令和7年版 防災白書|第3部 第2章 2 2-2 防災施設設備の整備


2-2 防災施設設備の整備

(1)広域防災拠点の維持管理

内閣府においては、首都直下地震等により広域的な災害が発生した場合の災害応急対策活動の拠点となる、立川災害対策本部予備施設及び東京湾臨海部基幹的広域防災拠点(有明の丘地区及び東扇島地区)の維持管理を行う(後掲 第2章3-2(1))。

(2)公共施設等耐震化事業の推進

総務省及び消防庁においては、地震等の大規模災害発生時の被害を軽減し、住民の安全を確保できるよう、公共施設等耐震化事業として地方財政措置を講じることにより、地方公共団体が行う災害対策の拠点や地域防災計画上の避難所とされている公共施設等の耐震化を推進する。

(3)国立大学等施設の整備

文部科学省においては、災害時においても教育研究活動の継続や学生教職員等の安心・安全を確保するとともに、地域の防災拠点として機能させるため、国立大学等施設の防災機能の強化等による耐災害性の強化のための支援を行う(後掲 第4章2-3(1))。

(4)公立学校施設の整備

文部科学省においては、児童生徒等の学習・生活の場であるとともに、地域コミュニティの拠点であり、災害時には地域住民の避難所としての役割も果たす公立学校施設について、安全・安心かつ快適な環境を確保するため、非構造部材の耐震対策を含めた老朽化対策及び防災機能の強化等への支援を行う。

(5)私立学校施設の整備

文部科学省においては、大規模災害時における幼児児童生徒及び学生の安全確保を図る観点から、学校施設の耐震化や防災機能強化を促進するため、校舎等の耐震改築(建替え)事業、耐震補強事業及び防災機能強化のための整備等を支援する。

(6)社会体育施設の整備

文部科学省においては、地域のスポーツ活動の場であるとともに、災害時には避難所としての役割を果たす社会体育施設について、耐震性が確保されていないと判断された施設の耐震化等について国庫補助を行う。

(7)医療施設の耐震化

厚生労働省においては、政策医療を担う病院が行う耐震診断に対する補助を行う。

(8)独立行政法人国立病院機構の施設整備

独立行政法人国立病院機構においては、老朽建物の耐震化等に取り組み、耐震性の向上を図る。

(9)治山事業の推進

農林水産省においては、地震による山地災害を防止し、これによる被害を最小限にとどめるため、地震等による山地災害の発生の危険性が高い地区における治山施設の整備等を重点的に実施する(後掲 第2章4-2(1)5-2(2)6-2(3)第3章2)。

(10)漁港漁村の防災対策施設の整備

(再掲 第2章1-2(16)

(後掲 第2章3-2(3)

(11)海岸保全施設の整備

農林水産省及び国土交通省においては、地震対策として、大規模地震の発生が危惧される地域等において、避難体制の充実・強化などソフト面の対策を組み合わせた総合的な対策を推進している海岸等における海岸保全施設の整備を重点的に実施する(後掲 第2章3-2(4)4-2(2)第3章5)。

(12)農業水利施設の耐震化等

農林水産省においては、地震対策として、大規模地震の発生が危惧される地域等における農業水利施設の耐震化等を推進する。

(13)官庁施設の耐震化等の推進

国土交通省においては、所要の耐震性能を満たしていない官庁施設について、人命の安全の確保及び防災機能の強化と災害に強い地域づくりを支援するため、耐震化を推進する。

あわせて、大規模空間を有する官庁施設の天井耐震対策、災害応急対策活動に必要となる官庁施設の電力の確保等を推進する。

(14)建設機械の整備

国土交通省においては、土砂災害等の応急復旧作業等に必要な機械を整備する。

(15)盛土の安全確保対策の推進

国土交通省、農林水産省及び林野庁においては、宅地造成及び特定盛土等規制法に基づき地方公共団体が行う盛土等に伴う災害の防止のための基礎調査や、危険な盛土等の安全性把握のための詳細調査及び盛土等の撤去や擁壁設置等の対策を支援し、環境省においては、都道府県等が行う産業廃棄物の不法投棄等の可能性がある盛土に対する詳細調査及び支障除去等事業を支援する(後掲 第2章4-2(4))。

