平成26年版 防災白書|第1部 第1章 第3節 3-6 国際防災協力


3-6 国際防災協力

(1)世界における最近の災害

世界では、災害による多数の死者、経済被害が毎年のように発生している。世界で過去30年間(1983~2012年)に発生した災害のうち、死者数で約5割、被害額で約5割がアジア地域で発生している(図表1-1-34)。

また、平成25年度に世界で発生した主な自然災害は図表1-1-35のとおりである。

図表1-1-34 地域別に見た1983年~2012年の世界の自然災害図表1-1-34 地域別に見た1983年~2012年の世界の自然災害
図表1-1-35 平成25年度に起こった主な自然災害図表1-1-35 平成25年度に起こった主な自然災害

<1> インド北部の洪水

インドでは、モンスーンによる6月中旬からの豪雨により、北部のウッタラカンド州を中心とした広い範囲で大規模な洪水や地滑りが発生し、1,532人が死亡、約3.6万棟の家屋が倒壊、約24.4万棟の家屋が一部損壊する等、200万人を超える多くの被災者を出した。

日本政府は、現地における洪水被災者への救援物資の配布等に対する支援を目的に、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)を通じて、20万ドル(約1,640万円)の緊急無償資金協力を実施した。また、ジャパン・プラットフォーム(JPF)を通じて約6,000万円の物資・食糧配布等の緊急人道支援を行った。

<2> 中国四川省の洪水

中国では、南西部の四川省及び雲南省における7月上旬からの大雨で、四川省を中心に洪水や地滑りが頻発し58人が死亡、175人が行方不明、50万人を超える被災者を出す等、大きな被害が発生した。

これらの被災地は、4月に発生したマグニチュード7.0の地震及び2008年5月に発生したマグニチュード8.0の四川大地震の被災地とも重複しており、被災地の復旧・復興への妨げが懸念される。

<3> フィリピンにおける台風ハイヤン

平成25年11月8日、最大瞬間風速105m/s(米海軍合同台風警報センター)を記録した台風第30号(Typhoon Haiyan、フィリピン名:ヨランダ)は、フィリピン中部を襲い、9日午前、レイテ島、セブ島、パナイ島を横断した。レイテ島の中心都市タクロバンの沿岸等では、暴風雨に加えて大規模な高潮が発生し、6,245人が死亡、1,039人が行方不明、被災者は1,600万人を超え、約114万棟の家屋が損壊した。(フィリピン国家防災協議会(2014年3月6日時点))被災した多くの州や都市で停電が発生し、交通網も遮断され、被災地における水・食糧の不足が深刻となった。

日本政府は、フィリピンに対して、国際緊急援助隊として医療チーム、専門家チーム(早期復旧、油防除)、自衛隊部隊(医療・防疫、輸送活動等)の派遣を行うとともに、国際機関を通じた緊急シェルター、食料、水・衛生分野等3,000万ドル(約30億円)の緊急無償資金協力、6,000万円相当の緊急援助物資(プラスチックシート、スリーピングパッド等)の供与を実施した。

さらに日本政府は、ジャパン・プラットフォーム(JPF)を通じて約4.7億円の物資・食糧配布や住宅再建等の緊急人道支援を行った。

加えて、復旧・復興段階の支援ニーズに対応するため、500億円の災害復旧スタンドバイ借款及び66億円の無償資金協力(国際機関拠出金20億円、二国間無償資金協力46億円)の供与を決定した。

(2)国際防災協力への取組

我が国は、多くの災害の経験や教訓により培った防災に関する知識や技術を活用し、世界の災害被害の軽減に向けた国際防災協力を積極的に進めてきており、防災協力は我が国の顔の見える国際貢献の重要な分野となっている。

我が国は、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)といった国際機関の活動支援を通じた協力、アジア防災センターを通じた防災情報の共有・人材育成等やAPEC等における防災協力の推進を図る地域内防災協力等に取り組んでいる。東日本大震災に際しては、163の国及び地域並びに43国際機関から支援の申出を受け、24の国と地域から緊急援助隊、医療支援チーム及び復旧支援チームを受け入れ、国際機関も我が国において活動を実施した。また、128の国及び地域並びに機関から物資・寄付金を受領した(物資:64件、寄付金:95件(総額約175億円以上)・一部重複あり)。

