2-6 被災者支援の充実に向けた検討
被災者の方々が一日も早く生活再建を実現いただくためには、より効率的で質の高い被災者支援が重要である。災害ケースマネジメントとして一人一人の被災者の状況を把握した上で、関係者が連携して、被災者に対するきめ細かな支援を継続的に実施する取組もその一つである。例えばこれまで、先進的な地方公共団体の事例をまとめた「災害ケースマネジメントに関する取組事例集」(令和4年3月策定)の作成や、被災経験の有無を問わず、地方公共団体が災害ケースマネジメントを実施できるよう、標準的な手法をまとめた「災害ケースマネジメント実施の手引き」(令和5年3月策定)の作成、標準的なヒアリング様式である「被災者台帳ヒアリングシート(例)」の作成、防災基本計画への災害ケースマネジメントの位置付け等を行ってきた。
令和7年度は、災害ケースマネジメントの普及・啓発を図るために、全国の自治体と連携した説明会や平時からの体制構築を目的としたモデル事業を行うとともに、国レベルでも全国協議会を開催し、関係者間の顔の見える関係性の構築を図っている。
(参照:https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/case/index.html)

令和8年度以降も引き続き、事例集や手引きを活用し、地方公共団体職員・福祉関係者・NPO等の幅広い関係者を対象とした研修等を実施するほか、全国協議会を活用し、知見の共有を図るなど、災害ケースマネジメントの普及に向けて取り組んでいく。
また、総務省では、災害発生時に、被災者向けの生活支援情報を一冊に取りまとめたガイドブックの作成・配布、被災者からの相談に対応する通話料無料の災害専用電話及び特別行政相談所の開設を行う特別行政相談活動に取り組んでいる。令和7年度は地方支分部局である管区行政評価局等が指定地方行政機関に指定された。令和8年度以降も引き続き、特別行政相談活動の円滑な実施のため、地方公共団体等との連携強化に向けて取り組んでいく。
(参照:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/soudan_n/tokubetu.html)

被災者の身近な場所で相談できる特別行政相談所
地震や豪雨などの災害後、被災者は生活再建に向けて複雑な手続や制度に直面し、「どんな支援制度があるのか分からない。」、「近くに相談できる場所がなく不安。」などといった悩みを抱えることが少なくない。総務省行政評価局は、行政相談委員、国の機関、自治体及び各種専門家が参加する「特別行政相談所」を開設し、支援制度案内や関係機関への橋渡しを通じて、被災者が一歩ずつ前に進めるよう支援している。
こうした取組は、平成5年の北海道南西沖地震以降、東日本大震災や熊本地震など過去の大規模災害から積み重ねてきた経験を基に、令和6年能登半島地震や令和7年の林野火災、大雨など、近年の災害でも継続して実施している。
能登半島地震では、多くの公共施設が被災し、相談所の会場確保が困難な中、多くの被災者が金沢市以南の避難所に広域避難していたことを考慮し、“できるところから”開設するという方針の下、まず奥能登以外の地域で相談所を開設し、現地の状況を踏まえながら奥能登地域では3月以降に開設した。
また、特別行政相談所は、1.5次避難所において常設で開設したり、定例の相談所や庁舎の空きスペースを利用し行政相談委員や行政書士等と小規模な形で開設したり、建築士や弁護士など複数の関係機関が参加する合同相談の形で開設するなど、状況に応じた形態を組み合わせて実施した。
報道では、取材に応じた70歳男性が「何度も来ている。早く対応しなければならない。助かります。」と語り、別の相談者は「ちょっと話せてよかった。気持ちが晴れます。」と笑顔を見せてくれた。
総務省行政評価局では、能登半島地震を始めこれまでの災害対応での経験を踏まえるとともに、令和7年6月に管区行政評価局及び沖縄行政評価事務所が指定地方行政機関に指定されたことを受け、地方公共団体や関係機関との連携をより一層強化し、被災者の身近な場所で相談できる特別行政相談所を始めとする特別行政相談活動の充実に取り組んでいく。
スフィア基準に沿った避難所の生活環境の改善に向けた取組
避難所において、避難者の方が発災直後から尊厳ある生活を営める環境を整えることは非常に重要であり、内閣府においても、発災時に避難所において良好な生活環境が確保されるよう、自治体向けの取組指針等を作成している(「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(令和6年12月改定)(※1)、「避難所運営等避難生活支援のためのガイドライン(チェックリスト)」(令和6年12月改定)(※2)等)。
直近の取組指針等の改定では、スフィア基準(※3)に沿った内容等も加えており、具体的には避難所の良好な生活環境を確保するために、発災後中期段階における20人に1基のトイレの確保、温かい食事の提供、速やかなテント・パーティションやベッドの設置、入浴機会や洗濯機会の確保を求めている。
例えば、令和7年に発生した大分県大分市佐賀関の大規模火災においては、県・市備蓄物資の活用や、民間企業の協力により、迅速なテント・パーティションやベッドの設置、炊き出しによる温かい食事の提供、仮設風呂等による入浴機会の確保、ランドリーカー等による洗濯機会の確保が行われた。
(※1)https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412kankyokakuho.pdf