(16)地震災害に強いまちづくりの推進

国土交通省においては、地震災害に対する都市の防災性向上のための根幹的な公共施設等の整備として、次の事業を実施する。

  • 避難地、避難路、帰宅支援場所及び防災活動拠点となる都市公園の整備
  • 避難路として活用される道路等における街路事業の実施
  • 避難地・避難路の整備を都市の防災構造化と併せて行う土地区画整理事業の実施
  • 避難地として活用される都市公園予定地等の取得を行う地方公共団体に対する都市開発資金の貸付

また、地震災害に強い都市構造の推進として、次の事業を実施する。

  • 密集市街地を始めとする防災上危険な市街地における都市防災総合推進事業の実施
  • 三大都市圏の密集市街地の改善整備及び避難路として活用される道路の整備等による防災性の向上に資する都市再生区画整理事業の実施
  • 防災上危険な密集市街地等における市街地再開発事業等の実施
  • 都市構造再編集中支援事業等を活用した災害時要援護者関連施設(病院、老人デイサービスセンター等)の移転や耐震性貯水槽、備蓄倉庫、避難空間等の整備の実施
  • 事前復興まちづくり計画等に基づき行われる、防災拠点の形成に必要なインフラ整備の実施
  • 都市機能が集積する地域における災害時の滞在者等の安全の確保等を図る都市安全確保促進事業の実施
  • 地下街の防災対策のための計画の策定や、同計画に基づく避難通路や地下街設備の改修等を支援する地下街防災推進事業の実施
  • 密集市街地等における延焼防止の促進のため、密集市街地等における空き地等の延焼防止効果を向上するための緑化を支援
  • 都市機能が集積した拠点地区において、災害時にエネルギーの安定供給が確保される業務継続地区の構築を支援
  • 災害時に都市の機能を維持するための拠点市街地の整備の実施
  • 都市・地域交通戦略推進事業を活用した、多くの人々が集まる駅・駅前広場と周辺地区等における防災力に資する整備の実施
(17)上下水道における震災対策

国土交通省においては、地震時においても上下水道が果たすべき役割を確保するため、重要な上下水道施設の耐震化等を図る「防災」と被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を組み合わせた総合的な地震対策を推進する。また、能登半島地震の教訓を踏まえ、上下水道システムの「急所施設」や、避難所などの重要施設に接続する水道・下水道の管路等の耐震化状況について緊急点検を実施し、令和6年11月1日に結果を公表した。さらに、全ての地方公共団体に対して、緊急点検結果を踏まえた令和7年1月末までの「上下水道耐震化計画」の策定を要請しており、計画に基づく取組状況のフォローアップなどを通じて、耐震化を計画的・集中的に推進する。

(18)河川の耐震・液状化対策

国土交通省においては、地震による液状化等により、多くの堤防が被災したことを踏まえ、堤防・水門等の耐震・液状化対策を推進し、被害の防止・軽減を図る。

(19)土砂災害の防止

国土交通省においては、地震により土砂災害が発生した場合、防災拠点、重要交通網、避難路等への影響や、孤立集落の発生等が想定される土砂災害警戒区域等について、土砂災害防止施設の整備を推進する。

(20)道路における震災対策

国土交通省においては、大規模災害への備えとして、高規格道路の未整備区間の整備及び暫定2車線区間の4車線化、高規格道路と代替機能を発揮する直轄国道とのダブルネットワークの強化等を推進するとともに、ロッキング橋脚橋梁、緊急輸送道路上の橋梁、同道路をまたぐ跨道橋の耐震補強の推進や無電柱化等各種道路事業を実施する。また、バイクや自転車、カメラの活用に加え、UAV(無人航空機)による迅速な状況把握や官民ビッグデータなども活用した「通れるマップ」の情報提供・共有の仕組みの構築を推進するとともに、道路の高架区間等を活用した津波や洪水からの浸水避難対策を推進する。

