コラム 新潟県中越沖地震における自動車部品メーカーの被災とその影響


平成19年7月の新潟県中越沖地震では,自動車エンジンの燃費・環境性能を左右する重要部品であるピストンリングの国内シェア50%,世界シェア20%を占める自動車部品メーカーが被災し,こうした重要部品の生産が完全に停止するに至ったが,この停止に伴って,日本の基幹産業の一つである自動車産業を担っている国内自動車メーカー全社が数日間とはいえ国内生産を全面的に休止することとなった。

「日本経済2007—2008」や平成19年8月の「地域経済動向」では,この影響による業界全体での減産規模は,災害に伴うものとしては最多の13万台超にも及ぶとともに,これを日本全体の鉱工業生産動向を表す経済指標である鉱工業生産指数(同月)で見ると,自動車を含む輸送機械の動向が全体の指数を1.1%ポイント程度押し下げることになったとしている。

特定部品生産停止の影響を示したグラフ

一企業の被災に伴う事象であるにもかかわらず,各種の経済動向分析で取り上げられるなど日本経済全体に大きな影響を及ぼすことが懸念されたとともに,マイカーの納車にも滞りが発生するなど国民生活の身近なところにまで目に見える形で影響が及んだ。このため,災害に伴う経済被害の影響の大きさや広範さについて社会的に大いに耳目を集めるとともに,経済活動に関する災害対策の社会的側面を国民が実感しうる機会となった。

今回の災害では,こうした状況にありながら,復旧に向けた業界の一致団結した取組みやその後の国内自動車メーカー各社における生産努力により,日本経済全体への影響という点からは事なきを得たが,同様の事態が首都直下地震等のように更に大規模かつ広域的な災害に伴って発生した場合には,対応が困難となるおそれも大きい。



所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.