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令和8年版 防災白書|特集 第3章 第2節 2-1 防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築


第2節 大規模地震・津波災害に備えた国・地方公共団体の主な対策

2-1 防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築

千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震及び南海トラフ地震といった大規模地震の発生時には、災害対応に充てる人的・物的資源が制約され不足するなど、非常に厳しい状況となり得る。このため、自然災害に対して、「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から「行政・地域・事業者・国民が共に災害に立ち向かう」という考え方への転換が必要である。こうした考え方が国民、事業者、地域に浸透し、具体的な行動がとられるためには、国民一人一人の防災意識の醸成(「自分ごと」化)と、社会全体での防災体制の構築が必要である。そして、行政のみならず、事業者、地域及び個人が、大規模地震・津波が発生した際に起こり得る事象を冷静に受け止め、正しく理解するとともに、当事者意識を持って地震対策に主体的に取り組む必要がある。

とりわけ地震に伴う巨大な津波に対しては、「命を守る」ことを基本とし、そのためには国民一人一人が迅速かつ主体的に避難行動がとれるよう、早期避難意識の維持・向上とともに、自助、共助の取組を強化し、支援をしていく必要がある。

これらの大規模地震への対策の検討に当たっては、これまで経験してきた地震・津波災害への対策の充実・強化を図るのみならず、これまで我が国で経験したことのない災害になり得ることを踏まえ、予断を持たずに最悪の被害様相を念頭におく必要がある。その上で、事前の備えとして頑強性のある予防対策及び応急対策を検討し、社会のあらゆる構成員が連携しながら着実に推進することで、被害の軽減を継続して図っていくことが重要である。

(1)各個人の防災対策への啓発活動

災害から一人でも多くの命を守るためには、耐震化や備蓄、津波や火災からのいち早い避難等に国民一人一人が取り組むことが不可欠である。また、大規模地震の発生時には膨大な人的・物的被害により、災害対応のリソースが大きく不足し、従来の地震・津波対策の延長では十分に対応できない場合がある。このため、国民一人一人が「自らの命は自らが守る」との意識を持ち、「行政・地域・事業者・国民が共に災害に立ち向かう」という考え方が重要である。

こうした、地域社会の安全をあらゆる主体が積極的に関わって作り上げていくという防災意識を醸成するため、国・地方公共団体は、地域の災害リスク情報を整備し、分かりやすい表現・手段で公表するなど、啓発の取組を進めている。

図表2-1-1 ハザードマップポータルサイトについて
図表2-1-1 ハザードマップポータルサイトについて

また、各個人においては、大規模地震の発生時に建物の損傷や家具の転倒、火災等による負傷や閉じ込め等から自身を守るため、また、新たな災害対応ニーズを生み出さないようにするためにも、住宅の耐震化、家具の固定、感震ブレーカーの設置といった平時からの備えに取り組むことが求められる。また、各家庭では、最低でも3日分、可能な限り1週間分程度の生活必需品を備蓄しておくことも重要である。

発災時の一人一人の行動として、適切な避難行動をとることや、都市部においては一斉帰宅抑制に協力することで、発災後の混乱や渋滞が最小化し、救助活動や復旧作業の円滑化が期待される。

国・地方公共団体は、こうした国民・家庭における平時からの備えや発災後にとるべき行動について、普及啓発を図っている。引き続き、国民の具体的な行動につなげるため、大規模災害を「自分ごと」として捉え、平時から防災対策を進める意識の醸成に取り組んでいく。

(2)地域防災力の強化、NPO・ボランティア団体等の多様な主体との連携

地域における防災力の向上に向け、地方公共団体は、地域防災力の中核を担う消防団について、消防団員の確保を進めるとともに、車両・資機材等の充実や実践的な訓練の実施等により、その機能の強化を図っている。自主防災組織についても、育成・充実を図るとともに、消防団や防災士等の多様な主体との連携を促進することで、自主防災組織等の活動の活性化を図っている。

また、大規模地震の発生後に、企業等が事業活動を維持し、又は被害から早期に再開・回復することは、地震による経済的被害を抑えるとともに、被災者や地域が一刻も早く通常の生活を取り戻す上で、重要な役割を担っている。このため、企業等においては、大規模地震の発生に備え、事業継続計画(Business Continuity Plan、以下「BCP」という。)の策定や不断の見直しによる実効性の向上に取り組む必要がある。あわせて、発災時の協力に関する協定を地方公共団体と締結することにより、地域の防災力向上に積極的に貢献することも期待されている。

