(1)災害対策の理念の明確化


第3章 政府として今後更なる取組が求められる災害対策

(1)災害対策の理念の明確化

東日本大震災では,災害の発生を防ぐことはできないこと,ハード・ソフトの様々な対策を組み合わせて実施することにより災害時の被害を最小化する「減災」の考え方を重視すべきこと,とりわけ,自然災害を構造物だけで防ぎきることができず,津波が来るおそれがある場合には,「直ちに逃げること」や「自助」「共助」の重要性をあらためて認識させられた。

<1> 「減災」の考え方の明確化

「防災対策推進検討会議」中間報告においても,対策の基本的考え方として,災害時の被害を最小化する「減災」の考え方が浸透していなかったことや,被害想定に基づき各種防災対策が実施されてきたが,それで災害を防ぎきることができるとの過信につながり,一部地域において被害を大きくさせた可能性があることが指摘されている。一方で,「減災」については,その明確な目標や個別の対策との関係等について,必ずしも十分な社会的な合意が形成されている訳ではない。

このため,今後,被害を完全に防ぐことができない大災害に見舞われる可能性を直視し,被害を完全に防ぐことができない大災害に備えた「減災」の考え方が災害対策の基本方針として機能するよう,法的な位置付けについて検討する必要がある。

<2> 「自助」「共助」の理念の明確化

東日本大震災では,ボランティアの活躍,企業の貢献,地域での助け合い等が見られ,日頃の防災教育等の成果として,自分の命は自分で守ることが実行された。このような「自助」「共助」の取組は,行政機能が低下する可能性のある大規模災害が発生した場合や,少子高齢化が進み地域防災力の低下がみられる場合に,ますます重要になると思われる。このため,国,地方公共団体による「公助」の役割とその限界を踏まえつつ,国民一人一人や企業が自らの命,安全を自ら守る「自助」,地域の人々や企業,ボランティア,団体等が協働して地域の安全を守る「共助」の理念やそれぞれの役割について検討を進め,法的にも明確にしていくことを検討していく必要がある。

<3> 多様な主体の協働により社会の総力を挙げて立ち向かう防災

「減災」に向けて実効ある取組を進めるためには,行政のみならず,住民,企業,ボランティア,自治組織等の地域の様々な主体が地域の防災対策に積極的に参画,協働する取組を強化し,社会の総力をあげて地域の防災力の向上を図っていくことが必要である。このため「自助」,「共助」の理念の明確化とともに,ボランティアの活動環境等の整備のための具体的方策,企業の事業継続計画(BCP)の策定及び改善を促進するための法的位置付けや具体的な支援措置の充実等についても検討していくことが必要である。


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