平成30年版 防災白書|特集 第2章 第3節 今後の課題


第3節 今後の課題

平成29年7月九州北部豪雨での被害を受け、内閣府では、「平成29年7月九州北部豪雨災害を踏まえた避難に関する検討会」(座長:田中 淳(東京大学教授)構成員:有識者及び関係省庁)を設置し、現地調査・ヒアリングから得られた情報等をもとに、同年12月に、住民等の避難行動や市町村の防災体制等に関し、今後対応すべき事項「平成29年7月九州北部豪雨災害を踏まえた避難に関する今後の取組について」を報告としてとりまとめた。(参照:https://www.bousai.go.jp/fusuigai/kyusyu_hinan/index.html

今回の被災地は、平成24年7月九州北部豪雨の経験から防災への意識が高く、地区ごとに事前から自主防災マップが作成されていたこと、避難時の要支援者と支援者の名簿作成や避難訓練等が実施されていたこと等が被害の軽減に寄与したと考えられる。本報告では、このような事例を他の地方公共団体の参考となるよう周知すること等により「地域の防災力」を高める視点、今回の災害を教訓とした「情報の提供・収集」、「避難勧告等の発令・伝達」、「防災体制」の強化を図っていくべき視点(4つの視点)から求められる対応を指摘した。

<求められる対応>

【地域の防災力】

  • 住民が自ら水害・土砂災害から身を守るための手引書の作成や、住民・行政・専門家等が一体となったワークショップ等による地区防災計画の作成等を推進することにより、自助・共助の取組を促進。手引書の作成にあたっては、今回の現地調査・ヒアリング等を通じて得られた、自助・共助を強化する各自治体の取組についても参考事例として記載し、地域の災害の危険性への理解促進に向けた平時からの取組の重要性についても周知
  • 水害への理解を促し避難に関する取組を促進するため、地形情報等を活用して山地部の中小河川で水害の危険性が高い地域について情報提供を推進
  • 災害発生との関連の強い“危険度分布”等の新たな情報の一層の理解・活用に向け、周知活動などの平時からの取組を促進
  • 水害・土砂災害時に適切に避難行動がとれるよう、専門家の助言を踏まえるなど地域の実情に応じた防災訓練の実施を促進
現地調査・ヒアリングの概要
現地調査・ヒアリングの概要

【情報提供・収集】

  • 水害への理解を促し避難に関する取組を促進するため、地形情報等を活用して山地部の中小河川で水害の危険性が高い地域について情報提供を推進
  • 避難勧告等の早期発令に向けた水位情報等の迅速な把握のため、水位計・監視カメラ等の設置促進、中小河川の水位予測手法の検討、流域雨量指数の予測値(洪水警報の危険度分布)等の活用に関する研修等を実施
  • ホットラインによる直接的な助言の促進
  • 今回の災害の教訓を踏まえ研修等を通じ「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

【避難勧告等の発令・伝達】

  • 洪水予報河川・水位周知河川以外の河川について市町村による避難勧告等の発令基準の策定を促進
  • 土砂災害警戒情報発表の迅速化や集中豪雨の予測精度の向上を推進、土砂災害警戒情報を活用した避難勧告の的確な発令の促進
  • 情報伝達手段の多重化等の促進
  • 今回の災害の教訓を踏まえ研修等を通じ「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

【防災体制】

  • 災害対策本部機能等の強化
  • 水害対応タイムラインの策定・確認による確実な防災体制の確立
  • 今回の災害の教訓を踏まえ研修等を通じ「避難勧告等に関するガイドライン」を周知

これを受け、関係省庁は連携し、水害・土砂災害からの防災・減災対策を加速するための具体的な取組を順次実施しており、内閣府においては消防庁と連携し、全国の地方公共団体に対し、「平成29年7月九州北部豪雨災害を踏まえた避難に関する今後の取組について(通知)」(参照:https://www.bousai.go.jp/fusuigai/kyusyu_hinan/index.html)を発出した。

同通知では、<1>地域の防災力を高めるための取組について、避難場所の確保・住民への周知、避難行動要支援者の避難支援、出水期前の避難訓練実施等、<2>情報の収集について、水位計・監視カメラの設置、避難勧告等の発令の引き金となる情報の整理等、<3>避難勧告等の発令・伝達について、洪水予報河川・水位周知河川以外の河川での発令基準策定等、<4>防災体制について、職員参集や非常用電源確保などの業務継続性確保等、<5>山地部の中小河川における水害の危険性について、住民への情報提供や普及啓発等の取組を推進している。

地区ごとの自主防災マップの作成(朝倉市)
地区ごとの自主防災マップの作成(朝倉市)

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内閣府政策統括官(防災担当)

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