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令和5年版 防災白書|特集1 第2章 第1節 自然災害の激甚化・頻発化等


第2章 我が国を取り巻く環境の変化と課題

本章では、この100年間を振り返り、この間に生じた我が国を取り巻く様々な環境の変化を俯瞰することで、今後の災害対策推進上の課題を明らかにする。

第1節 自然災害の激甚化・頻発化等

気候変動等によって、自然災害のリスクは高まってきていると言える。本節では、関東大震災が発生した100年前と比較し、気温や大雨の発生頻度等がどのように変化してきたのか、気象データを活用しつつ長期変化傾向も確認しながら考察する。また、今後想定される首都直下地震、南海トラフ地震等の大規模地震の切迫性の高まりについて、政府の地震調査委員会の評価結果を参考に論じる。

(我が国における気候変動とその影響)

我が国では、第1章第5節で述べた伊勢湾台風を始めとして、暴風、豪雨、洪水、土砂災害、高潮等の気象災害による被害が毎年のように発生している。

近年では、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨等により大きな被害を受けており、令和4年度に入ってからも、令和4年8月の大雨、令和4年台風第14号、同第15号等により、被害が立て続けに発生している。近年の平均気温の上昇や大雨の頻度の増加など、気候変動とその影響が全国各地で現れており、我が国にとって重要な問題である。

世界と日本の気温の長期的な変化を見てみると、世界の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、100年当たりで0.74℃上昇している(図表2-1)。

図表2-1 世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2022年)
図表2-1 世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2022年)

一方、我が国の年平均気温は、世界の平均気温よりも更に上昇の幅が大きくなっており、100年当たりで1.30℃上昇している。この100年の間、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化や、数年から数十年程度で繰り返される自然変動の影響等により、確実に温暖化が進んでいると言える。なお、5年の移動平均推移を見ると、1980年代後半から平均気温の上昇速度が加速していることも見てとれる(図表2-2)。

図表2-2 日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2022年)
図表2-2 日本の年平均気温偏差の経年変化(1898~2022年)

こうした平均気温の上昇と相関するように、全国的に大雨や短時間強雨の発生頻度も増加している。日降水量100mm以上及び200mm以上の日数は、この100年でともに増加傾向が見られる(図表2-3)。また、1970年代後半から多くの地点で観測を開始したアメダスにおいては、おおよそ50年間で、1時間降水量50mm以上及び80mm以上の短時間強雨の年間発生回数は、ともに増加していることがデータで明らかとなっている(図表2-4)。

図表2-3 日降水量100mm以上及び200mm以上の年間日数の経年変化(1901~2022年)
図表2-3 日降水量100mm以上及び200mm以上の年間日数の経年変化(1901~2022年)
図表2-4 1時間降水量50mm以上及び80mm以上の年間発生回数(日数)の経年変化(1976~2022 年)
図表2-4 1時間降水量50mm以上及び80mm以上の年間発生回数(日数)の経年変化(1976~2022 年)

さらに、日本近海における年平均海面水温は、100年間で1.24℃上昇しており、日本の平均気温の上昇幅と同程度となっている(図表2-5)。海面水温の上昇は、一般に台風の勢力拡大に影響を与えるとされており、台風による被害拡大につながるおそれがある。

図表2-5 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の変化傾向(℃/100年)
図表2-5 日本近海の海域平均海面水温(年平均)の変化傾向(℃/100年)
(大規模地震の切迫性の高まり)

政府の地震調査委員会は、主要な活断層や海溝型地震の活動間隔、地震の発生確率等を評価し、その結果を公表している。例えば、南海トラフ地震(マグニチュード8~9級)の30年以内の発生確率について、10年前の平成25年公表時は60%~70%であったのに対し、令和5年公表時では70%~80%との評価がなされており、時間の経過とともに地震の切迫性は高まっている。また、南関東地域の直下における、相模トラフ沿いのプレートの沈み込みに伴うマグニチュード7程度の地震については、特定の場所で繰り返し発生する地震として扱えないことから、30年以内の発生確率は、平成26年(2014年)公表時の70%程度から変化していない。しかし、関東エリアでは、これまで把握できているだけでも度々マグニチュード7級の地震が発生しており、加えて、関東大震災から現在までの100年は地震活動が比較的静穏に経過しているが、今後は比較的活発な時期を迎えるとの想定もあり、引き続き警戒が必要である。

(今後もさらに高まる自然災害リスク)

この100年で気象災害の激甚化・頻発化が目に見える形で進んできており、地球温暖化の進行に伴って、この傾向が続くことが見込まれている。また、今後発生が想定されている首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模地震や火山噴火への備えも怠ることはできない。

我々は、今後もさらに高まる自然災害リスクと正面から向き合い、将来予測される被害を回避・軽減するために、あらゆる努力を行うことが求められている。


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