特集1 「火山」を知る、そして備える
我が国は、111の活火山を抱える世界有数の火山国である。火山は、私たちの生活に恵みを与えてくれる一方で、噴火に伴って発生する火砕流や大きな噴石等は、避難までの時間的猶予がほとんどなく、生命に対する危険の高い災害をもたらすおそれがある。平成26年(2014年)の御嶽山噴火では、予測困難な水蒸気噴火(火山の地下にある水が加熱され、又は減圧により、急激に水蒸気となって膨張することを駆動力とする噴火)が突如発生し、火口周辺に滞在していた多くの登山者が被災した。
我が国においては、宝永4年(1707年)の富士山の宝永噴火や大正3年(1914年)の桜島の大正噴火など、これまでにも大規模な火山噴火が発生してきた歴史がある。大規模な火山噴火が発生した場合には、周辺地域が壊滅的な打撃を受け、その影響が長期にわたって続く可能性も考えられる。火山国に暮らす私たちは、過去の災害から学び、いつ起きるか分からない火山災害への備えを事前に進めておく必要がある。
令和5年(2023年)に、噴火災害が発生する前の予防的な観点から、活動火山対策の更なる強化を図るため、「活動火山対策特別措置法」(昭和48年法律第61号。以下「活火山法」という。)の一部が改正され、これにより火山調査研究推進本部の設置や「火山防災の日」を制定することなどが新たに定められた。本改正法は、令和6年(2024年)4月に施行され、今後、より一層の火山防災対策の強化・充実が図られることとなる。
このような背景を踏まえ、令和6年版防災白書では、特集1として「『火山』を知る、そして備える」をテーマに取り上げる。まず、第1章では、我が国における近年の火山噴火の事例として、令和6年(2024年)で10年の節目となる御嶽山噴火災害について改めて当時の状況を振り返り、その教訓を踏まえた火山防災対策について述べる。次に、第2章では、活火山法の制定や改正などを経ながら充実・強化されてきた我が国の火山防災対策の変遷について取りまとめる。その上で、第3章では、私たちが火山と共に生きるために、各地域で取り組まれている火山防災対策事例を紹介しながら、火山災害への備えについて論じる。