世界各国とりわけ開発途上国においては,経済,社会の発展のために防災対策は不可欠である。
しかしながら,国の政策決定者は災害により壊滅的な被害を受けてはじめて防災政策の重要性に気付き,抜本的な防災対策に取りかかる例が多い。
全ての国が大災害を防災政策の出発点とする必要はない。「愚者は経験に学び,賢者は歴史に学ぶ」というが,政策決定者は過去の事例・教訓を学び,防災対策に直ちに着手することが必要である。
例えば,我が国においては,1950年代までは,毎年のように台風により1,000人を超える死者が発生していた。
しかしながら,昭和34(1959)年に大きな被害をもたらした伊勢湾台風を契機とし,総合的かつ計画的な取組みが始まった。昭和36(1961)年には「災害対策基本法」が制定され,更に,治水事業,気象観測等の防災に対する投資を拡充し,現在では台風による死者数,経済被害の軽減に効果を発揮している。
この背景には,我が国の経済成長があるが,経済成長と防災対策が好循環となった代表例といえる。
このような我が国の経験は,途上国の防災政策の構築に効果的に活用されることが望ましい。