1-5 住民主体の取組(地区防災計画の推進)
地区防災計画制度は、平成25年の「災害対策基本法」の改正により、地区居住者等(居住する住民及び事業所を有する事業者)が市町村と連携しながら、自助・共助による自発的な防災活動を推進し、地域の防災力を高めるために創設された制度である。これによって、地区居住者等が地区防災計画(素案)を作成し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めるよう、市町村防災会議に提案できることとされている。
令和2年4月1日現在、4,170地区で地区防災の策定に向けた活動が行われ、さらに、901地区で地区防災計画が地域防災計画に定められた。制度創設から7年が経過し、地区防災計画が更に浸透してくることが期待される(図表1-5-1)。
(1)地区防災計画の意義
地区防災計画は、地区内の住民、事業所、福祉関係者など様々な主体が、地域の災害リスクや、平時・災害時の防災行動、防災活動について話し合い、計画素案の内容を自由に定め、その後、市町村地域防災計画に位置付けられ、共助と公助をつなげるものである。計画内容はもとより、地区住民等が話し合いを重ねることなど、作成過程も共助の力を強くする上で重要である。
(2)地区防災計画の動向
内閣府において、令和元年度中に地域防災計画に定められた地区防災計画22市区町村74地区の事例を分析したところ、以下のような特徴がみられた。
<1> 住民が地域の災害リスクを理解するために、わかりやすく地域の実情等を示した事例がみられた。例えば、地区で被害が想定されている災害を地図を用いて示し被害を想起させたり(例:山梨県都留市与縄(よなわ)地区、千葉県市原市明神小学校区)、過去に発生した災害を地図や写真で掲載する事例(例:三重県松阪市大石(おいし)地区)等がある。また、国内外観光客の避難について、住民が観光関連団体・企業と連携し、災害情報や避難情報を発信するなど、住民の防災にとどまらない事例(例:北海道斜里町ウトロ地区)がみられた(図表1-5-2)。
<2> 作成主体については、町会・自治会、自主防災組織が計画の「作成主体」として表示されている例が多い。そのほか、数は少ないものの、学校区やまちづくり協議会などが主体の事例もみられる。地域の社会的特性に応じ、作成主体の多様化が期待される(図表1-5-3)。
(3)内閣府の取組
<1>地区防災計画フォーラム2021の開催
内閣府は、地区防災計画の事例や経験を共有することにより、地区防災計画の策定を促進するため、「地区防災計画フォーラム2021~防災からはじまるコミュニティづくり~」を令和3年2月14日にオンラインで開催した。本フォーラムでは、小此木内閣府特命担当大臣(防災)の開会挨拶の後、平成28年の熊本地震の被災地である熊本県のほか、東京都、愛媛県、岡山県、福岡県をオンラインで結び、災害を経験した地区における地区防災の主体の取組、その支援者の役割について活発な討議が交わされた。
<2>地区防災計画を推進する自治体ネットワーク「地区防’z(ちくぼうず)」の活動支援
「地区防’z」とは、地区防災計画の作成支援に取り組む自治体職員が、より日常的に計画作成時の課題等についての情報交換や経験の共有を行うためのプラットフォームであり、令和3年3月19日には「地区防’z オンラインミーティング2021」を開催し、地域で防災活動を促進し地区防災計画を推進していくためにどんな取組がされているか、現場の悩みの共有とともに、役所全体での関わり方を議論した。
<3>地区防災計画ライブラリの構築
地域防災計画に定められた地区防災計画を、計画内容(対象とした課題、対策、取組主体)別に分類し、内閣府HPで一覧できるライブラリが構築されており、計画作成主体等の作成作業を支援している。