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令和3年版 防災白書|特集 第1章 第3節 3-2 被災地の実情・課題等を踏まえた災害救助法の運用について


3-2 被災地の実情・課題等を踏まえた災害救助法の運用について

令和2年7月豪雨において、熊本県を中心に、球磨川の氾濫により大規模な住家被害等が発生し、多数の被災者が避難を要することとなった。特に被害の大きかった中山間部の市町村では、応急仮設住宅の供与のために活用できる建設地や民間賃貸住宅が不足するなど、応急的な住まいの迅速な確保に課題が生じる事態となった。

こうした状況を踏まえ、できる限り円滑で適切な救助の実施に向けて、次のとおり、被災地の実情・課題等を踏まえた「災害救助法」の運用に努めた。

(1)応急修理期間中の応急仮設住宅の使用

これまで、全壊等で住宅が利用できない者を対象とした応急仮設住宅と、住宅を修理すれば住むことができる応急修理は、目的や対象が異なるため、併用は認められていなかった。

しかし、令和2年3月31日に総務省によりまとめられた「災害時の『住まい確保』等に関する行政評価・監視 -被災者の生活再建支援の視点から-結果報告書」に基づき、「応急修理制度の申込み後、修理完了までに長期間を要している被災者等損壊した自宅に居住し続ける者に対し、応急仮設住宅の供与を可能とすること」との勧告が行われた。

(参照:https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/hyouka_200331.html#kekkahoukoku

さらに、近年、工事業者の不足等により応急修理の修理期間が長期化し、修理完了までの間、避難所生活を継続せざるを得ない世帯等が多数存在する状況がみられるとともに、令和2年7月豪雨においては、被災自治体から、被災者の自宅の修理期間中における被災者の住まいの確保を求める声があがった。

これらの状況を踏まえ、応急修理期間中の被災者の一時的な住まいを確保するとともに、応急仮設住宅に入居する被災者の地元における自宅再建を後押しすることを目的として、応急修理の長期化が見込まれる半壊以上の世帯を対象に、災害発生の日から6ヶ月間、応急仮設住宅の供与を可能とすることとした。

本制度は、令和2年7月豪雨から支援の対象とされ、以降は恒久的制度として、「災害救助法」が適用された災害が対象となる。

応急修理期間中の応急仮設住宅の使用
応急修理期間中の応急仮設住宅の使用
(2)公営住宅の用途廃止による応急仮設住宅としての供与

令和2年7月豪雨において、大規模な被害を受けた熊本県人吉市においては、住家に被害を受け住むことができなくなった被災者のための応急的な住まいとして活用可能な民間賃貸住宅や、すぐに入居可能な公営住宅が足りず、建設型応急住宅も適地不足で十分な数を整備できないことが想定された。このため、市営住宅の空室160戸を用途廃止した上で、入居のために必要な浴室の耐水・耐熱塗装、エアコン、換気扇及び浴槽・給湯器の設置、壁紙の張替え等の改修を行い、応急仮設住宅として供与をした。

用途廃止した市営住宅の改修(熊本県人吉市)
用途廃止した市営住宅の改修(熊本県人吉市)
[コラム]
令和2年7月豪雨における熊本県の応急仮設住宅

令和2年7月豪雨で特に被害の大きかった熊本県においては、災害により住家に被害を受けた被災者に対し可能な限り迅速に応急的な住まいを提供し、被災者の安心・安全を確保するための有効な取組がなされた。

<1>被災住民に対する応急仮設住宅等住まいの確保に関する見通しの早期公表

熊本県では、被災市町村と連携し、罹災証明書の発行件数等から把握した住家の被害状況を踏まえ、被災者の住まい確保の必要戸数を推計した上で、その確保に向けて賃貸型応急住宅、建設型応急住宅、公営住宅等の必要戸数を検討し、同県の災害対策本部会議で示した。発災後、避難所等で避難生活を送り、住まいに対し不安を抱える被災者にとって、地方公共団体が早期に住まいの確保の見通しを示すことは安心感につながる。このように、被災者に対する応急仮設住宅等の住まいの確保を図る上では、災害時には早期に必要戸数の見通しを立てて、その確保を図っていくことが重要である。

応急仮設住宅等への対応
応急仮設住宅等への対応

<2>ムービングハウスを活用した早期の応急仮設住宅の供給

平成30年7月豪雨を契機に、応急仮設住宅としてトレーラーハウスやコンテナハウス等を活用する事例がみられるようになっている。これらは設置場所における水道・下水等のインフラの整備状況等の条件が良ければ迅速に供与することが可能であり、令和2年7月豪雨において、熊本県球磨村では、7月4日の発災後、北海道や茨城県など他地方公共団体の展示場に設置されていたムービングハウスを輸送して活用することで、33戸の応急仮設住宅を発災から2週間程度で着工し、1カ月程度で供与を実現した。最終的に熊本県ではムービングハウスを活用した応急仮設住宅を68戸供与した。

球磨村で整備された応急仮設住宅(左手前・奥がムービングハウス、右が木造仮設住宅)
球磨村で整備された応急仮設住宅(左手前・奥がムービングハウス、右が木造仮設住宅)
(3)公助による救助とボランティア活動との調整事務に関する支援

「公助」の災害救助活動である避難所運営や障害物除去などの救助を円滑かつ効果的に実施するためには、「公助」による救助と「共助」であるボランティア活動とを整理する等の調整(例えば、被災現場での役割分担、被災者のニーズとのマッチングなど)が必要であるが、近年、ボランティア活動が活発化する中、こうした調整の負担は増加している。このため、令和2年7月豪雨を契機として、「公助」による救助とボランティア活動との調整事務について、社会福祉協議会等が設置する災害ボランティアセンター(以下この節において「災害VC」という。)に委託する場合、当該事務に必要な人員の確保に要する経費(人件費(災害VCの設置・運営者の職員の時間外勤務手当並びに設置・運営者が新たに直接雇用する臨時職員及び非常勤職員の賃金に限る。)及び旅費(被災自治体外から災害VCに派遣する職員に係る旅費))については、災害救助費負担金の国庫負担の対象とすることとされた。

本制度は、令和2年7月豪雨から適用され、以降は恒久的制度として、「災害救助法」が適用された災害において適用される。

[コラム]
災害ボランティアセンター

災害ボランティアセンター(災害VC)は、近隣住民の助け合いだけでは対応できない規模の災害時に開設され、ボランティアの力を借りて被災者支援や復旧・復興に向けた地域支援を行うための組織であり、主に被災地域の都道府県・市区町村の社会福祉協議会により設置・運営される。社会福祉法人全国社会福祉協議会によると、災害VCは、「被災者中心」「地元主体」「協働」を三原則として運営され、専門性のあるNPO団体等の協力を得て、行政を始めとした関係機関との連絡・調整、被災者からのニーズの把握とボランティア活動とのマッチング、資機材の調達、情報発信等、被災者支援活動に関わる多くの調整を行っている。

災害VCを通じた主なボランティア活動(一般ボランティアによる活動)としては、被災家屋の泥かき・清掃、支援物資の運搬・仕分け、避難所の運営支援(生活環境改善、炊き出しなど)、仮設住宅への引越支援など多岐にわたる。

災害ボランティアセンターでの受付
災害ボランティアセンターでの受付
被災家屋の泥かき
被災家屋の泥かき

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