもたちの手元には届けられず、応接間などに飾られてしまうのです。そこで協力をあおいだのが、日本小児精神医学研究会に所属する、筑波大学付属病院の宮本信也医師。ベアが入院している子どもたちに、どんな良い効果をもたらすのか研究するとともに、その材質が検討されました。そして、2004年に抗菌・殺菌効果のある光触媒素材を使ったテディベアが完成。問題がクリアしたことで、2007年に、筑波大学付属病院の小児科で、本格的な寄付がスタートしました。「被災者や入院患者など、たくさんの子どもに抱いてもらって、不安な気持ちを少しでも和らげてもらいたい」と、内田さんはベアに思いを託しています。

筑波大学付属病院で手渡された、光触媒素材のテディベア。作家が一つひとつ手作りした、愛嬌のある顔立ちが特徴。

光触媒素材の生地は、白一色から始まり、テディベアらしい薄い茶色のものも開発された。吉川照美作

内田陽雄さん

無理せず長く続けることが私たちのボランティアです

日本テディベア協会 専務理事 内田 陽雄さん

「災害発生直後に必要なのは、食べ物など生活必需品。そのため、まずはベアをお金に換えて寄付します。それが一段落してから、傷ついた人たちの心をベアで癒すといった支援が役立つと考えています。私たちなりの社会貢献ですが、これからもできる範囲で続けていきたい」

写真提供:日本テディベア協会


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