内閣府では,気軽な気持ちで防災の知識にふれてもらい,できることから行動を起こしてもらうことを目的に,公民館やホームセンターなど地域の方が普段から身近に出入りしている場所で,有識者と市民とが,防災についてお互いに話し合う交流の場として「ぼうさいカフェ」を全国各地で開催した。
内容としては「地震が起きたときに食器棚から食器が落ちて割れないよう扉を紐で結んでおく」「地震時に室内に割れたガラスが散乱して避難できなくなることを防ぐために,ガラスの安全や枕元にズックを置いておく」といった,参加者がすぐにでも家庭のなかで取り組める防災のノウハウを提供することを中心に,講師が一方的に説明するのではなく,進行役を交え専門知識のない方にも分かりやすい言葉で対話を進め,ゲーム等を活用し,手を使いながら一緒に防災について学んだ。
「ぼうさいカフェ」の当日の様子や開催のための情報ヒント集は,「災害被害を軽減する国民運動のホームページ」から見ることができる。このようにだれでも気軽に参加できる防災イベントが全国に広がっていくことを期待している。

参加者との対話

カードゲーム「クロスロード」

自宅周辺の地図をみならがご近所の方と図上訓練

古くから町に伝わる津波よけのお祭り「ナーパイ」

ホームセンターを歩きながら家具の耐震補強を説明

参加者と対話する泉防災担当大臣
内閣府では昨年度から引き続き,被災から一定期間を経過した被災者や災害対応経験者の方々から「もし,災害の一日前にもどることができたら,あなたは何をしますか」をテーマに,<1>被災直後の行動,<2>体験を通じて上手くいったと思うこと,失敗したと思うこと,<3>もう一度災害が発生したならば,次はどのように行動したいか,<4>そのために日頃から何を準備しておけばよかったか,といった本音の話を聞き取り,これらの話から導き出されるさまざまな教訓や身につまされる体験をショートストーリー(エピソード)に取りまとめた。
このプロジェクトは,町や学校の回覧板や会社の社内報等にコラムとして活用してもらい,多くの方に読んでいただき防災について考えてもらうことを第1の目的としているが,報告書には「一日前プロジェクト」を実施するための手引きを掲載している。今後「読み手」から「作り手」へと変化し,全国各地に「一日前プロジェクト」が広がり,根付いていくことを期待している。
これらのエピソードは,「災害被害を軽減する国民運動のホームページ」から見ることができる。(非営利の目的であればエピソード・イラストを自由に使用してかまわない。)
◆やっぱりみんな倒れてしまった〜物が散乱して前に進めず〜(石巻市50代男性)
「ガ,ガ,ガ」ときて目がさめて,「ああ,これがいわゆる宮城沖地震なのかな」って,立ちながら感じていました。
部屋が2階に4部屋ほどあって,私は道路側の階段から一番遠い部屋で寝ていました。そのとき女房はもう朝起きていて,1階で朝ご飯のしたくをしていましたので,無事かどうか確かめに行こうと思いました。
ようやくフスマをあけて部屋から脱出しましたが,家の中のありとあらゆるものが倒れたり,落ちたりしていて,足の踏み場もないくらいでしたので,なかなか前に進めないのです。
で,2階から下の茶の間に行くまでに,10分はかかりました。
ちゃんと地震が来るとわかっていたら,いろんなものを留めていたと思うんですけれども,それをやっていなかったものだから,やっぱりみんな倒れてしまったわけです。
ただ,茶の間の大きな食器棚だけは,L字金具を買ってきて何か所か留めていたので,倒れませんでした。やっててよかったなと思いました。

◆水圧でドアが開かない〜地下室のドアはいつでも開けておく〜(杉並区60代女性)
うちもギリギリだったんですが,坂が窪地みたいになっているところの1階の方たちは,一晩腰までつかりっぱなしですから,もう悲劇的でしたね。床下,床上浸水でも,2階のある方は2階に行きました。
ご近所では,楽器の練習をしていたご主人が知らないうちに地下室に閉じ込められてしまいました。奥さんが外から押しても全然だめで,しょうがないからドアを壊すしかないかとかやっているうちにも,水がどんどん増えてきてしまったんです。
水圧がすごくて,全然動けない。必死になってもがいているうちに,水が引いてきて助かったのですが,結局ドアのちょうつがいを壊したんです。道に水がたまって,救急車も入ってこれないから大騒ぎでした。
その方はいつも防音のために地下室のドアを閉めていたのですが,今回そういう経験をして,いつもドアは開けておかなきゃいけないんだということがわかったようです。

◆2階のトイレから水が噴き出す〜洪水時の外出は危険〜(杉並区40代女性)
川が増水すると下水が逆流してトイレから水が噴き上がることがありますが,今回の水害では,2階のトイレから水が噴き出した家もありました。そういう時には,ビニール袋に水を入れてポンとふたをしておけばある程度防げるそうですが,ほんとうにビックリしました。
マンホールの蓋が持ち上げられて水が噴き出しているか所もあったので,あの時道路を流れていた水は汚水が混じっていたはずなんです。なので,子どもたちが感染症にならないか心配でしたね。
臭いもきつくて,洗ってもどうにもならないので,あの日履いていた靴は捨てました。夜であまりよく見えなかったから,いろんな危険な漂流物があるところを,平気で膝ぐらいまである水の中をジャブジャブ歩いていたけれど,ずいぶん危ないことをしていたんだなと思います。
マンホールに落ちたり,感染症にかかる心配もあるだけに,洪水時に外出するときには気をつけないといけないですね。
