平成26年版 防災白書|第1部 第2章 第5節 5-3 原子力防災の改善


5-3 原子力防災の改善

(1)原子力災害対策の体制整備

東京電力福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を踏まえた新たな原子力災害対策を構築するため、平成24年9月の原子力規制委員会の設置に合わせ、「原子力基本法」、「原子力災害対策特別措置法」等の関連法令が改正され、政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築された(図表1-2-16)。

図表1-2-16 新たな原子力災害対策の枠組み図表1-2-16 新たな原子力災害対策の枠組み

政府全体の原子力防災対策を推進するための機関として、内閣に「原子力防災会議」が設置され、原子力規制委員会委員長が会議の副議長に位置づけられている。また、大量の放射性物質の放出等、原子力緊急事態が発生した場合に設置される「原子力災害対策本部」においては、原子力規制委員会委員長がその副本部長に位置づけられ、原子力施設に係る技術的・専門的事項の判断については、原子力規制委員会が一義的に担当することとされている。

「原子力災害対策特別措置法」では、原子力規制委員会は、事業者、国、地方自治体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため、原子力災害対策指針を定めることとされている。原子力規制委員会においては、平成24年10月に同指針を策定した後も検討を重ね、数次の改定を行った。平成25年6月の改定では、緊急時モニタリングの実施体制や運用方法、安定ヨウ素剤の事前配布の方法等について具体化した。また、9月の改定では、緊急時における防護措置の実施の判断基準となるEAL(緊急時活動レベル)の枠組みについて、新規制基準を踏まえたものに改定した。

これらの原子力規制委員会の検討を踏まえた対応の実行性を高めるため、平成26年1月には、防災基本計画の原子力災害対策編が修正された。

(2)緊急時対応への取組

平成24年9月19日の平成24年度第1回原子力規制委員会において、警戒事象(原子力発電所立地市町村における震度5弱以上の地震の発生等)が発生した際に、ERC(緊急時対応センター)の立上げや現地原子力規制事務所長等が緊急時対策所に参集する等の原子力規制委員会の対応について定めた、「原子力規制委員会初動対応マニュアル」が決定されている。また、緊急時における情報連絡を円滑かつ確実なものとするため、国、地方公共団体、事業者における各拠点が接続されたテレビ会議システム、衛星回線を活用した通信システムなどが整備されている。

平成25年10月11日及び12日に鹿児島県九州電力株式会社川内原子力発電所を対象とした、国、原子力事業者、地方公共団体等が一体となって実施する原子力総合防災訓練に、原子力規制委員会としても参加した。

また、原子力事業者の防災訓練は「原子力災害対策特別措置法」に基づき、原子力規制委員会にその結果を報告することとなっている。現地の原子力規制事務所に駐在する原子力防災専門官等により訓練を現場で確認するとともに、原子力規制委員会はこの訓練について評価を行うため、原子力事業者訓練報告会を開催し、原子力事業者の訓練についての評価を行った。

(3)環境モニタリング

原子力発電施設等の周辺地域における放射線の影響及び全国の環境放射能水準を調査するため、全国47都道府県における環境放射能水準調査や、原子力発電所等周辺海域(全16海域)における海水等の放射能分析、原子力発電施設等の立地・隣接道府県(24道府県)が実施する放射能調査等を支援した。この他、米国原子力艦寄港に係る放射能調査を着実に実施した。


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