大規模災害への対応における人的・物的資源の不足を軽減するためには、事業者・NPO・ボランティア等の参加による地域貢献や、行政と事業者又は事業者同士による協定の締結など、多様な主体が地域と連携・協力する体制を構築し、総力を挙げて事前防災及び災害対応を推進することが必要である。このため、国は、平時から各主体間の連携を構築するとともに、地域における訓練等の場を通じて国民への周知を図り、災害時に連携体制が効果的に機能する仕組みづくりを検討している。

さらに、災害時においてボランティア活動が円滑に行われるよう、国・地方公共団体は、NPO・ボランティア団体等の民間主体との連携を図るとともに、災害中間支援組織を含めた連携体制の構築を図っている。くわえて、地域のボランティア人材に避難生活環境の改善に必要な知識・ノウハウを身に付けてもらうため、研修を実施するとともに、国は、発災時の避難所運営等に係る人材調整の円滑化を図るため、地域のボランティア人材に関するデータベースの構築に取り組んでいる。また、NPO・ボランティア団体等の民間主体が活動する環境の整備・改善を図るため、令和7年の「災害対策基本法」の改正により、被災者援護協力団体の登録制度を創設し、団体情報を登録・管理するデータベースの整備に取り組んでいる。

官民連携による被災者支援人材育成・訓練
官民連携による被災者支援人材育成・訓練
(3)防災訓練・防災教育の実施

(防災訓練)

防災体制を実効性のあるものとするためには、防災訓練を行政のみで完結させるのではなく、事業者・住民等を含む地域全体が一体となって、実践的な取組として実施することが重要である。そして、防災訓練を通じて組織体制の機能や連携の確認を行い、その結果を防災計画の修正に反映させ、防災体制の更なる高度化を図る必要がある。

訓練の実施に当たっては、地震の特殊性を踏まえた実践的な内容とすることも重要である。このため、例えば、千島海溝地震、日本海溝地震及び南海トラフ地震については、被害の広域性や時間差をおいて発生する地震の可能性を考慮し、複数の地方公共団体又は地域ブロック単位による広域的な訓練を実施している。また、北海道・三陸沖後発地震注意情報や南海トラフ地震臨時情報の発表に伴う防災対応を想定した訓練等も行われている。

南海トラフ地震を想定した大規模津波防災総合訓練の実施
南海トラフ地震を想定した大規模津波防災総合訓練の実施
出典:国土交通省資料

(防災教育)

防災対策が有効に実施されるためには、国民一人一人が主体的に行動することが不可欠である。このため、国・地方公共団体等は、将来、地域防災の担い手となる小・中学生等が、災害や防災・減災に関する基本的な知識を系統的に学び、災害に関する情報を理解し、適切に判断できる能力を身に付けられるよう、防災教育を推進するとともに、防災訓練や防災教育を通じて、生涯にわたって災害から命を守り、生きることの大切さを育む文化の醸成に取り組んでいる。

(4)防災DX(デジタル技術の活用)

総合的な防災力の向上に向けては、国民や事業者、NPO等あらゆる主体が参加・連携することに加え、各主体間で様々な災害情報を迅速かつ的確に共有・有効に活用する手段として「防災DX」を加速させる必要がある。

国・地方公共団体、指定公共機関間で迅速に情報を共有するため、国は、新総合防災情報システム(SOBO-WEB)の機能強化を図るとともに、これを基盤に、関係機関の防災情報システムと連携して迅速に情報を集約・共有する「防災デジタルプラットフォーム」の利活用を図っている。

また、地方公共団体が災害対応にデジタル技術をより効果的に活用できるよう、国は、事業者と協力し、発災時に民間のデジタル人材等を速やかに派遣できる体制を整備している。

さらに、発災時にデジタル技術を活用した災害対応を実施する上で必要な電力や通信を確保するため、国・地方公共団体等は、あらかじめ非常用電源の確保や非地上系ネットワークの整備など、災害時においてもデジタル技術を活用できる環境の確保に取り組んでいる。

図表2-1-2 新総合防災情報システム(SOBO-WEB)のイメージ
図表2-1-2 新総合防災情報システム(SOBO-WEB)のイメージ
(5)災害リスク評価の推進

千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震及び南海トラフ地震等の大規模地震からの被害を軽減するためには、地域レベルで具体的に災害リスクを評価し、ハード・ソフトの両面で、事前防災を推進することが重要である。このため、国・都道府県等が連携し、地域レベルでの具体的かつ分野横断的なシミュレーションに基づく災害リスク評価を通じて、大規模災害に対する社会や地域における弱部を具体的に明らかにするとともに、必要な対策を企画・立案することを推進している。


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