(21)不良住宅の除却の推進

国土交通省においては、不良住宅が密集すること等によって保安、衛生等に関し危険又は有害な状況にある地区において、地方公共団体が不良住宅を除却し、従前居住者向けの住宅を建設するとともに、生活道路等を整備する住宅地区改良事業等について補助を行う。

(22)住宅市街地の防災性の向上

国土交通省においては、既成市街地において、都市機能の更新、密集市街地の整備改善等の政策課題に、より機動的に対応するため、住宅や生活支援施設等の整備、公共施設整備等を総合的に行う事業について補助を行う。

(23)帰宅困難者等の受入拠点施設整備の推進

国土交通省においては、南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害時において、大量に発生する帰宅困難者等への対応能力を事前に確保するため、災害時の帰宅困難者等の受入拠点となる施設の整備を促進する。

(24)老朽公営住宅の建替等の推進

国土交通省においては、地方公共団体が行う耐震性の低い既存の公営住宅団地の建替事業及び耐震改修事業に要する費用の一部に対して防災・安全交付金等を交付する。

(25)港湾における地震対策の推進

国土交通省においては、能登半島地震や最新の地震被害想定等を踏まえ、大規模災害時の緊急物資輸送等の海上支援ネットワークの形成のための防災拠点機能の確保や、幹線物流機能の維持のため、耐震強化岸壁の整備や臨港道路の耐震化等を推進する。

(26)総合的な宅地防災対策の推進

国土交通省においては、大地震等による盛土造成地の滑動崩落や液状化の宅地被害を防止・軽減するため、宅地耐震化推進事業により、防止対策に向けた詳細調査や対策工事の実施を推進する。

(27)情報通信基盤の整備

国土交通省においては、災害時に迅速かつ的確に災害情報等を収集し、関係機関に伝達するとともに、災害対応や情報提供に資する電気通信設備・情報通信基盤の整備を推進する。

(28)鉄道施設の地震防災対策

国土交通省においては、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模地震に備え、地震時において、鉄道利用者の安全確保や一時避難場所としての機能の確保及び社会・経済的影響の軽減等を図るため、主要駅や高架橋等の耐震補強を推進する。

(29)建築物の耐震診断・耐震改修の促進

国土交通省においては、地震の際の住宅・建築物やブロック塀等の倒壊等による被害の軽減を図るため、建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)の的確な運用に努めるとともに、住宅・建築物等の耐震性の向上に資する事業について補助を行う。

(30)耐震改修工事融資

独立行政法人住宅金融支援機構等においては、耐震改修工事又は耐震補強工事に対する融資により、戸建住宅やマンションの耐震性の向上を支援する。

(31)高齢者向け耐震改修融資(リバースモーゲージ型)の無利子化等

独立行政法人住宅金融支援機構と提携する民間金融機関が提供する【リ・バース60】を活用した耐震改修融資を無利子化・低利子化することにより、高齢者世帯の耐震改修を促進する。

(32)空港の耐震対策

国土交通省においては、地震発生後における救急・救命活動等の拠点機能の確保や航空ネットワークの維持及び背後圏経済活動の継続性確保と首都機能維持を可能とするため、滑走路等の耐震対策を実施する。

(33)一般廃棄物処理施設の防災対策

環境省においては、今後想定される首都直下型地震、南海トラフ巨大地震における災害廃棄物の量が、東日本大震災を遙かに上回ると予想されることから、災害時において迅速な復旧・復興を可能とするため、市町村が行う一般廃棄物処理施設の防災機能の向上のための整備事業に対して循環型社会形成推進交付金等を交付する。


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