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令和3年版 防災白書|第1部 第1章 第2節 2-7 病院船の活用に関する調査・検討


2-7 病院船の活用に関する調査・検討

病院船(災害時等において船内で医療行為を行うことを主要な機能とする船舶をいう。以下同じ。)に関しては、東日本大震災後の平成23年度及び平成24年度に内閣府が行った調査・検討において、主な課題として、<1>建造等に要する莫大な費用、<2>医療スタッフ等の確保の困難さ、<3>平時の活用の可能性の低さが指摘されるとともに、既存船舶を活用した実証訓練を行うことも有効な方策の一つと整理された。これを踏まえ、平成25年度以降、内閣府では、既存船舶を活用した災害医療活動に係る実証訓練を実施してきた。

令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策(令和2年4月7日閣議決定)において、医療提供の場の確保のための病院船の活用の検討を行うこととされたことを踏まえ、第一次補正予算を活用し、内閣府、厚生労働省、防衛省及び国土交通省がそれぞれの専門性を活かしつつ、連携して、病院船の活用について調査・検討を行った。

具体的には、厚生労働省においては、災害医療や感染症対応における病院船の位置付け、求められる機能と必要な設備、患者の搬入・搬出方法について、防衛省においては、艦艇を含む諸外国軍隊の感染症対応能力について、国土交通省においては、病院船の船内システムの最適化について、それぞれ調査・検討が行われた。内閣府においては、これら各省の調査・検討の内容を踏まえ、<1>病院船の果たすべき役割、<2>災害時の要員の確保、<3>平時の活用方策を論点として、病院船の必要性の検討を行い、その総括を行った。

こうした調査・検討を経て、令和3年3月30日に、内閣府、厚生労働省、防衛省及び国土交通省が連名で、病院船の活用に関する調査・検討を踏まえた政府の考え方を取りまとめ、公表した。その概要は、以下のとおりである。

南海トラフ地震のような大規模災害発生時には、広域にわたり、膨大な医療ニーズの発生が見込まれることから、病院船には、自己完結的に海上で活動できる船舶の特性を活かし、特に陸路が途絶された地域や離島に対して、陸上医療機関を補完することが期待される。

一方、病院船の活用に向けては、<1>医療従事者の確保、<2>運航要員の確保、<3>平時の活用方策という3つの大きな課題がある。

これらの課題が解決していない現状を踏まえ、当面、新たに病院船の建造に着手するのではなく、既存船舶を活用した災害医療活動の具体化に取り組むこととする。

具体的には、

  • これまで実施してきた訓練を強化するかたちで、自衛隊艦艇の医療用寝台を活用することも想定し、関係府省等が連携して船舶における災害医療活動の初動(要員の参集)から完了(患者の搬出)までの本格的な訓練を実施する
  • 自ら船舶を確保し、災害医療活動を行うことのできる民間主体についても、その動向を把握しながら、連携・支援の方策を検討する

こととする。

その上で、今回の調査・検討で明らかになった課題への対応について、次のとおり検討を行うこととしている。

  • 医療従事者の確保については、今後、新型コロナウイルス感染症の収束の状況を踏まえつつ、医療関係団体との協力関係の構築について具体的な検討を進めるとともに、災害時等の医療提供体制の充実に取り組む
  • 運航要員についても、訓練を通じて必要なスキルと人数を明確にし、災害時に即応できる確保の在り方を検討する
  • 平時の活用方策についても、災害時の即応性や費用対効果に留意するとともに、今後の社会経済情勢の変化を踏まえつつ、引き続き検討する
  • 感染症対応における船舶の活用についても、今回の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、医療従事者の意見を十分に聴きながら、引き続き検討する

政府では、海に囲まれた我が国においては、災害や感染症の発生時等における医療を確保する上で、船舶の活用に対する期待が大きいことから、引き続き、医療関係団体の意見にも十分に耳を傾けながら、災害時や感染症発生時の医療提供体制の充実に取り組むこととしている。

【コラム】
「東日本大震災から10年~気象庁の主な取組~」

東日本大震災が発生してから本年で10年を迎える。ここでは、気象庁が震災後行ってきた主な取組として、津波警報と緊急地震速報の改善について紹介する。

(1)津波警報の改善

東日本大震災では、福島県相馬で高さ9mを超える非常に高い津波を観測したほか、東北地方から関東地方北部の太平洋側を中心に、北海道から沖縄にかけての沿岸に津波が襲来した。気象庁では、地震に伴う津波が予測される場合、地震発生後3分程度を目途に津波警報等を発表するが、マグニチュード8を超えるような巨大地震では、適切な地震の規模をすぐに把握できないため、当時、マグニチュードを小さく見積もり、津波警報における予想される津波の高さが過小となった。このことを踏まえ、気象庁では、津波からの避難行動に支障を生じることのないよう、マグニチュード8を超えるような巨大地震が発生した可能性がある場合には、その海域における最大級の津波を想定し、津波警報等の第1報では「巨大」や「高い」等の定性的な表現を用いて避難を促し、その後地震の規模が精度よく求められた時点で、予想される津波の高さを数値で発表することとするなどの見直しを行い、平成25年3月より運用を開始した。

都市地震津波による被害(1)
都市地震津波による被害(1)
都市地震津波による被害(2)
都市地震津波による被害(2)
東日本大震災を踏まえた津波警報等及び津波の予想高さの表現
東日本大震災を踏まえた津波警報等及び津波の予想高さの表現

(2)緊急地震速報の改善

東日本大震災では、宮城県栗原市で震度7を観測したほか、東日本を中心に北海道から九州地方にかけての広い範囲で震度6強から1を観測した。気象庁では、地震発生後直ちに緊急地震速報を発表したが、マグニチュードを小さく見積もったため、実際より小さな震度を予想した。また、その後、非常に活発な地震活動により同時に複数の地震が発生した際、複数の地震の適切な識別及び規模の推定が行えず、震度を過大に予測して発表する事例があった。これらのことを踏まえ、気象庁では、緊急地震速報の技術的な改善に取り組み、同時に複数の地震が発生した際にも精度良くそれぞれの震源を推定することができる手法(IPF法、平成28年12月:従来別々に用いたデータや手法を統合的に用いる手法)や、巨大地震の際にも精度良く震度予想ができる手法(PLUM法、平成30年3月:周辺の揺れの観測値から震度を予想する手法)を導入し、緊急地震速報の精度向上を図った。


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