2-3 予防対策の徹底
(1)住宅等の耐震化
建築物の被害は、津波による浸水地域以外では死傷者発生の主要因であり、また、出火・火災延焼、避難者の発生、救助活動の妨げ、災害廃棄物の発生等の被害拡大の要因にもなる。このため、国・地方公共団体等は、膨大な被害を可能な限り減少させるため、住宅、学校、医療施設、公共施設等の耐震化・老朽化対策、家具等の固定・ガラス飛散防止による屋内の安全確保、ブロック塀等の転倒防止等に重点的に取り組んでいる。特に、応急対策活動の拠点や避難所となり得る公共施設・学校、医療・介護関連施設、事業所等の事業継続が強く求められる施設については、天井の脱落対策等の非構造部材の地震対策も併せて推進している。
(2)火災対策
地震発生時に多数の火災が発生した場合、消火活動は極めて困難となることから、「火災を発生させない」、「火災が発生しても延焼を拡大させない」ことを目的に、事前対策と消防力の充実・強化を推進することが重要である。このため、国・地方公共団体は、地震時における火災の発生を抑えるため、建築物の不燃化・耐震化を促進するとともに、関係事業者と連携して、電気に起因する火災発生の抑制に資する、感震ブレーカー等の普及の推進に取り組んでいる。あわせて、電気器具の不適切な使用・維持管理不良に関する注意喚起を実施するとともに、住宅用火災警報器、住宅用消火器等の住宅火災等を防止する機器の普及を促進している。
また、地震に伴い火災が発生した際の初期消火率向上を図るため、国・地方公共団体は、消火資機材の保有の促進や消防水利の確保等に取り組むほか、消火活動を行う常備消防、消防団、自主防災組織等の体制充実を進めている。
さらに、都市部の木造住宅密集市街地等では、建築物の倒壊や火災により物的・人的被害が拡大しやすい特性がある。このため、地方公共団体は、防災上危険な木造住宅密集市街地の解消等の延焼被害の軽減対策を計画的に推進するとともに、周辺の避難場所・避難路の確保と周知など、避難体制の整備を図っている。
(3)土砂災害・地盤災害・液状化対策
地震発生時には、地震動により山崩れ等の土砂移動が生じ、人命や建物等に被害を及ぼすおそれがある。また、地震動により液状化現象が発生すると、住宅の沈下や傾斜、道路面の変形、ライフライン施設の被害など、液状化による被害が地震後の生活に大きな影響を及ぼすこととなる。
国・地方公共団体は、地震に伴う土砂災害の危険箇所の把握に努め、土砂災害対策や河道閉塞対策を推進するとともに、山地災害による被害を防止・軽減するための治山対策を推進している。
また、国・地方公共団体、関係事業者は、ライフライン施設・インフラ施設の液状化対策や、大規模盛土造成地の耐震化等を進めている。さらに、国・地方公共団体は、臨海部等の軟弱地盤の地域を中心に液状化対策を推進するとともに、安価で効果のある対策工法等の技術開発を促進している。
(4)ライフライン・インフラの強靱化
地震発生時においても電気、ガス、上下水道、通信・放送サービス等のライフラインの機能を維持することは、災害時の救命・救助、医療救護及び消火活動等の応急対策の実施に当たって重要である。ライフライン機能の寸断を回避するため、ライフライン事業者は、施設の耐震化・耐浪化・老朽化対策等を進め、特に人命に関わる重要施設への供給ラインの強靱化を図っている。
また、国・地方公共団体、関係事業者は、ライフライン・インフラが相互に依存する関係にあることを踏まえ、多重化や分散化等により、機能維持を図るための対策を進める必要がある。
さらに、ライフラインの利用者においても、事業継続や生活継続の観点から、電源・通信等の多重化・分散化を進めるとともに、停電時の非常用発電設備の整備や燃料の確保等を推進することが求められる。
(5)津波対策
(ソフト対策・ハード対策を組み合わせた総合的な津波防災対策)
被害様相で示したとおり、津波は、甚大な人的被害や住宅・インフラ、経済への被害をもたらす。これらの被害を低減させるためには、将来的なまちづくりと連携しつつ、津波浸水そのものの低減を図るソフト対策・ハード対策を効果的に組み合わせることが重要である。特に、千島海溝地震、日本海溝地震、南海トラフ地震など大規模地震に伴い発生する津波では、津波高が高いため、高い場所又は遠くへの避難が必要であるとともに、津波到達までの時間が短いことから、安全な場所への迅速な避難のため、地域ごとにあらゆる手段を講ずる必要がある。このため、国・地方公共団体等は、海岸保全施設等の整備・維持を基本として、地域住民等の避難を軸に、情報伝達体制、避難場所、避難施設及び避難経路を整備するとともに、防災教育や避難訓練、要配慮者への支援等の総合的な対策を推進している。
(津波の想定規模に応じた対策)
津波災害対策の検討に当たっては、レベル1の津波(最大クラスの津波に比べて発生頻度が高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波)と、レベル2の津波(発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波)という2つのレベルの津波を想定することを基本としている。
海岸管理者(主に都道府県や市町村)等は、レベル1の津波を対象に海岸保全施設等の整備を進め、津波が越流した場合にも後背地の被害軽減を図ることができるよう、海岸保全施設等の効果が粘り強く発揮される構造としている。また、最新の知見に基づいたレベル1の津波に対応するため、必要に応じて海岸堤防等に関する計画を見直し、海岸堤防等の整備や既設の海岸堤防等の耐震対策等を行っている。
レベル2の津波に対しては、「命を守る」ことを目標に、国・地方公共団体等は、住民避難を軸に、情報伝達、避難場所、避難施設、避難路、土地利用等のハード対策とソフト対策を総動員し、それらを組み合わせた総合的な対策を推進している。
具体的には、「津波防災地域づくりに関する法律」(平成23年法律第123号)に基づき、都道府県は、津波浸水想定の設定や津波災害警戒区域の指定を行い、沿岸市町村では、津波ハザードマップの作成・見直し・周知を実施している。また、海岸線等を有する全ての市町村は、地域特性等を踏まえ、津波浸水想定区域の設定、避難対象地域の指定、避難場所・避難路等の指定、要配慮者の避難対策等避難誘導体制の強化等を図っている。特に、積雪寒冷地において、吹雪や積雪寒冷により避難に時間を要する冬季は屋外や寒い屋内での避難は低体温症のリスクが生じる等の特有の課題があることから、屋内空間を備えた避難場所及び積雪等を配慮した避難経路の整備に取り組んでいる。
(早期避難のための普及啓発)
津波による被害を軽減させるためには、国民一人一人が早期に避難する必要がある。早期避難の徹底に向け、国等は、国民一人一人が、「強い揺れや弱くても長い揺れが続けば逃げる」、「大津波警報等を見聞きしたら避難」という避難行動の基本原則を始めとした適切な避難行動を認識し、想定にとらわれず、最大限の避難行動をとる意識を醸成するため、普及啓発を推進している。
また、発災時に住民等へ津波警報等を確実に伝達できるよう、国・地方公共団体、関係事業者は、防災行政無線、テレビ、ラジオ、携帯電話、緊急警報放送、インターネット等を用いた伝達手段の多重化・多様化・高度化を進めるとともに、発信情報の多様化も図っている。




