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平成26年版 防災白書|第1部 第1章 第3節 3-5 多様な主体の連携による防災活動の推進


3-5 多様な主体の連携による防災活動の推進

災害による被害を軽減し、災害に対する安全・安心を確保するためには行政による災害対応を強化し、「公助」を充実させていくことはもとより、国民一人一人や企業等が自ら取り組む「自助」や地域住民や企業、各種団体、ボランティア等が力を合わせて助け合う「共助」の果たす役割は極めて大きい。また、これらの連携が不可欠である。まず、国民一人一人が防災に対する意識を高め、自らの命と生活を守れるようにすべきであり、日ごろから、家庭や職場における備えの実践として、自らと家族の避難方法の確認、防災情報の入手先や活用方法の確認、家具等の固定、家庭や企業での備蓄、住宅・建築物の耐震化、保険の加入等の取組を進めることが必要である。

また、地域コミュニティの防災力の向上という観点から、地域の住民及び事業者が自発的に行う防災活動に関する「地区防災計画制度」の活用等によって地域の住民や事業者が主体となって行政と連携しつつ、地域コミュニティの活性化を図るための取組を進めることが必要である(特集参照)。

国民一人一人が災害による被害を減らすための具体的な行動に着手し、さらにそのような行動が日常的に行われるよう国において以下の取組を行っている。

(1)防災に関する国民運動の展開

社会全体の防災力を向上させ、災害による被害を軽減するためには、個人や家庭、地域、企業、関係団体等社会の様々な主体が連携し、総力を挙げて災害被害を軽減する国民運動の展開を図る必要がある。

そのような中で、政府は、毎年、9月1日を「防災の日」とし、この日を含む1週間を防災週間として、防災意識を高めるための行事を実施しており、その主要行事として、内閣府では、防災訓練等を実施している。防災ポスターコンクールは、ポスターを描くことをきっかけとして、家族や学校・地域で防災について考えてもらうことにより防災意識の向上を目的として実施している。

また、平成23年に「津波対策の推進に関する法律」が制定され、11月5日が「津波防災の日」と定められたことから、津波対策についての国民の理解と関心を高めるための防災訓練の実施やシンポジウム等を開催している。

平成18年度より内閣府では、被災者から被害の体験談のヒアリングを行い、エピソードとしてまとめることにより、一般の方が災害をイメージし、明日起きるかもしれない災害に対して、今日(一日前)から備えるための一助として役立てていただくことを目的として「一日前プロジェクト」を実施している。このプロジェクトは地域のイベントや社内報、ラジオ番組や新聞記事に活用されており、多くの方に防災について考えてもらうなど、各自治体、企業、地域等における防災教育の現場等で活用されている。

(2)防災教育の取組

一人ひとりが自然災害を正しく理解し、自らの的確な判断の下で防災・減災行動をとれるようするためには、防災教育が重要であり、東日本大震災では、過去の災害教訓に基づく防災教育や避難訓練により、適切な避難行動を取ることができた学校の事例があったなど、その効果が改めて確認されたところであり、学校や地域における防災教育をより一層充実し、正しい防災意識をかん養していくことが重要である。

文部科学省では東日本大震災での被害状況や学校等での避難等の対応等の調査を実施するとともに、各学校が地震・津波等から児童生徒等を守るための防災マニュアルを作成する際の参考となるような共通的な留意事項を取りまとめた「学校防災マニュアル(地震・津波災害)作成の手引き」を作成した。

また、「東日本大震災を受けた防災教育・防災管理等に関する有識者会議」において今後の防災教育等の在り方について検討を進め、

  • 自然災害等の危険に際して自らの命を守り抜くため「主体的に行動する態度」を育成すること
  • 支援者となる視点から、安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高めること
  • 被災時における安全を確保するための防災管理・組織活動の充実・徹底