東日本大震災により得られた知見や教訓は、我が国のみならず国際社会の防災力の向上にも資するものであり、大震災に際して寄せられた多大な支援に報いるためにも、国際社会に対して広く情報を発信し、共有することによって、国際防災協力を推進する大きな責務がある。

<1> 第3回国連防災世界会議

第68回国連総会の国際防災戦略に関する決議(平成25年12月)に基づき、第3回国連防災世界会議が平成27年3月14日~18日に仙台市で開催される。同会議では、平成17年1月に兵庫県神戸市で開催された第2回国連防災世界会議で採択された国際的な防災の取組指針である「兵庫行動枠組(HFA)」の後継枠組(ポスト兵庫行動枠組)が策定される予定である。我が国にとっては、東日本大震災をはじめとする幾多の自然災害から得られた教訓や知見、我が国の防災技術や防災体制の仕組み等を開発途上国にも受入れやすい形で世界と共有し、国際社会において防災の主流化を積極的に推進していく重要な機会である。また、国内外から訪れる会議参加者に、東北や日本の文化や魅力をアピールし、被災地の振興につなげていく重要な機会でもある。

第3回国連防災世界会議の開催に向けて、国連では、政府間準備委員会の地域代表で構成されるビューローが平成26年3月に設置され、世界会議の構成等について検討が始まった。今後、政府間準備委員会の会合が7月及び11月に開催され、世界会議のプログラムの承認、ポスト兵庫行動枠組の草案の作成等が行われる。

国内では、平成26年2月に、学識経験者、防災関係機関、仙台市、東北4県等の委員で構成される国内準備会合が立ち上がり、ポスト兵庫行動枠組への提案や、我が国の防災に関する知見、震災からの復興状況、被災地の振興等に関する発信について議論を開始した。さらに、世界会議開催地となる仙台市では、関係機関が連携して開催準備や関連事業等の主要な事業を実施していくため、仙台市、東北大学、地元経済界、日本政府、東北6県、関係団体等からなる第3回国連防災世界会議仙台開催実行委員会が4月に設置された。

第3回国連防災世界会議公式ロゴ第3回国連防災世界会議公式ロゴ本ロゴマークは、災害に対して強靭(レジリエント)な社会に向けて、人々が共に手を携えて行動を起こすイメージを表しています。また、5つの色は、「兵庫行動枠組(HFA)」の5つの優先行動を表しています。
[5つの優先行動]
1 災害予防を優先した国・地方の体制整備
2 災害リスクの特定・評価・観測、早期警報の向上
3 災害に強い文化構築のための知識・技術革新・教育の活用
4 潜在的なリスク要因の軽減
5 応急対応準備の強化

<2> 国連や国際会議の開催を通じた防災協力の推進

i.防災グローバル・プラットフォーム会合

「防災グローバル・プラットフォーム会合」は、兵庫行動枠組(HFA)の進捗状況を点検・評価し、今後の推進方策を検討するため、2年に一回開催される国連主催の国際会議である。

平成25年5月19日から23日にかけてスイス・ジュネーブで開催された「第4回防災グローバル・プラットフォーム会合」では、「明日の安全のための今日の投資~Resilient People,Resilient Planet~」をテーマとし、閣僚級等を含む172か国の政府機関、国連機関代表のほか、地方公共団体、民間団体等から、第3回会合を上回る3,500名以上が参加した。同会議では、各国での防災取組事例の共有のほか、防災の主流化の推進、強靭(じん)な社会の構築の重要性、気候変動による災害発生頻度の増加への懸念、急速な都市化による都市災害の頻発、災害による経済損失リスクの上昇等、様々な側面から防災に関する議論が行われた。

本会議の最終日の閉会式では、日本政府を代表して内閣府大臣政務官がスピーチを行い、その中で「第3回国連防災世界会議」を平成27年3月に仙台市で開催することを全世界に向けて発表した。

