第4節 一人一人ができる大規模災害への備え
4-1 事前の備えの重要性
千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震及び南海トラフ地震といった大規模地震が発生した場合、これまでに経験したことのない甚大な被害が生じるおそれがある。特に、南海トラフ地震においては、死者の約7割は津波による被害と推計されており、被害軽減のための対策として、行政においては、避難タワー、避難経路等の整備や防潮堤の整備等の対策が講じられているところである。一方で、より即効性の高い対策として、速やかに避難する意識の向上など、個人が主体的に取り組む対策を進めることにより、被害を大幅に軽減できることが見込まれている。
これまでの防災意識においては、防災対応は日常生活とは別に行うものであるとの意識が強く、防災の取組への一歩を踏み出しづらい環境であった。しかしながら、環境問題を例に挙げると、かつては二酸化炭素等の排出削減に対する意識は浸透していなかったものの、現在では再生可能エネルギーの普及や個人がエコバッグを持参することが定着してきている。このように、防災対応についても日常生活に溶け込ませることにより、備蓄や避難意識などの防災対応が特別なものではなく、当たり前の行動として受け入れられる文化を醸成していかなければならない。
また、日常時と非常時という社会のフェーズ(状態)を分けない「フェーズフリー」の考え方も広がりを見せており、災害時にも役立つ仕組みを普段の生活・経済の中にデザインし、浸透させていくことが重要である。キャンプ道具、電気自動車などの災害時活用、食品のローリングストックといった取組を進めることで、「防災意識」を意識しなくとも、自然と備えが実践される世の中を目指していく必要がある。
大規模地震による被害を軽減するためには、国民一人一人が、各地震発生時に自らが極めて困難な状況に見舞われる可能性があることを、「自分ごと」として受け止めることが不可欠である。その上で、「自らの命は自らで守る」という防災の原則の下、自分でできることは自分で行い、自ら進んで自助・共助に取り組む意識を持ち、自らの命を守る取組を進める必要がある。しかしながら、正常性バイアスにより、災害等の異常事態が起きているのにもかかわらず、「自分は大丈夫」など、無意識のうちに事態を過小評価してしまうおそれが指摘されている。そのため、「自らの命は自らで守る」という原則に加え、「大切な人の命を守る」という意識を持ち、大切な人と一緒に耐震化や家具の固定に取り組むなど、「防災を日常に」する取組を進めていくことが重要である。
