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令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-3 令和元年東日本台風による災害


1-3 令和元年東日本台風による災害

(1)概要

令和元年10月6日に南鳥島近海で発生した令和元年東日本台風(台風第19号)は、マリアナ諸島を西に進み、一時大型で猛烈な台風に発達した後、次第に進路を北に変え、日本の南を北上し、同月12日19時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した。その後、関東地方を通過し、同月13日12時に日本の東で温帯低気圧に変わった。

この台風の接近や通過により、台風本体の発達した雨雲や台風周辺の湿った空気の影響で、静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。同年10月10日から13日までの総降水量は、神奈川県箱根町で1,000ミリに達し、東日本を中心に17地点で500ミリを超えた。特に静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3、6、12、24時間降水量の観測史上1位の値を更新するなど記録的な大雨となった。

期間降水量分布図(10月10日0時~10月13日24時)
期間降水量分布図(10月10日0時~10月13日24時)
24時間降水量の期間最大値(10月10日0時~10月13日0時)
24時間降水量の期間最大値(10月10日0時~10月13日0時)

この大雨について、気象庁は、同月12日15時30分から順次、静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県、岩手県の1都12県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけた(13日8時40分までにすべて解除)。また、風については、東京都江戸川臨海で最大瞬間風速43.8メートルとなり観測史上1位を更新したほか、関東地方の7か所で最大瞬間風速40メートルを超えた。

[コラム]
令和元年東日本台風の降雨の特徴 (平成30年7月豪雨との比較)

令和元年東日本台風では、10月10日から13日までの総降水量は多いところで1,000ミリを超えた。特に、台風が接近・上陸した10月12日から13日にかけて静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方を中心として、短時間で非常に激しい雨や猛烈な雨が降り、多くの地点で12、24時間降水量の観測史上1位を更新した。他方で、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)では、6月28日から7月8日までの総降水量は多いところで1,800ミリを超えた。特に7月5日から8日の4日間で西日本を中心として、断続的に強い雨や激しい雨が降り、多くの地点で48、72時間降水量の観測史上1位を更新した。

降水量の期間最大値の分布図
降水量の期間最大値の分布図

平成30年7月豪雨では、長時間の記録的な大雨となったのに対し、令和元年東日本台風では、半日から1日程度で記録的な大雨となった。

1時間降水量及び総降水量の時間変化
1時間降水量及び総降水量の時間変化
(2)被害状況

この令和元年東日本台風により、広い範囲で河川の氾濫が相次いだほか、浸水害、土砂災害等が発生し、死者91名(福島県35名、宮城県19名、神奈川県9名、長野県5名、栃木県・群馬県・埼玉県各4名、岩手県・静岡県各3名、茨城県2名、千葉県・東京都・兵庫県各1名)、行方不明者3名、重傷者42名、軽傷者334名となった(消防庁情報、令和2年4月10現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/3d299a3cc95529be73f32e6e793b4969d04a0da5.pdf)。住家被害については、全壊が3,273棟、半壊・一部損壊が63,743棟、浸水が29,556棟であった(消防庁情報、令和2年4月10日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/3d299a3cc95529be73f32e6e793b4969d04a0da5.pdf)。

人的・住家被害(令和2年4月10日現在)
人的・住家被害(令和2年4月10日現在)

また、関東甲信越地方、東北地方を中心に停電や断水が相次ぎ、停電が約52万戸(最大)、断水が約16.8万戸(最大)発生するなど、ライフラインにも大きな被害が生じた。このほか、鉄道の運休等の交通障害が発生したとともに、道路の損壊や道路への土砂の流入、橋梁の流出などにより多数の孤立地域が発生し、住民生活に大きな支障が生じ、農林漁業等の経済活動にも大きな影響を及ぼした。

ライフライン被害
ライフライン被害

この台風の影響により、多くの河川で決壊が発生し、国管理河川では6水系7河川14か所、都道府県管理河川では20水系67河川128か所で決壊が発生し、濁流による浸水域は広範囲にわたった。長野県長野市では、信濃川水系千曲川の堤防決壊により多くの被害が発生し、千曲川に架かる上田電鉄別所線千曲川橋梁の左岸川橋台が落橋したほか、阿武隈川水系内川流域では、流域内で土砂・洪水氾濫が発生し、五福谷川等の支川の勾配の緩い区間で土砂が河道を埋塞し大量の土砂が氾濫するなど、広範囲にわたり被害が生じた。また、がれき等の災害廃棄物も甚大な量となり被災地域内に堆積するなど、住民生活に支障が生じた。

令和元年東日本台風に伴う大雨による浸水推定図【千曲川(長野県長野市穂保付近)】
令和元年東日本台風に伴う大雨による浸水推定図【千曲川(長野県長野市穂保付近)】
[コラム]
令和元年東日本台風による堤防決壊、土砂災害の状況

令和元年東日本台風が接近・上陸した令和元年10月12日から13日にかけて半日から1日程度で各地に降った総降水量は、東京都西多摩郡、埼玉県秩父市、宮城県丸森町では、年間降水量の40%を超える大雨となった。各河川の流域でみても、信濃川水系千曲川、久慈川においては河川の計画規模を超える降雨となり、阿武隈川や鳴瀬川水系吉田川や利根川なども計画規模に匹敵する大雨をもたらした結果、各地の大河川で堤防が決壊することとなった。