国連事務総長特別代表及び仙台市長との三者会談を行う亀岡内閣府大臣政務官国連事務総長特別代表及び仙台市長との三者会談を行う亀岡内閣府大臣政務官

ii.アジア防災閣僚級会議

「アジア防災閣僚級会議」(AMCDRR)は、第2回国連防災世界会議以降、兵庫行動枠組(HFA)についてアジア各国の実施状況や推進方策を議論するとともに、アジアにおける災害被害の軽減のための取組の成果と課題を総括するため、2年に一度開催される防災閣僚級の国際会議であり、平成24年までに計5回開催されている。

第6回会議は、第3回国連防災世界会議に向けたアジア地域プラットフォームとして、アジア地域の取組を総括し、ポスト兵庫行動枠組に向けてアジア地域のインプットを検討する重要な機会である。

iii.国際復興支援プラットフォーム(IRP

国際復興支援プラットフォーム(IRP:International Recovery Platform)は、災害からの「よりよい復興」を促進するための国際的な協力の枠組(プラットフォーム)である。兵庫行動枠組(HFA)で、災害復興過程における災害予防の観点の必要性が位置づけられたことを受けて、復興の推進を担う具体的な協力の枠組として、平成17年5月に設立され、我が国をはじめUNDPUNISDR、アジア防災センター、世界銀行等、17の国連・国際機関等がメンバーとなっている。

IRPはまた、内閣府、兵庫県、アジア防災センター等と共に「国際復興フォーラム」を毎年1月に兵庫県神戸市で開催している。平成26年1月には「災害復興における官民連携」をテーマに、21か国、34機関、155名の防災関係者とともに意見交換等を行い、第3回国連防災世界会議に向けて活発な議論を行った。

さらにIRPでは、世界各地での復興における教訓や優良事例をまとめた「復興ガイダンスノート」を11分野にわたってそれぞれ作成し、これを教材に利用した人材育成ワークショップを各国で展開しており、平成25年度末で、のべ30か国・900名以上の防災担当政府職員が履修済みとなっている。

<3> アジア・太平洋地域における防災協力

i.アジア太平洋経済協力(APEC

「アジア太平洋経済協力」(APEC)において、防災分野は重要な分野の一つに位置づけられており、メンバー国・地域により緊急事態準備作業部会(EPWG)が組織され、防災の取組に係る情報交換や共同プロジェクトの実施等が定期的に行われている。

平成25年8月には、インドネシア・バリ島において、第7回APEC防災担当高級実務者フォーラムが開催された。日本政府は、内閣府大臣官房審議官が出席し、首都直下地震対策及び第3回国連防災世界会議について説明を行った。また、災害リスク軽減に向けた取組、最近の災害対策・国際防災協力、災害リスク軽減における官民連携等をテーマとして、各国・地域から発表及び活発な意見交換が行われた。

ii.東アジア首脳会議(EAS

東アジア首脳会議(EAS)は、東アジア地域及び国際社会の重要な問題について、首脳間で率直な対話を行うために、2005年に発足した。現在は、ASEAN10か国に日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インド、米国及びロシアを加えた18か国が参加している。

防災は、EASの優先協力分野の一つとされており、平成25年度は、6月に中国、9月にオーストラリアが、それぞれ防災ワークショップを開催した。

iii.アジア防災センターの活動

アジア防災センターは、平成10年7月の設立以降、30か国(平成26年3月現在)に及ぶメンバー国とのネットワークを構築するとともに、様々な国連機関、国際機関等と積極的に連携して兵庫行動枠組(HFA)の推進に取り組んでいる。

アジア防災センターでは、「防災情報の共有」、「メンバー国の人材育成」、「コミュニティの防災力向上」、「メンバー国、国際機関、地域機関、NGOとの連携」を4つの柱として活動を行っている。平成25年度は、メンバー国政府の防災関係職員8名を客員研修員として招へいしたほか、各国政府職員等への研修の実施、第4回防災グローバル・プラットフォーム会合等の国際会議への参加、大規模災害発生に伴う人工衛星による緊急観測要請20件への対応、平成25年11月にフィリピンを襲った台風ハイヤンの被災地調査(IRP及び人と防災未来センターとの合同調査)等を行った。

