(2)広域で大規模な災害への即応力に関する教訓


(2)広域で大規模な災害への即応力に関する教訓

(自然災害における「緊急事態」への対処)

東日本大震災においては,一部の市町村において,首長が欠け,役場が壊滅的被害を受ける等,行政執行機能を喪失した。こうした事態は,これまでの災害対策においては,想定されていないことであった。

従って,今後は,東日本大震災を超えるような,さらに著しい巨大な災害において地方公共団体の行政機能が喪失するといった事態も想定し,行政機能の維持等に関して,国や被災地内外の地方公共団体の役割の見直しも含めて,検討を行う必要がある。

(被災地を支える災害対応体制)

全国の自衛隊,警察,消防,海上保安庁等の行政機関,公共機関等が,被災地における救命救急,災害復旧・復興等のため前例のない大規模な活動を行った。しかし,消防,警察は一部を除き,後方支援やその資機材及び装備について,長期間の活動を支援するには十分なものではなかった。

また,被災地外の後方支援拠点として,岩手県遠野市が非常に効果的な役割を果たした。

津波警報下で避難誘導等を行った警察官,消防職団員等においては,多くの住民を無事に避難させることができた一方,そのために犠牲になった者がいた。

また,災害直後に災害派遣医療チーム(DMAT),日本医師会災害医療チーム(JMAT)を始め医療関係団体等から多数の医療チームが現地へ派遣されることにより,応急医療活動等が展開されたが,重複して医師や看護師が配置される等医療チームの配置等のコーディネート機能等が十分ではなかった。

このような状況を踏まえ,被災地を支える災害対応体制の在り方について検討する必要がある。

(被災地方公共団体の課題等)

被災した市町村においては,災害応急対策,被災者支援等の業務が増大し,対応能力の限界を超えたり,職員や庁舎が被災し,行政機能が著しく低下する例も多かった。加えて,通信の途絶等のため,被害の把握や被害状況の報告・発信等が行えない状況が多く発生した。このため,国や県においては,発災当初,被災市町村の実情を全く把握できなかったこともあった。

また,地方公共団体では,技術系職員の数が必ずしも十分ではないため,被災地の復旧・復興が円滑に進まない場合があった。そして,通常経験することのない激甚な災害であったため,公共施設の復旧に当たっての災害査定に時間を要した。さらに,広範な地域,多数の市町村に被害が及んだため,県のサポートが十分機能しなかった。

この対策として,被災した公共土木施設の点検等の支援を国が行ったほか,地方公共団体に代わって国が復旧工事を実施した例もある。

一方,被災した地方公共団体の多くは,災害時に他の地方公共団体等から応援を受ける計画を持っていなかったため,応援の受け入れが円滑に進まなかった。

このような状況を踏まえ,被災市町村への応援体制等の在り方について検討する必要がある。

(ライフライン・物流)

国土交通省東北地方整備局が中心となって行った「くしの歯作戦」によって,被災地の主要な道路の啓開作業が迅速に行われたことが,速やかな救命・救助活動,支援物資輸送等につながった。

一方,発電所やライフラインの主要設備が津波や地震動により被災し,復旧まで長期間を要する事例があった。また,製油所,油槽所及びサービスステーションが多数被災するとともに,被災地外からの物流網が途絶したことから,被災地への燃料の供給が停滞した。

さらに,流通段階での状況についての情報が,当初,政府へ十分に伝わらなかった。また,政府において,燃料を確保すべき優先順位及び燃料不足が及ぼす社会全体や応急活動への影響についての事前の認識・準備不足があった。

各ライフライン事業者や事業者間の相互応援により,ライフラインの復旧の促進が図られたが,津波被災地域においては,事業者の事務所が被災し,施設管理用図面・データを全て消失したこと等が復旧活動が遅れる要因となった。

また,国民の不安心理が増大する中で,商品の需給バランスや市中在庫量等を把握できなかったため,全国的に生活必需品が一時的に入手困難となった。

このような状況を踏まえ,災害発生時におけるライフラインや物流の在り方について検討する必要がある。


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