Disaster Management NEWS— 防災の動き

Earthquake
中部圏・近畿圏の内陸地震に関する報告 〜東南海、南海地震等に関する専門調査会〜

中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門調査会」(座長:土岐 憲三 立命館大学教授)では、中部圏・近畿圏における内陸直下で発生する地震への防災対策について検討を進めてきました。これまで、想定される震度や被害想定結果を公表してきましたが※、それらを踏まえた被害軽減対策について検討を重ね、このたび、「中部圏・近畿圏の内陸地震に関する報告」としてとりまとめ、平成20年12月5日に公表しました。同報告で提言されている被害軽減対策の主な内容は次のとおりです。

主な被害軽減対策

1.膨大な被害への対応
 膨大な人的・物的被害の発生が予測されていることから、建築物の耐震化、火災対策等の予防対策、救助・救命体制の充実等の応急対策、災害後の復旧・復興対策、避難者・帰宅困難者等への対策等の備えを計画的・戦略的に進め、地震に強いまちの形成を図る。

2.木造住宅密集市街地の防災対策の推進
 近畿圏及び中部圏の大都市部では、木造住宅密集市街地の集積度が高い場所が多く、特に大阪市内は、耐震性の低い古い木造住宅の密集度が全国トップクラスであり、揺れや火災による建物被害、人的被害が発生しやすいことから、市街地の再開発や土地区画整理事業等による面的整備、沿道建築物の重点的な不燃化等を進める。

3.文化遺産の被害軽減
 地震により多くの文化遺産が被災する可能性があることから、貴重な文化遺産を守るため、文化遺産の耐震化や消火設備等の整備に加え、周辺からの延焼による焼失を防ぐため、地域全体の防災力向上を目指す。

4.地下街、高層ビル、ターミナル駅等の安全確保
 名古屋や大阪の中心市街地に分布する大規模な地下街、高層ビル、ターミナル駅等では、膨大な数の人が滞留していることから、施設被害に伴う多数の死傷者やパニックが発生しないよう、施設の耐震化、出火防止対策、落下物防止対策を促進する。また、揺れによる破損や停電等によりエレベータ内の閉じ込め事故等の発生が懸念されることから、地震時管制運転装置の設置の義務化や緊急地震速報を利用した地震時管制運転装置の活用の検討等のエレベータの安全対策を推進する。

5.ゼロメートル地帯の安全確保
 中部圏・近畿圏の湾岸地域にはゼロメートル地帯が広く分布し、地震時に海岸や河川の堤防等が損壊して浸水被害が発生する危険性があるほか、断層付近では地盤が変位することにより、場所によってはゼロメートル地帯が拡大する可能性があることから、堤防等の耐震点検を進め耐震化を図るとともに、水防体制の強化を促進し、公的施設、民間ビル及びマンション等を避難対象施設として活用するための施設利用に関する管理者との協定締結を推進する。

6.大阪湾、伊勢湾に集積する石油コンビナート地域及び周辺の安全確保
 地震により石油コンビナート地域において危険物の漏洩や火災等が生じた場合、周辺市街地への被害波及や環境汚染等の問題が生じるおそれがあることから、危険度に関する情報開示、危険が察知されたときの施設関係者や周辺市街地の居住者や鉄道、自動車等による移動者等に対する避難勧告等や誘導が的確に行われる体制を整備する。

7.中山間地等における孤立危険性の高い集落への対応
 地震により、中山間地域の多くの集落が孤立する可能性があることから、衛星携帯電話等の通信手段の確保、水・食料等の備蓄の促進、ヘリコプター離着陸適地の確保等を進める。

8.東西間交通の確保
 大阪や名古屋周辺を通る新幹線や高速道路が寸断された場合、経済活動への支障等多大な影響が予測されることから、交通インフラの耐震化や代替性の確保、異なる交通手段間の接続性の向上を図る。

9.行政機能や経済機能の継続性の確保
 国、地方公共団体等の防災関係機関は、災害時においても必要となる人員や資機材等を必要な場所に的確に投入できるようにするため、業務継続計画の策定を推進する。業務継続の実現に必要となる庁舎、病院、学校、ライフライン、インフラ施設の耐震性の現状を評価し、その結果を公表するとともに、早急な耐震化を図る。
 また、地震により企業活動が停止すると、その影響は各地に波及するおそれがあることから、企業が事業継続計画を策定することが重要である。国は、事業継続ガイドライン等の周知を図るとともに、企業の防災の取組を評価する手法を提示し、その活用により自らの防災の取組を点検することを促進する。

10.相互連携による災害対応力の強化
 広域かつ甚大な被害の発生が予測されるため、広域的な応急対応を円滑に実施できる広域連携体制の確立が重要である。
 被災者に対する罹災証明の発行に際して、地域間で格差が生じないよう、関係行政機関の間で罹災証明の取扱等に関する広域間調整を行うしくみを整備する。また、被災者が避難先においても支援を受け続けることができるよう、広域的な被災者支援体制を整備する。
 行政による公助だけでは対応に限界があることから、自主防災組織の育成・充実や学校と地域との連携強化、企業による避難者や帰宅困難者等に対する支援体制の整備を促進する。

11.防災情報の見える化
 平常時の地域の災害リスク情報や飲食料・医薬品等の備蓄状況、発災時の各機関の人員配置状況や防災用資機材等の保管場所、数量、輸送状況等に関する情報等の共有を円滑に行うため、GISベースで共通の状況把握ができるようにするとともに、データ規格等の整備を進める。

12.地域防災力等の評価と公表
 地方公共団体、コミュニティ、企業等による防災対策への取り組みを促進するため、各主体の防災力を適切に評価するための評価指標や手法の開発を進めるとともに、防災力の評価実施体制を整備する。

土岐座長から佐藤防災担当大臣への手交の様子

専門調査会(第36回、最終回)の様子。中央が土岐座長

図:中部圏・近畿圏の内陸地震に関する対策の提言(概要)

おわりに

 今後、本報告を踏まえ、政府としては、予防対策から応急対策、復旧・復興対策までを含んだ総合防災対策のマスタープランである地震対策大綱を策定する予定です。
 本報告を含む、これまでの同専門調査会における検討結果等につきましては、以下のホームページからご覧頂けます。
https://www.bousai.go.jp//kaigirep/chuobou/senmon/tounankai_nankaijishin/index_chukin.html

※本専門調査会における公表経緯
・平成18年12月7日:想定震度分布の公表
・平成19年11月1日:建物被害、死者数等の推計結果の公表
・平成20年2月18日:文化遺産の被災可能性の公表
・平成20年5月14日:経済、交通、ライフライン被害等の推計結果の公表
・平成20年8月1日:上町断層帯による浸水可能性の評価結果の公表

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.