また、平成26年3月には、アジア防災センターのメンバー各国が取り組んできた兵庫行動枠組(HFA)の進捗状況の確認及び課題の抽出を行い、ポスト兵庫行動枠組へ組み込まれるべき優先事項に係るアジア地域からの提案について検討するため、内閣府及びUNISDRとの共催により、東京で「アジア防災会議2014」を開催し、メンバー国や国際機関から119名が参加した。内閣府からは内閣府副大臣が出席し、開会挨拶で、東日本大震災等の経験と教訓を踏まえた日本の防災対策を世界と共有することの重要性と、第3回国連防災世界会議及びポスト兵庫行動枠組に向け、本会議からのインプットに期待する由が述べられた。

同会議においては、4つのセッションが開催され、1)アジア地域におけるHFAの進捗状況、優良事例や課題の分析に基づき、ポスト兵庫行動枠組に向けた提案について議論が行われ、防災推進のための支援、多分野にわたる関係者の防災への関与、地方レベルでの取組の更なる支援・推進及び学校安全プログラムの重要性が指摘された。続いて、2)防災分野におけるローカルレベルの活動の在り方に関する議論が行われ、予防から復興に至る全ての防災の局面で住民が関与すること、地域特性に合わせた防災活動を工夫すること、中小企業向けの事業継続計画(BCP)作成の推進が重要との指摘があった。また、3)防災に係る人材の育成と訓練について国内外の事例紹介が行われ、人材が防災にとって最も重要な資源との観点から、人材育成プログラムのさらなる改善が必要なことが指摘された。さらに、4)防災に関する宇宙技術の活用について、国際協力の成功事例としてセンチネルアジアの活動の紹介がされたほか、宇宙技術の活用についてポスト兵庫行動枠組へ反映することが重要との意見が出された。会議の最後に、第6回アジア防災閣僚会議や第3回国連防災世界会議へ向け、これらの議論を政策提言として取りまとめた。

<4> 二国間等防災協力

i. アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁(FEMA)との連携

内閣府は、米国FEMAのワシントン本部や訓練施設への訪問、ニューヨークにおけるFEMAの地方機関からのブリーフィング、APEC防災担当高級事務者フォーラムなどの機会を利用して、我が国の東日本大震災、米国のハリケーン・サンディ等、日米の災害経験や教訓、防災組織体制、人材育成・研修等について意見交換を行うとともに、両機関の協力関係の強化について確認した。

FEMA副長官を訪問する西村内閣府副大臣FEMA 副長官を訪問する西村内閣府副大臣

ii.日中韓防災協力

(日中韓防災担当閣僚級会合)

平成20年の「第1回日中韓首脳会議」における「三国間防災協力に関する共同発表」に基づき、日中韓三か国が持ち回りで「防災担当閣僚級会合」を開催することとされており、その第3回会合が平成25年11月に韓国で開催された。我が国からは、内閣府副大臣、中国からは民政部副部長、韓国からは消防防災庁長官が出席した。

本会合では、内閣府副大臣から、三国間の災害に関する経験や知識の共有等の重要性等について発言するとともに、防災における技術と情報の共有、教育と訓練等の協力体制の強化を確認する共同声明が取りまとめられた。また、第3回国連防災世界会議の成功に向けて、両国の閣僚級の出席等、協力を依頼した。

(日中韓三国防災机上演習)

平成23年3月に東京で開催された「第4回日中韓サミット」の首脳宣言では、「支援提供・受入れ能力の向上のための、各国の援助実施及び受入れ担当当局及び防災・災害応急対策担当当局間の交流の促進」並びに「種々の災害のパターンを想定した机上演習等の実施の検討」が合意されている。

この合意事項に基づいて、平成26年3月、三国協力事務局の主催により、「第2回日中韓三国防災机上演習」が日本で実施された。本演習には、日中韓各国政府の関係機関が参加し、東京で大規模地震が発生したとの想定シナリオの下で、三国間の効果的・効率的な支援・受援の方法について議論を行った。本演習を通じて、平時からの三国間での防災協力の推進や関係者間のネットワークの強化等の重要性が確認された。

iii.日韓防災会議

日本と韓国の二国間協力として、平成11年度から、日韓防災会議を両国で相互に開催しており、平成26年3月に第13回日韓防災会議を日本で開催した。本会議は、近年の災害に対する双方の取組について意見交換を行うものであり、日本側からは、「日本における緊急事態対応」、「BCPに関する取組」について説明を行った。


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