が示されたことを踏まえ、文部科学省では、平成24年度から

i 児童生徒等の安全確保を推進するため、「主体的に行動する態度」を育成するための教育手法や緊急地震速報等の防災に関する科学技術等を活用した避難行動に係る指導方法の開発・普及

ii 支援者としての視点から、被災地へのボランティア活動等を通じて、安全で安心な社会づくりに貢献する意識を高める教育手法の開発・普及

iii 外部有識者を学校に派遣し、「危険等発生時対処要領」や避難訓練などに対するチェック・助言と地域の防災関係機関との連携体制の構築

を支援する「実践的防災教育総合支援事業」を実施している。

また、東日本大震災等近年の自然災害等により明らかとなった新たな課題を踏まえ、阪神・淡路大震災を受けて平成10年に作成された「生きる力をはぐくむ防災教育の展開」を、今後の学校における防災教育・防災管理等の在り方を示す参考資料として改訂するなど学校における防災教育の充実を図っている。

内閣府では、全国の地域や学校で防災教育を充実するため、全国各地の防災教育に意欲をもつ団体・学校・個人等に対し、より充実した防災教育のプランを募集し、「防災教育チャレンジプラン」として選出した上で、その実践への支援を行っている。学校内外での防災教育のコンテンツを収集し、取組成果(教育手法、教材、留意事項、問い合わせ先など)を取りまとめ、ホームページに公開し、広く学校などの利用に供することにより、各地域で自立的に防災教育に取り組む環境づくりを行っている。

消防庁では、地域の防災力を高めて災害被害の軽減を図ることを目的として、地域住民、消防職員・消防団員、地方公務員等に、インターネット上で防災・危機管理に関する学びの場を提供する「防災・危機管理e-カレッジ」を開講している。また、小中学生などが防災に関する知識や実践的な技術を身につけることができるよう、広く防災教育において活用できる指導者用防災教材「チャレンジ!防災48」を作成し、全国の都道府県、市町村、消防本部等に配布したほか、「防災・危機管理e-カレッジ」で公開している。

(3)災害教訓の伝承

岩手県宮古市では1933年の昭和三陸地震津波の際の教訓を刻んだ「大津波(おおつなみ)記念碑」が建ち「此処より下に家を建てるな」と書かれており、この碑の教えを守り、石碑より高い場所に住居を構えていた住民が、東日本大震災の際に津波による建物被害を受けなかったように過去の災害の教訓・伝承を次世代に受け継いでいくことは、災害被害を軽減するために大変重要である。

災害教訓の継承に関する取組として、内閣府では被災の経験と国民的な知恵を的確に継承し、国民の防災意識を啓発するとともに、将来の災害対応に資することを目的として、過去に経験した大災害について、被災の状況、政府の対応、国民生活への影響、社会経済への影響などを体系的に収集している。これは、過去の事実を明らかにし、現代社会への有用な在り方を考える一助として役立ててもらうことを目的として実施している。

さらに、この調査報告書から災害教訓や体験を抽出し、わかりやすく取りまとめた「災害史に学ぶ」や「災害を語りつぐ」といった冊子を作成するとともに、語り部等にこれらを活用してもらうことにより、災害教訓の普及啓発に努めている。

(4)防災ボランティアの取組等

<1> 防災ボランティア活動の環境整備に向けた政府の対応

阪神・淡路大震災では、全国から数多くのボランティアが被災地へと駆けつけ、各種のボランティア活動に参加した。これは、多くの被災者に勇気と希望を与え、復興の大きな原動力となったことから、平成7年は「ボランティア元年」と言われ、防災ボランティア活動の環境整備の必要性が認識された。

内閣府では、平成16年度に相次いで発生した災害の際に、防災ボランティア活動の環境整備に関する様々な課題や論点が浮き彫りになったことを契機として、消防庁や厚生労働省等と連携しつつ、全国各地の防災ボランティア活動の関係者が、ボランティア活動における課題や成果を持ち寄り、知識を共有化できるよう、「防災ボランティア活動検討会」を立ち上げた。この検討会では、普及啓発等の資料の取りまとめ、防災ボランティア活動に関する情報提供・共有、先進的な取組事例等の紹介・共有、防災ボランティア活動に係る課題等について意見交換等を行っている。

