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平成26年版 防災白書|第1部 第2章 第5節 5-2 原子力施設等の安全確保に向けた取組


5-2 原子力施設等の安全確保に向けた取組

(1)東京電力福島第一原子力発電所の事故後の対応

平成23年3月11日に深刻な重大事故が発生した東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策については、政府が総力をあげて対策を実施することとなっている。原子力規制委員会としても、「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」等に規制当局として参加し、技術的・専門的な助言を行っている。具体的に、東京電力福島第一原子力発電所の実用発電用原子炉施設については、原子力規制委員会は、「原子炉等規制法」に基づき、平成24年11月に「特定原子力施設」に指定するとともに、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)に「措置を講ずべき事項」を示し、当該施設の保安等の措置を実施するための計画(以下「実施計画」という。)の提出を求め、平成24年12月に東京電力から実施計画を受領した。

原子力規制委員会は、「特定原子力施設監視・評価検討会」を設け、「措置を講ずべき事項」に合致しているか等の視点から、現地調査も踏まえながら審査を行い、留意事項を示した上で、平成25年8月に実施計画を認可した。実施計画を認可した後、これまでに作業の進捗状況に応じ、6件の実施計画の変更を認可した。また、実施計画の遵守状況の検査として、保安検査を3回、使用前検査を3件、溶接検査を2件実施するなど、東京電力の取組を確認している。

留意事項のうち、敷地周辺の放射線防護については、平成26年1月時点においても敷地境界における実効線量の低減が達成されず、今後も更に増大するおそれがある状況を踏まえ、原子力規制委員会は、平成26年2月に、東京電力に対して、敷地境界における実効線量を段階的に低減させ、遅くとも平成28年3月末までに、施設全体からの放射性物質等の追加的放出による敷地境界の実効線量の評価値を1mSv/年未満とすることなどを指示した。

護岸付近の地下水から放射性物質が検出されたことに端を発する汚染水問題に対しては、地中/海洋への汚染水の拡散範囲の特定、拡散防止策を検討するための「汚染水対策検討ワーキンググループ」及び東京電力福島第一原子力発電所事故に関連した海洋モニタリングの現状を踏まえ、そのあり方について検討を行う「海洋モニタリングに関する検討会」を設置し、継続して議論した。

これまでもリスクの高さを指摘してきた高濃度汚染水が滞留している海水配管トレンチについて、「汚染水対策検討ワーキングループ」においてタービン建屋との止水や濃度低減の取組等の対策の進捗を確認した。

リスクの高さが指摘されてきた4号機使用済燃料プールについては、当初の計画を前倒しして燃料の取出しが開始され、今のところ順調に作業が進んでいる。取出し作業の開始に当たって東京電力から提出された実施計画について、時宜に即して審査や検査が行われたとして、IAEAからも良好事例として評価された。

その他、汚染水の漏えいが続き、東京電力福島第一原子力発電所における現場管理能力が著しく低下しているとの懸念から、原子力規制委員会委員長は、平成25年10月に東京電力代表取締役社長に対し、作業員の環境やサイト内の放射線対策など、環境を整備することや、燃料取出しを注意して進めること等を求めた。また、原子力規制委員会では、汚染水対策をはじめとする現地の監視体制の強化を図るため、5月までに福島第一原子力規制事務所の原子力保安検査官計2名を増員するなど、東京電力福島第一原子力発電所全体のリスク低減に向け、継続して取り組んだ。

平成25年11月には、避難をしている住民の帰還に当たり、帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的な考え方として、個人の被ばく線量低減や健康不安対策等を通じて、長期的な目標として帰還後の住民が受ける追加被ばく線量が年間1mSv以下になることを目指すこと等の提言を取りまとめた。

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故に係る放射線モニタリング

東京電力福島第一原子力発電所の事故に係る放射線モニタリングについては、関係府省や福島県等と連携して「総合モニタリング計画」に沿って陸域や海域等のモニタリングを実施し、解析結果を、毎週、公表している。海域のモニタリングについては、「海洋モニタリングに関する検討会」を設置し、モニタリング強化の検討等を行った。また、平成25年11月には、IAEAの海洋モニタリングの専門家による視察を受け入れ、原子力規制委員会と日本の関係機関は放射線レベルを監視するための包括的なモニタリングプログラムを策定していること等の評価がなされた。

(3)原子炉等規制法に基づく規制基準等の見直し

原子力規制委員会は、発電用原子炉については平成25年7月に、核燃料施設等については12月に、重大事故(シビアアクシデント)対策の強化や、最新の技術的知見を取り入れ既設の施設にも新規制基準への適合を義務づける制度(バックフィット制度)の導入等を含む新たな基準を策定・施行した。

