(4)地震動や津波による被害に関する教訓


(4)地震動や津波による被害に関する教訓

(津波からの避難)

津波警報の第1報で発表した地震の規模や津波の高さの予想を,実際の地震の規模や津波の高さが大きく上回っていたため,被害が大きくなったとの指摘がある。また,その後,GPS波浪計が海面の急激な上昇を観測したことを受け,予想される津波の高さは段階的に引き上げられたが,地震による停電等により,津波警報の続報や津波の観測情報が被災地の住民等に十分に伝わらなかったため,被害が大きくなったとの指摘がある。

津波警報等に従って高台等へ避難して多くの者が助かった一方,地震後すぐに避難しなかったり,避難後に再度戻ったこと等により犠牲になった者も多かった。津波避難ビルの一部においては,3〜4階の高さまで津波が押し寄せ,避難場所として機能しなかった。また,指定避難所に避難したものの,そこで犠牲になった者もいた。

津波からの避難方法は,徒歩によることを原則として今まで周知してきたところであるが,自動車による避難で難を逃れた者も多くいる一方で,自動車内で被災した者も多かった。

また,過去の津波被害を受けて一旦高台へ移転したものの,海岸近くへ再移転していた住家等が,今回の津波により被災した。

このような状況を踏まえ,津波警報や避難の在り方について検討する必要がある。

(津波防護施設等)

防波堤や防潮堤,海岸防災林は,津波の陸地への到達時間を遅らせる等の効果を発揮したが,その多くが津波により越流・破壊された。

一方,高所のない平地部にあった盛土構造の道路が,津波に対して避難場所や防潮堤として有効に機能した。

このような状況を踏まえ,津波に対するハード対策の在り方について検討する必要がある。

(広域に及ぶ地震動)

地震の揺れによる建物被害は,地震動の周期特性等により,地震規模を考えるとそれほど大きくなかったものの,東北地方から関東地方にかけての広い範囲において,多数の全壊,半壊,一部破損等の被害があった。また,地震動による送電線の切断,上下水道管渠の損壊等によって,電気・水道・ガス等のライフラインや,鉄道等の交通施設に甚大な被害をもたらした。

さらに,震源から遠く離れた首都圏や大阪府等で長周期地震動(ゆっくりと長く揺れる地震による揺れで,高層ビル,石油タンク等の長大構造物が破損することがある。)による大きな揺れが観測された。

液状化による宅地や地下構造物等の被害が,震源から遠く離れた千葉県や埼玉県等において発生した。

このような状況を踏まえ,地震動による被害は極めて広域に及ぶことについて留意する必要がある。

(建築物や土木構造物の耐震化)

東北地方太平洋沖地震では最大震度7の揺れ,その余震でも強い揺れがあったため,多くの建築物や土木構造物が破損した一方,例えば,学校施設は耐震化が進んでいたことにより,大きな被害を受けたものが少なかった。

建築物や土木構造物の耐震設計や耐震補強が有効であることが明らかとなったことから,建築物や土木構造物の耐震化を一層進める必要がある。

図表1-2-1 新幹線の早期地震検知システム 図表1-2-1 新幹線の早期地震検知システムの図表

(首都圏における帰宅困難者)

広範囲な地震動が生じたことから,首都圏において,鉄道の多くが運行を停止したこと等により,多くの帰宅困難者が発生した。また,多くの人がすぐに帰宅を開始したため,駅周辺や路上等において混雑・混乱が発生した。

このような状況を踏まえ,帰宅困難者対策について検討する必要がある。

(教訓の活用・伝承,教育及び訓練)

「此処より下に家を建てるな」等と刻まれた石碑の教訓を守り高台に住んでいた住民は助かった事例や,日頃からの防災教育に基づき中学生が小学生の避難を助け,また,中学生等の避難行動がきっかけとなって周囲の住民も避難し,被害を最小限に抑えた事例があった。一方,過去の災害の教訓が時間の経過とともに忘れ去られ,多くの者が犠牲になった地区もあった。住民の生命を守ることを最優先として,迅速な避難を確実に行うためにも,防災教育・避難訓練等を組み合わせた対策を講じていくことが必要である。

また,災害対応に関係する首長を含む公務員に対しても,防災教育や訓練が重要である。

国,被災地方公共団体,その他の地方公共団体の連携等を強化するため,広域なブロックごとの訓練,国民の防災意識高揚のため,多数の国民が参加する多角参加型訓練等の実践的訓練について,国として企画・実施することが必要である。


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