(※2)https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/2412hinanjo_guideline.pdf

(※3)「スフィアハンドブック:人道憲章と人道支援における最低基準」にまとめられている基準
避難生活物資の備蓄推進と国によるプッシュ型支援の枠組み
防災基本計画において、市町村は、避難所又はその近傍において地域完結型の備蓄施設を確保し、トイレ、食料、飲料水、簡易ベッド、衛生用品、要配慮者向け物資等、避難生活に必要な物資を備蓄するものとされている。
地方公共団体において、平時から必要な物資を備蓄しておくことは極めて重要であることから、令和7年「災害対策基本法」の改正により、地方公共団体の長は、毎年1回、物資の備蓄状況を公表するものとされた。
こうした地方公共団体における取組を一層推進するため、国においては、避難生活環境の抜本的な改善等に資する防災・減災に必要な資機材の整備に関し、新しい地方経済・生活環境創生交付金(令和6年度補正予算)や地域未来交付金(令和7年度補正予算)の地域防災緊急整備型等により、必要な財政的支援を行っている。
もっとも、大規模災害が発生した場合には、被災地方公共団体の備蓄物資が不足し、被災者の多様なニーズの把握や、国等への物資の要請を行うことが困難となる状況も想定される。このため、国においては、被災地からの要請を待たずに、被災地方公共団体に対し、物資の供給及び輸送を行う、いわゆるプッシュ型支援を開始することとしている。
国が行うプッシュ型支援に用いられる物資のうち、段ボールベッドのように調達に一定の時間を要するものや、キッチン設備及び入浴支援設備のように特注品であるものについては、発災直後に必要量を市場から調達することが困難である。このため、内閣府においては、地方公共団体や民間団体と、分散備蓄物資の保管等に関する協定を締結し、全国各地域に分散して物資を備蓄している。これにより、大規模災害発生時には、被災地に近い分散備蓄拠点から、被災地方公共団体に向けて、プッシュ型支援物資を迅速に搬送することが可能となっている。
災害対応車両登録制度の運用開始
(背景)
令和6年能登半島地震では、キッチンカー、トレーラーハウス、トイレカー、ランドリーカー等のいわゆる災害対応車両が被災地で有効活用され、被災者に対して良好な居住環境、温かい食事、快適なトイレ環境などの提供がなされた。
一方で災害対応車両の所在情報は、行政側で十分に把握ができていなかったため、その活用に際しては関係事業者に対して、被災地への提供の可否等を都度確認せざるを得ない状況があった。
このため、内閣府では平時から災害対応車両の情報をデータベース化し、発災後に被災自治体のニーズに応じて迅速に提供をするための仕組みを構築し、本格的な出水期の前となる令和7年6月1日から運用を開始した。
(制度概要)
災害対応車両登録制度の概要は、次のとおり。
○ 災害対応車両(以下「車両」という。)とは、発災時に、避難所、仮設住宅若しくはトイレの用途に供され、又は、食事、洗濯若しくは入浴サービスを提供する用途に供される自走型、牽引型(トレーラー等)、運搬型(コンテナ等)の車両。
○ 登録の対象は、車両又は災害対応車両調整法人(発災時に車両の配車調整等を行う法人。本項において「調整法人」という。)のいずれか。
○ 内閣総理大臣は、車両の所有者又は調整法人の申請に基づき、各申請者が発災時に被災自治体を支援する意思を有しているか、車両が登録基準に適合するか等を確認し、登録。また、登録した車両又は調整法人の情報は、データベース化し、自治体等へ共有。
○ 被災自治体は、車両を必要とする場合、災害対応車両検索システムを参照し、所有者又は調整法人と個別に調整。国は、被災自治体による活用を支援し、必要に応じて調整を実施。
○ 内閣総理大臣は、車両の提供を受けた被災自治体が負担した各種費用について、「災害救助法」に基づき負担(「災害救助法」の適用災害が前提)。
上記制度の骨格は、内閣府告示(災害対応車両等登録規程)で規定。
本制度の運用開始後、令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨により被害を受けた熊本県が災害対応車両調整法人へ派遣要請を行い、熊本県上天草市においてムービングハウスを活用した応急仮設住宅(10戸分)を整備した(令和7年10月20日着工、同年11月27日完成)。