平成25年度の検討会においては、東日本大震災で明らかになった大規模災害時における広域連携に関する課題に関して、後述「大規模災害時におけるボランティア活動の広域連携に関する有識者会議」での中間整理状況や「広域大規模連携訓練」の実施手引きを題材とし、「政府・地方公共団体とボランティアとの連携」「ボランティア間の連携」をテーマとして検討を行った。

<2> 東日本大震災の教訓を踏まえた取組

i 災害対策基本法の改正

これまでのボランティアによる防災活動の環境の整備については、国及び地方公共団体の施策上の配慮事項として規定されていた(法第8条第2項第13号)ところであるが、東日本大震災をはじめ、近年の災害時においては、多くのボランティアが活発な活動を行い、被災地内外で重要な役割を果たしたところであり、今後発生が懸念される大規模広域災害等において、ボランティアの役割はますます大きくなることが見込まれている。このため、平成25年6月の災害対策基本法改正時に、国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならないことを明確化した(法第5条の3関係)。

ii 広域大規模災害時の連携

南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害が発生した場合にあっては、ボランティア、NPONGO、企業など様々な民間団体による被災地での支援活動の展開が想定される。それぞれ得意とする分野を活かした民間の支援活動は、被災地での支援活動において、大きな力の発揮が期待される。

一方で、平成23年に発生した東日本大震災において、そのあまりにも広域かつ甚大な被害を前にして、ボランティア等民間側の支援の在り方についても大きな課題が明らかになった。被災地域における災害対応能力と被害の大きさにギャップが生じる状況において、「政府・地方公共団体とボランティアとの連携」「ボランティア間の連携」という課題が浮き彫りとなり、被災地のニーズと支援側のリソースをマッチングして、支援を効果的に行うことは非常に困難であった。このような経験を踏まえて、政府では、平成25年度から「大規模災害時におけるボランティア活動の広域連携に関する有識者会議」「広域大規模連携訓練」を実施し、「政府・地方公共団体とボランティアが連携を図るために相互に情報共有をする仕組み、ボランティアが把握している被災地の情報を共有する仕組み」についてその必要性等について論議と実践の場を設定した。

(5)男女共同参画の視点からの取組

東日本大震災後、防災に関する政策・方針決定過程等における女性の参画拡大や、男女のニーズの違い等に配慮した取組が必要であることが、一層認識されるようになった。

平成24年6月の「災害対策基本法」の改正では、地域防災計画の策定等に当たり、多様な主体の意見を反映できるよう、地方防災会議の委員として、充て職となっている防災機関の職員のほか、自主防災組織を構成する者又は学識経験のある者を追加することとされた。内閣府及び総務省は、地方防災会議に男女共同参画の推進及び高齢者や障害者等の多様な主体の参画を促進するよう、地方公共団体に通知した。

全国の都道府県の地方防災会議について、委員に占める女性の割合は、平成25年12月1日現在、都道府県においては11.8%(平成24年4月比7.2ポイント増)となっている。また、女性委員が一人も任命されていない都道府県防災会議の数は平成25年4月の内閣府調査で初めてゼロとなった。地方防災会議の委員に占める女性の割合は上昇傾向にはあるが、依然として低い割合にとどまっている。引き続き、防災に関する政策・方針決定過程等における女性の参画拡大が必要である。

また、内閣府では、平成25年5月に、東日本大震災を含め、過去の災害対応における経験をもとに、男女共同参画の視点から必要な対策・対応について、予防、応急、復旧・復興等の各段階において地方公共団体が取り組む際の指針となる基本的事項を示した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」(以下「取組指針」という。)を作成した。取組指針の内容については、関係府省の協力を得て、地方公共団体の防災・復興担当部局に通知したほか、同年10月から11月にかけて内閣府及び消防庁が全国9か所で開催したブロック会議において説明を行った。平成26年2月には、取組指針の内容を分かりやすく紹介する英文パンフレットを作成・公表した(http://www.gender.go.jp/english_contents/mge/drr/pdf/learning_from_adversity.pdf(別ウィンドウで表示))。

今後も、地方公共団体において男女共同参画の視点からの防災体制が整備されるよう、取組促進の働きかけを行うこととしている。


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