令和元年東日本台風による堤防の決壊等の状況
令和元年東日本台風による堤防の決壊等の状況

また、令和元年東日本台風に伴う土砂災害の発生件数は、東日本を中心に20都県にわたって952件(国土交通省)となり、統計を開始した昭和57年以降、記録の残る一つの台風に伴うものとしては過去最大の発生件数となった。過去10年間で土砂災害が100件以上発生した台風8件と比べ、その平均値(210件)を大きく超過したとともに、8県において40件以上の土砂災害が発生するなど、被害が広範であった。

令和元年東日本台風に伴う土砂災害の発生件数
令和元年東日本台風に伴う土砂災害の発生件数

この台風の影響により、多くの市町村において避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難所への避難者数は23万7,000人超に達した。災害救助法の適用団体も14都県390市区町村に上るなど、極めて広範囲にわたる甚大な災害となった。

令和元年東日本台風被害状況
福島県(郡山市)の浸水被害(内閣府資料)
福島県(郡山市)の浸水被害(内閣府資料)
長野県(長野市)の土砂被害(内閣府資料)
長野県(長野市)の土砂被害(内閣府資料)
宮城県(丸森町)の土砂被害(内閣府資料)
宮城県(丸森町)の土砂被害(内閣府資料)
茨城県(常陸大宮市)の浸水被害(内閣府資料)
茨城県(常陸大宮市)の浸水被害(内閣府資料)
航空機からの斜め写真(福島県本宮市)(国土地理院資料)
航空機からの斜め写真(福島県本宮市)(国土地理院資料)
UAVからの写真(長野県長野市)(国土地理院資料)
UAVからの写真(長野県長野市)(国土地理院資料)
(3)政府等の対応

政府は、台風が接近する前の令和元年10月8日及び上陸する前の同月11日、「関係省庁災害警戒会議」を開催し、政府としての警戒態勢を確保するとともに、武田内閣府特命担当大臣(防災)から、早めの避難や安全の確保を呼びかけた。また、同月11日には関係閣僚会議も開催し、安倍内閣総理大臣から、改めて事前の備えを十二分に行うとともに、緊張感をもって、被害の状況等の情報収集の徹底し、国民の安全・安心の確保に万全を期すこと等の指示があった。

台風通過直後の同月13日には「令和元年台風第19号非常災害対策本部」を設置し、同本部による会議を計18回開催(参照:https://www.bousai.go.jp/updates/r1typhoon19/r1typhoon19/taisakukaigi.html)した。また、武田内閣府特命担当大臣(防災)を団長とする政府調査団の派遣(10月14日:福島県)、安倍内閣総理大臣及び武田内閣府特命担当大臣(防災)による現地視察(同月17日:福島県及び宮城県、20日:長野県)を実施したほか、武田内閣府特命担当大臣(防災)による現地視察(10月13日:長野県、21日:茨城県、栃木県、福島県、24日:神奈川県、26日:千葉県、28日:岩手県、11月9日:静岡県)、今井内閣府大臣政務官による現地視察(10月13日:千葉県、14日:千葉県、20日:長野県、21日:茨城県、栃木県、福島県、26日:千葉県)を実施した。

また、各省庁からも各被災地へ職員が派遣され、自治体の長や幹部と直接調整等を行いながら迅速な意思決定を行い、省庁横断的な支援を行った。警察、消防、自衛隊、国土交通省・海上保安庁においては、発災直後から全国の部隊を被災地に派遣し、救出救助活動や二次災害防止活動、生活支援等を実施した(警察災害派遣隊延べ約4,400人、緊急消防援助隊延べ約3,000人、自衛隊員延べ約7万9千人、緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)延べ約3万1千人、海上保安庁巡視船艇延べ751隻及び航空機延べ197機)。

同月14日には、各府省の事務次官級職員を構成員とする「被災者生活支援チーム」を設置し、被災状況の把握や応急対策の総合調整、被災地の課題やニーズに基づいた生活支援等を迅速かつ強力に進め、11月7日に「被災者の生活と生業の再建に向けた対策パッケージ」を取りまとめた(参照:特集第1章第2節被害者対策支援パッケージについて)。同月18日には、令和元年台風第19号を特定非常災害に指定し、政府の総力を挙げて災害応急対策を推進した。

激甚災害の指定については、令和元年10月11日から同月26日までの間の暴風雨及び豪雨による災害(令和元年台風第19号、第20号及び第21号の暴風雨を含む。)として、令和元年10月18日及び21日、11月19日に指定見込みの公表を行い、10月29日に指定政令、11月29日に一部改正政令の閣議決定を行った(14-4「令和元年東日本台風」参照)。

このほか、「被災市区町村応援職員確保システム」に基づく被災自治体への応援職員の派遣が行われ、被災10市町の災害マネジメントを支援するため、10府県市から延べ約570名の総括支援チームを派遣し、災害対策本部の運営支援等を行った。また、被災27市町への対口支援団体を決定し、34道府県市から延べ約9,300名の応援職員を派遣し、罹災証明に係る家屋調査や避難所運営等の支援を行った。

現地視察を行う安倍内閣総理大臣、武田内閣府特命担当大臣(防災)、今井内閣府大臣政務官
現地視察を行う安倍内閣総理大臣、武田内閣府特命担当大臣(防災)、今井内閣府大臣政務官

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