(1)住民の取組
(住民の防災意識の変化)
東日本大震災等の経験を踏まえ,災害による被害を軽減していくためには,日頃からの住民の防災意識を高め,具体的な行動に結びつけていくことが重要である。まず,東日本大震災前後の住民の意識の変化について見てみたい。
東日本大震災以前の平成21年に内閣府政府広報室が実施した「防災に関する特別世論調査」によると,大地震に備えてとっている対策として,携帯ラジオ,懐中電灯等を準備(56.7%,平成17年比7.5ポイント増)したり,避難する場所を決めたり(34.2%,平成17年比5.5ポイント増),食糧や飲料水を準備(33.4%,平成17年比7.8%増)しているとする回答が多かった。これまでの調査と比較すると対策をとっている者の比率が比較的高くなっているものの,携帯ラジオ,懐中電灯等の準備でさえ6割を切っている。日頃から災害による被害を軽減するための取組が行われるよう普及啓発を図ることが重要である(図表1-0-28)。
東日本大震災後の平成24年に国土交通省が実施した「国民意識調査」においては,東日本大震災後に,防災意識の高まり(52.0%),節電意識の高まり(43.8%),家族の絆の大切さ(39.9%)等に対する考え方が変わったとする回答が多く,未曾有の震災である東日本大震災をきっかけとして,自らの命を守る等国民の防災意識が高まったものと推測される(図表1-0-29)。
また,震災後では,首都直下地震の発生が懸念される東京都をみてみると,東京都が平成23年に実施した「インターネット都政モニターアンケート調査」においては,「防災用品の準備」や「飲料水等の備蓄」をしている者が8割前後まで増えているが,一方で,「避難場所等の確認」,「耐震診断等」,「応急手当の知識の取得」等をしている者は減少している。今後,このような減少の原因について分析を行った上で,各取組を一層促進する必要がある(図表1-0-30)。
(備蓄の状況)
住民が災害に備え,非常用食糧を備蓄する取組も進んでいる。
例えば,厚生労働省の平成23年度の「国民健康・栄養調査」によれば,非常用食糧を用意しているものは全体で47.4%に留まっており,また,年代別に見ると20代が26.7%と低くなっている。今後は,若年層も含め住民全体のより一層の備蓄を高めるための取組が必要である。(図表1-0-31)。
(地震保険の付帯率)
災害から自己の財産を守るためには,あらかじめ保険等に加入しておくことが重要である。
例えば,地震保険については,損害保険料率算出機構の調査によれば,平成23年度末時点で,契約件数約1,409万(平成20年度末比19.0%増),世帯加入率は26.0%(平成20年度末比3.6ポイント増)となっており,増加傾向にあるものの,全世帯に占める割合は1/4程度に過ぎないことから,今後さらに加入を進める必要がある(図表1-0-32)。