平成26年版 防災白書|第1部 第2章 第5節 5-1 原子力規制委員会の設置


第5節 原子力災害への対応状況

5-1 原子力規制委員会の設置

原子力規制委員会は、平成23年3月11日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「東京電力福島第一原子力発電所」という。)の重大事故の教訓を踏まえ、従前は関係行政機関が担っていた原子力の規制、核セキュリティに加え、「原子力基本法(昭和30年法律186号)」及び「原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)」の規定に基づく原子力災害対策指針の策定等、原子力防災に関する技術的・専門的立場からの事務を一元的に担う組織として、平成24年9月に設置された。平成25年4月より、国際約束に基づく保障措置、放射線モニタリング及び放射性同位元素の使用等の規制についての事務も担っている。また、平成26年3月1日には、独立行政法人原子力安全基盤機構(以下「原子力安全基盤機構」という。)が原子力規制委員会に統合され、その業務が移管された。

平成26年3月現在の定員は1,025名、平成25年度予算は63,273百万円(補正後)(なお、内閣府において、別途、原子力防災関連予算33,766百万円(補正後)を計上。ともに復興庁に計上されている東日本大震災復興特別会計を含む)。平成25年度中に、原子力規制委員会を47回開催し、必要な審議、評価、決定等を行った。

(1)原子力規制委員会の体制強化

「原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)」附則第6条第4項に基づき、原子力規制委員会全体として専門性を高めていくため、独立行政法人原子力安全基盤機構の解散に関する法律案が平成25年10月に第185回臨時国会に提出され、11月に成立した(平成25年法律第82号)。平成26年3月の同法施行に伴い、原子力安全基盤機構が原子力規制委員会に統合され、その業務が移管された。

移管された業務の実施に加え、原子力規制委員会での厳格かつ適正な審査・検査や東京電力福島第一原子力発電所対応、原子力防災対策の充実等を確保するため、統合に伴う一時的な業務増へ対応するための定員を一部含め、原子力規制委員会の定員は、全体で545人から1,025人に増員された。組織についても、[1]原子力規制委員会の管理・運営の統括部門と[2]旧原子力安全基盤機構の安全研究部門を中心とした「技術基盤グループ」から成る「長官官房」、[3]核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。以下「原子炉等規制法」という。)に基づく審査・検査や東京電力福島第一原子力発電所対応を行う「原子力規制部」、[4]事故時の住民避難やモニタリング体制の整備を進める「放射線防護対策部」、[5]原子力規制人材の育成を行う「原子力安全人材育成センター」が設置されることとなった(図表1-2-15)。

図表1-2-15 原子力規制委員会図表1-2-15 原子力規制委員会
(2)透明性・中立性の確保、人材育成

原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて設置された経緯を踏まえ、国民からの信頼の向上に向けて、継続的に取り組んでいくことが極めて重要であると認識している。原子力規制委員会は、原子力利用に対する確かな規制を通じて、人と環境を守るという使命を果たすため、科学的・技術的見地から、公正・中立に、かつ独立して意思決定を行うこと、その際、多様な意見を聴くことによって独善的にならないように留意すること、形式主義を排し、現場を重視する姿勢を貫き、真に実効ある規制を追求すること、意思決定のプロセスを含め、規制に関わる情報の開示を徹底し、透明性を確保することを組織理念として、様々な政策課題に取り組んでいる。

例えば、平成25年7月の実用発電用原子炉の新規制基準の策定や、その後の基準への適合性審査においては、多くの有識者を交えて科学的・技術的な観点から精力的な議論及び審査を進めている。

中立性の確保については、平成24年9月に独自に定めた原子力規制委員会委員の在任期間中の行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を遵守した。また、原子力規制委員会及び各種検討会合等のインターネット動画サイトによる生中継、会議の議事、議事録及び資料の公開、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せの概要、被規制者との面談の概要等を原則公開することに加え、行政文書の積極的公開、幅広い報道機関に対する積極的な記者会見(定例は原子力規制委員会委員長/週1回、原子力規制庁報道官/週2回)等を継続し、意思決定過程の透明性の確保に努めている。

加えて、実効ある規制事務を遂行するためには職員の資質向上を図ることが重要である。原子力規制委員会全体の専門性の向上を着実に実施するため、原子力規制に関する専門研修等に加え、原子力工学の知識の維持・向上のための研修等を実施した。

(3)国際機関及び諸外国との連携・協力

国際社会からの信頼確保や連携・協力及び国際社会への情報発信も重要課題である。原子力規制委員会は、平成25年5月及び9月の国際原子力規制者会議(INRA)の主催をはじめとして、各種会議等における意見交換、原子力規制に係る情報交換に関する海外の原子力規制機関等との二国間取極等文書(米国、英国、フランス、カナダ、ロシア、スウェーデン、スペイン及びフィンランド)の締結及び原子力安全条約の履行に係るレビュー等を通じた国際機関や諸外国との連携の強化に加え、諸外国の原子力規制に係る経験や知見を積極的に取り入れるよう努めている。また、国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の国際機関や海外の原子力規制機関等に、帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(英語版)や東京電力福島第一原子力発電所近辺の海域モニタリングの結果等について、積極的に情報発信した。さらに、IAEAの総合原子力安全規制評価サービス(IRRS)を、平成27年末を目処に受け入れることを表明した。


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