(2)東日本大震災におけるボランティアの取組


(2)東日本大震災におけるボランティアの取組

東日本大震災では,多くのボランティアが被災地に駆けつけ,活発な活動が行われた。全国規模のNPO・NGO等によりネットワークが構築されるとともに,被災地には地元のNPO・NGO等のネットワークが構築され,NPO・NGO等同士が連携して被災者に寄り添う息の長いボランティア活動が行われている。連携して行われた事例について,次のとおり紹介する。

事例1:石巻災害復興支援協議会

宮城県石巻市を拠点として災害復興支援に関わるNPO・NGO及び特別なスキルを持つ個人が連携し,円滑で効率的な活動を行うための場を提供する団体として石巻災害復興支援協議会が発足した(平成23年12月22日時点で約320団体が登録)。

3月20日にNPO・NGO連絡会を開いて以来,各団体の情報共有と,被災地のニーズに合わせた支援活動を行うために,毎日協議会を開催した。また,協議会と石巻市役所産業部,自衛隊により定期的に開催された「3者災害対策会議」では,活動の重複等が生じないように情報共有と活動調整が行われた。この協議会の存在により,被災地内外の多くの団体が情報を共有し,全体的な活動調整が可能となった。

事例2:遠野まごころネット

岩手県遠野市では,沿岸部が地震・津波災害で被災した際の後方支援拠点構想として,平成19年に「三陸地域地震災害後方支援拠点施設整備推進協議会」を9市町村で設立し,平時より自衛隊,消防等による総合防災訓練の実施,支援基地の整備等の受入・支援態勢を整えていた。

東日本大震災発生後の3月28日に,準備していた後方支援拠点が設置され,これに伴い遠野市民,遠野市社会福祉協議会及びボランティア団体を中心としたボランティア集団である遠野市被災地支援ネットワーク「遠野まごころネット」が設立された。(平成23年12月時点で60団体が参加)

遠野まごころネットでは,岩手県,遠野市及び各地のボランティア団体が連携し,ボランティアの受入れと沿岸被災地への送迎,派遣調整等を行った。特に各団体の支援によって整備されたボランティアの宿泊拠点は,情報と人が集まる「ハブ」として機能し,効率的かつ効果的な支援が実現された。

また,遠野まごころネットに参加している遠野市社会福祉協議会は,活動拠点となる施設の提供や各種手続の支援,定期会合等での情報共有等を行い,防災ボランティア活動の円滑な連携を支援した。

図表1-2-19 遠野におけるボランティア広域連携のモデル 図表1-2-19 遠野におけるボランティア広域連携のモデルの図表

事例3:おだがいさまセンター

福島県郡山市にあるコンベンション施設「ビッグパレットふくしま」は,東日本大震災発生後の3月16日より福島県富岡町及び川内村からの避難者を受け入れ,最大約2,500人が避難してきた。避難当初は,お互いを知らない避難者同士が多く,避難者間の交流も少ないため,避難所の運営は極めて困難であった。

このような状況の中,避難所の運営支援で配置されていた県職員,同施設の職員及び外部からのボランティア団体が連携し,避難所の運営を良い方向へ導くための話合いを始めた。

経験豊かなボランティアによる「避難者の居場所づくりとしてのサロン活動と足湯が大事」との助言に基づき,喫茶コーナーや足湯の運営を始めた。これをきっかけに,避難者が自然に集まるようになり,避難者同士が自主的に「カフェ」を作り始めた。

交流の場となった喫茶コーナー 交流の場となった喫茶コーナーの写真

外部からの支援者の知恵と県職員等の熱意が一体になることで,混乱していた避難所の運営が好転し始めた。

そして,避難者同士が助け合い自立的な生活を取り戻すための支援及び外部からのボランティア受入れを一元的に行うセンターの構想が生まれ、5月1日に富岡町及び川内村の社会福祉協議会が中心となり,生活支援ボランティアセンター「おだがいさまセンター」が立ち上げられることになった。

「おだがいさまセンター」が呼びかけ,ガーデニング,草むしり,ミニFM局等の活動に,県内外のボランティアや避難者も自ら関わり,これらの活動を通じて避難者同士が交流した。このことは,避難者の自立した生活再建と応急仮設住宅等への移転を促し,同施設は8月末に避難所としての役割を終えた。

避難所を支えたおだがいさまセンターは,平成24年2月に郡山市富田町の仮設住宅内に移り,富岡町が運営する,富岡町生活復興支援センター「おだがいさまセンター」として生まれ変わった。そして,仮設住宅入居者から県外避難者まで広範な支援の枠組み構築や,避難住民の自主的な生活再建の支援活動,外部からのボランティアの受入れ窓口及び周辺地域との交流拠点として機能している(平成24年6月時点)。

図表1-2-20 おだがいさまセンター 図表1-2-20 おだがいさまセンターの図表

事例4:東日本大震災支援全国ネットワーク

東日本大震災後の3月16日から,防災ボランティアの団体,活動者及び学識者が中心となり,全国のNPO・NGO等による広域連携のネットワーク作りが始まり,3月30日に「東日本大震災支援全国ネットワーク」(以下「JCN」という。)が設立された(平成23年12月時点で約700団体が参加)。

大きな災害においては,ボランティア団体ごとに個別の活動を展開しても,支援が行き届かない被災地が生じるおそれがあること等から,JCN加盟団体の間で,物資・情報の交換等の「横の連携」が図られた。

これを支える情報インフラとして,

・全国の団体とメールで情報共有する「メーリングリスト」

・全国の団体の活動状況を地域別・支援内容別に紹介する「全国支援状況」

・支援活動を続けていくための工夫と指針を情報提供する「活動ガイドライン集」

・広域避難者を支援する「広域避難者支援」

・各団体の支援事業等を紹介する「活動事例集」

・各府省庁との連絡会議等,国とボランティアとの連携を図る「政府との連携」

等を掲載したホームページを運営した。

また,インターネットを通じた活発な情報の交換や適宜の情報共有に加え,顔の見える関係作りのために「現地会議」を開催した。

JCNは,防災活動を行うボランティア団体が「全国規模の受援側と支援側のネットワーク作り」のために自ら立ち上げた組織であり,この活動は,今後の広域連携の在り方を探る重要な試みとなった。

図表1-2-21 JCNの活動 図表1-2-21 JCNの活動の図表

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.