平成30年版 防災白書|特集 第3章 第1節 予防のための投資


第3章 今後の取組

第1節 予防のための投資

激化する災害に対処するため、比較的発生頻度の高い災害外力(以下「外力」という。)に対し、施設により災害の発生を防止し、施設の整備等を着実に進めることが適応策としても重要である。さらに、施設の能力を上回る外力に対しては、施設の運用、構造、整備手順等の工夫を図る等、施策を総動員してできる限り被害を軽減する施策に取り組む必要がある。施設の能力を大幅に上回る外力に対しては、ソフト対策を重点に壊滅的被害を回避するための施策を推進していく必要がある。

防災への投資の重要性は、平成27年3月に第3回国連防災世界会議において採択された「仙台防災枠組2015-2030」においても、指導原則の一つとして「災害リスク情報を考慮した公的・民間投資を通して、潜在的なリスク要因に対処することは、発災後の応急対応や復旧に第一義的に依存するよりも費用対効果があり、また持続可能な開発に資するものである」と掲げられ、4つある優先行動の一つでも、「災害リスク削減のための投資」が重要であると謳われている。このように、予防のための投資を重要視することは、国際的にも共通の理解となっているところである。

第二次世界大戦後の日本における毎年の風水害による平均死者数と治水ダムの累積建設数
第二次世界大戦後の日本における毎年の風水害による平均死者数と治水ダムの累積建設数

ソフト対策として近年注目されているものは、「自助・共助」による事前防災(第1部第1章第1節参照)や保険等である。特に被災地においては金銭的ダメージによる後発的影響も大きい。災害が発生し、住宅が被害を受けた場合、修理や建て替えにかかる費用負担は大きなものとなり、公的な支援金や善意による義援金だけでは住宅・生活再建には十分な金額を補てんができない現状にある。いざという時にスムーズに住宅・生活を再建するためには、保険・共済に加入するなど、平時における積極的な自発的備えが重要な鍵となる。

風水害・土砂災害や地震を補償する保険・共済に加入していれば、損害の程度に応じて保険金・共済金が支払われる。保険・共済には火災保険(共済)に上乗せで付帯するものや、基本的な補償に含まれるタイプのものなどがあり、補償の対象や内容は様々である。地震保険は、世帯加入率は約3割であり(附属資料59(附-77)参照)、火災保険とセットで契約することが前提であるが、最近は火災保険を契約していなくても加入できる保険商品も出てきている。しかしながら、地震保険でカバーできる金額範囲は限定され、通常火災保険の3~5割程度となっているため、加入する金額や契約の内容によっては、住宅を元通りに再建するための費用の全額が支払われないこととなる。よって、既にこれらの保険等に加入している場合でも、自宅の災害リスクをしっかり確認し、平時から補償対象・内容が十分であるか見直しておくことが大切であり、十分な耐震補強を行っておくことも必要である。また、建物被害の程度にかかわらず、津波による水没等で家具や家電等の家財も大きく被害を受け、再購入が必要になる場合もあることから、建物の補償に加え、家財の補償の双方で備えることが望ましい。(なお、津波被害は、地震保険の補償対象であるが、風水害(洪水等)による被害は、火災保険の水災補償となる。)

予防のための投資を進めるためには、対策の主体となる地方公共団体、企業、住民等が「どのような被害」が「どの程度の発生頻度」で発生する可能性があるかを認識して対策を進める必要がある。よって各主体から見て分かりやすく、きめ細かい災害リスク情報を提示することが重要である。これは、「仙台防災枠組2015-2030」4つの優先行動の優先行動1(災害リスクの理解)でも掲げられている。

「仙台防災枠組2015-2030」4つの優先行動
「仙台防災枠組2015-2030」4つの優先行動

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