第4節 国際防災協力
4-1 国連などの国際機関を通じた防災協力
我が国は、災害の経験・知識や防災の施策を多く蓄積しており、これらを共有することにより、防災分野で世界の議論をけん引し、世界各国における防災の取組強化に貢献している。特に、平成27年3月に第3回国連防災世界会議を宮城県仙台市で開催したことを踏まえ、そこで採択された「仙台防災枠組2015-2030」(以下「仙台防災枠組」という。)の実施において、主導的な役割を果たすことが世界各国から期待されている。このため、内閣府や外務省においては、国連などの国際機関を通じた防災協力を積極的に推進している。
(1)国連防災機関(UNDRR)を通じた防災協力
仙台防災枠組を推進するため、同枠組の実施に係るモニタリング、調整、各地域や国の支援等を行っている国連防災機関(UNDRR:United Nations Office for Disaster Risk Reduction)の活動を支援するため、令和5年度は内閣府及び外務省が合わせて約537万ドル(約7億3,500万円)を拠出している。
仙台防災枠組の実施期間において中間年となる令和5年に、この枠組みの取組や達成状況を振り返り、後半期に向けた課題などを洗い出す中間レビューが実施され、日本を含む各国が国連に対し、これまでの取組状況を報告した。
このレビュー結果を踏まえ、令和5年5月には国連本部で8年ぶりの防災に関する国連ハイレベル会合が開催された。我が国からは中野内閣府大臣政務官(当時)が代表として出席し、2030年の仙台防災枠組の目標達成に向けた我が国の取組を発表したほか、G7議長国の我が国とG20議長国のインドの共催により、「防災投資」をテーマとするサイドイベントを開催した。
ハイレベル会合では、後半期の推進を加速化させるための「政治宣言」(11ページからなる各国合意文書)が採択された。政治宣言では、気候変動の影響等を踏まえた災害リスク分析の強化、防災部局と気候変動部局等の関係機関間の連携、民間投資を含めた防災投資の誘導策の強化、被災地域の増加を踏まえた「より良い復興(Build Back Better)」の経験共有といった取組を一層強化すること等が確認された。
(2)国際復興支援プラットフォーム(IRP)
国際復興支援プラットフォーム(IRP:International Recovery Platform)は、平成17年に兵庫県神戸市で開催された第2回国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組2005-2015」を受けて、円滑な復興を支援するためのネットワークと同枠組の充実を図ること、復興に関する教訓の発信や復興に向けた共通手法・仕組みを開発すること、復興計画・構想策定に助言や支援を行うことなどを目的として、同年3月に神戸市に設立された。仙台防災枠組において、IRPは「より良い復興(Build Back Better)」を推進するための国際的なメカニズムの一つとして、その強化がうたわれている。日本政府(内閣府)は運営委員会共同議長としてその発展の基盤づくりに貢献するとともに、IRPの活動を支援している。
令和6年1月25日には神戸市において「国際復興フォーラム2024」が開催され、「より良い復興の実現に向けて―高まる気候変動のリスクとレジリエント(強靭)な復興―」のテーマの下、70ヶ国から347名が参加した。フォーラムでは、強靱な復興に当たっての課題や復興への備え、及び島しょ国における復興の取組について議論が行われた。またグループセッションでは、「より良い復興」の世界的な推進のため、日本の経験と教訓が共有された。
(3)アジア防災センター(ADRC)との共同活動を通じた防災協力
アジア防災センター(ADRC:Asian Disaster Reduction Center)は、災害教訓をアジア地域と共有するため、平成10年に兵庫県神戸市に設立されたものであり、令和6年3月現在、アジアの32ヶ国が加盟している。ADRCは、防災情報の共有、加盟国の人材育成、地域コミュニティの防災力向上の3つを柱として、仙台防災枠組のアジアでの推進を主導している。人材育成の一環としては、加盟国から客員研究員を招聘しており(令和6年3月現在で累計132名)、防災政策の研究等を通じて加盟国の防災政策の企画立案に貢献する人材を育成している。また、各国の防災体制や最新災害情報等の収集及びホームページ上での提供、災害発生時の衛星データを利用した災害情報の活用推進といった活動も行っている。
内閣府はADRCとの共催により、「アジア防災会議(ACDR:Asian Conference on Disaster Reduction)」を開催し、加盟国や国際機関等からの参加を得て、アジアにおける防災・減災の課題に関する情報共有、意見交換、連携促進等を行っている。第19回目の同会議は「効果的な防災対策の実施―防災分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進―」をテーマに、令和5年10月20日にタジキスタン国ドゥシャンベにて開催された。加盟国(当時の31ヶ国中18ヶ国)を始め、国際機関、地域機関、民間セクター、学術・研究機関の代表など120名が現地で参加し、オンラインでは7加盟国から合計111名が参加した。同会議では、松村内閣府特命担当大臣(防災)がビデオメッセージによる開会挨拶を行い、仙台防災枠組の実施進捗と課題を確認するとともに、地震や地盤災害のリスク削減の技術、氷河湖決壊洪水や広域化する森林火災といった気候危機に対応する先進的な取組等について、情報共有や意見交換がなされた。