発電用原子炉については検討チームを立ち上げ、設計基準の強化やシビアアクシデント対策等に関する基準や地震及び津波に対する設計基準等について議論を行った。その際には、国会事故調査委員会報告書などで、これまでに明らかにされた情報を踏まえ、海外の規制基準も確認しながら、世界で最も厳しい水準の新規制基準を策定した。新基準では、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、地震や津波に耐える性能の強化に加え、巨大地震や大津波により、万一過酷事故が発生した場合に対する十分な準備を取り入れている。

核燃料施設等については、取り扱う核燃料物質等の形態や施設の構造が多種多様であることから、それらの特徴を踏まえて、施設ごとに基準を策定することとし、それぞれの施設に応じた基準等について検討した。基準の策定に当たっては、IAEAの安全要件等に示された考え方を取り入れたほか、各国の規制基準を参考にした。

(4)適合性審査の実施

原子力規制委員会では、発電用原子炉及び核燃料施設等に係る新規制基準に基づき、適合性審査を開始した。

発電用原子炉については、現在すべての運転が停止している中で、これまでに8事業者から10原子力発電所(17プラント)について申請が行われている状況にある。こうした中、原子力規制委員会においては、これまでに申請がなされたものについて、100回の審査会合、8回の現地調査の実施に加え、申請書の記載内容に関して事実確認をするための事務的なヒアリングを順次行い、適合性審査を進めた。

審査においては、設置変更許可、工事計画認可及び保安規定変更認可に係る申請書について、新規制基準への適合性を確認する作業を進めている。具体的には、基準地震動や基準津波の評価、それらに対する耐震・耐津波設計方針の確認、シビアアクシデント等の発生及び拡大防止に必要な設備、手順、体制、訓練等の確認や有効性評価、内部溢水、内部火災、竜巻に関する影響評価や対策等について確認を行っている。

また、核燃料施設等についても、8施設より申請があり、新規制基準に基づく適合性審査を進めました。加えて、六ふっ化ウランを正圧で扱う燃料加工施設及び中高出力試験研究炉に係る現状確認を進めた。

(5)原子力発電所敷地内破砕帯の調査

旧原子力安全・保安院での検討において、発電所敷地内の破砕帯の追加調査が必要とされた6つの発電所について、関係学会から推薦を受けた有識者で構成する会合を開催し、現地調査と評価を実施している。平成24年度からの関西電力大飯発電所、日本原子力発電敦賀発電所及び東北電力東通原子力発電所に続き、平成25年度は日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅ、関西電力美浜発電所及び北陸電力志賀原子力発電所について有識者会合による現地調査と評価を開始し、20回の評価等会合と8回の現地調査等を実施した。

敦賀発電所については、平成25年5月に原子炉建屋直下を通る破砕帯が「耐震設計上考慮する活断層」であるとの評価を取りまとめた。その後、事業者から追加調査結果が提出され、評価の見直しの要否について有識者会合で議論を行うこととなった。大飯発電所については、平成26年2月に安全上重要な施設の直下を通る破砕帯について、「将来活動する可能性のある断層等」ではないとの評価を取りまとめた。

(6)全国の原子力施設の検査等の状況

原子力規制委員会では、原子炉サイト近傍に原子力規制事務所(全22カ所)を設置し、原子力保安検査官を配置して、日々の保安規定の遵守状況の確認や施設定期検査の立会い等を行っている。

原子力施設の規制への適合性を確認するために、「原子炉等規制法」(平成25年7月7日までは「電気事業法(昭和39年法律第170号)」)に基づき、商業用の原子力発電所16施設で施設定期検査を実施している。また、「原子炉等規制法」に基づき、15施設(試験研究用原子炉施設4施設、加工施設全6施設、研究開発段階炉[廃止措置中]全1施設、実用発電用原子炉[廃止措置中]1施設、再処理施設1施設、廃棄物管理施設全2施設)で施設定期検査を実施した。また、同法に基づき、保安規定遵守状況を確認する検査(保安検査)を、62施設(加工施設全6施設、試験研究用原子炉全6施設、試験研究用原子炉[廃止措置中]全8施設、実用発電用原子炉全17施設、実用発電用原子炉[廃止措置中]全2施設、研究開発段階炉[建設中]全1施設、研究開発段階炉[廃止措置中]全1施設、再処理施設全2施設、廃棄物管理施設全2施設、廃棄物埋設施設全2施設、核燃料物質使用施設全15施設)について行った。

また、「原子炉等規制法」に基づき報告のあった事故・故障等は6件(実用発電用原子炉5件、加工施設1件)。

(7)放射性同位元素等による放射線障害の防止

原子力規制委員会では、放射性同位元素等の放射線利用による放射線障害を防止するため、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」に基づき、許可使用者等(平成26年3月末現在の事業所数7,751)について、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄その他の取扱い、放射線発生装置の使用及び放射性汚染物の廃棄その他の取扱いに関する規制を行っている。平成25年度内に、39件の新規使用許可、426件の許可使用に係る変更許可、204件の立入検査等を行いました。

また、当該法律に基づき報告のあった事故・故障等は3件である。


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