2−1 国連防災世界会議



2 国連防災世界会議と世界の防災への取組み

2−1 国連防災世界会議

 阪神・淡路大震災から10年の節目を迎えた2005年1月18日〜22日,兵庫県神戸市において国連防災世界会議が開催された。この会議は,世界全体の災害による被害の軽減を目指す21世紀の新しい防災指針を策定することを目的とし,168カ国の国連加盟国(うち閣僚級以上の参加は38カ国),78機関の国連機関など国際機関,161団体のNGO等から総勢4,000人以上が参加した(このほか国連主催の会議の一環として一般公開事業も実施され,一般の市民を中心に40,000人以上の参加があった)。
(1)会議開催までの経緯
  国連は,1990年代を国際防災の10年(IDNDR)と定め,国際協調行動を通じ全世界,特に発展途上国における自然災害による被害の軽減を図ってきた。日本でも,1989年に内閣総理大臣を本部長とする国際防災10年推進本部を設置し,同活動を推進するとともに,その中間年である1994年に横浜において世界で初めての「国連防災世界会議」が開催された。この会議では,持続可能な経済成長は災害に強い社会の構築と事前の準備による被害軽減なくして達成できないことや,人命,財産を守り自然災害による被害を軽減するためには地球規模の防災体制確立に向けた事業に着手する等の基本認識を示し,その後の世界の災害対策の指針となる「横浜戦略とその行動計画」(以下,「横浜戦略」という。)を採択した。
 「横浜戦略」の内容は多岐にわたるが,大きくは次の2点に要約される。1点目は,持続可能な経済成長と開発は,各国における充分な防災対策による被害軽減なくしては達成できないとの認識を示したことにある。2点目は,これを実施するための防災体制の確立の必要性であり,各国の防災体制の確立とともに,地球規模の防災協力体制の確立に向けた取組みを求めたことにある。
 「横浜戦略」のこのような考え方を基本として,世界は初めて「災害による被害の軽減」という地球規模の課題に取組むこととなった。
 その結果,各国における防災部局の設置や地域レベルの協力体制の確立など,具体的な進展が見られ,国際的には,国連に災害評価調整活動が強化されるなど,緊急援助に関する取組みは大きく進んだ。また「横浜戦略」を受けた国内の成果として,1998年7月,神戸市にアジア地域の多国間防災協力の推進を目的とする「アジア防災センター」を創設したことがあげられる。
 しかしながら,自然災害により依然として多くの犠牲者が生じるとともに,被災者数や経済被害は大きく増加しており,災害による被害は発展途上国を中心とする災害に対して脆弱な地域に集中している。これらは,貧困と人口の過密化により,かつてないほどの人々が氾濫原や地すべり地帯での生活を余儀なくされるなど,人間活動が災害の深刻さを助長していることや,多くの開発活動はリスクを減少させるよりもハザードに対する脆弱性をむしろ増加させていることが大きな要因となっている。

自然災害の数,死者数,被災者数,経済的被害額の推移
 このような状況を受けて,国連では「国際防災の10年」の成果を継承し残された課題に取り組むため,災害予防を重点的に進める活動として,2000年に国際防災戦略(ISDR)を開始した。ISDRの活動の主要な目的は,防災施策を災害後の対応中心から災害の予防・管理へと進化させること,さらに,災害に強いコミュニティの形成に向けて地域コミュニティレベルの取組みを強化することの2点にある。
 さらに国連は,2001年の総会において,「横浜戦略」の点検を行うことを決定し,その締めくくりの場としての会議の開催を検討していた。そこで,日本政府は,阪神・淡路大震災から10年を迎える2005年1月の機会をとらえ,横浜での開催以来2回目となる「国連防災世界会議」を,兵庫県神戸市に招致することを決め,2003年12月23日(日本時間24日),ニューヨークの第58回国連総会本会議において,我が国をはじめ141カ国の共同提案による国連防災世界会議の開催に関する決議案が全会一致で採択されるにいたった。
 その後,日本政府は開催国として,主催者である国連と緊密に連携して準備を進め,2004年5月,10月にジュネーブで開催された準備会合には,多くの国連加盟国や国連機関が参加し,会議成果などについて準備が進められた。
 会議まで1ヶ月を切った昨年12月26日,死者・行方不明者が30万人にのぼるインドネシア・スマトラ島沖大地震及び津波災害が発生した。これにより防災に対する世界の関心が大いに高まり,世界各国から多数の参加のもとでさらに熱心な議論が展開されるところとなった。

(2)国内における準備体制
  我が国は,国連総会において正式に決議案が採択される半年以上前に国連防災世界会議を本邦に招致する方針を固め,2003年5月の中央防災会議における決定,7月の閣議了解を経て,全府省をあげて会議成功に取り組んでいくことを決めた。
 また,今回の会議においては,阪神・淡路大震災から10年の節目であることから,兵庫県と神戸市といった地元地方公共団体も国連防災世界会議の招致を希望し,国連防災世界会議で使用する会場・施設の準備,さらに一般公開事業であるパブリックフォーラムの円滑な推進などを国と連携して行うこととなった。2004年11月には地元地方公共団体や関係機関を中心に「国連防災世界会議推進協力委員会」(委員長:伊藤滋早稲田大学教授)が設置され,国からも内閣府,外務省,国土交通省近畿地方整備局がこれに参画し,国と地元が一丸となった推進体制が整備されることとなった。
 さらに国において,全府省の緊密な連携・協力のもと会議開催に向けて準備を進めていくために,「国連防災世界会議関係省庁企画推進会議」を2004年2月に設置した。
 また,国連防災世界会議に向けて,国際防災分野における課題や,これに対する日本の貢献のあり方について検討するために,国際防災の分野の有識者,国際機関職員等からなる「国連防災世界会議に係る国内準備会合」(委員長:伊藤滋早稲田大学教授)を2004年2月に設置した。本番の会議までに計6回の会合が開催され,防災に関する様々な分野における知見が提供されるとともに,活発な意見交換が行われ,復興支援についての国際的な協力支援の仕組みや会議成果の実施とフォローアップを行うための「防災に関する情報集(ポートフォリオ)」といった日本の貢献策に反映されることとなった。
(3)会議の概要

 国連防災世界会議は,国連加盟国等が新たな防災指針の策定等を議論する政府間会合,国連加盟国や国連機関等によって新たな防災指針等に関連する個別専門のテーマを議論するテーマ別会合,公開シンポジウムや総合防災展などの一般参加事業であるパブリックフォーラムから構成された。
a 政府間会合
[1] 開会式
18日午前,神戸ポートピアホテルにおいて,天皇皇后両陛下の御臨席のもと開会式が行われた。冒頭,出席者全員によりインドネシア・スマトラ島沖大地震及び津波災害の犠牲者への黙祷が捧げられ,主催者国連のコフィ・アナン事務総長からの「この会議には,世界から,コミュニティや国々が自然災害への抵抗力を高める手助けとなること,資源を動員し人々のエンパワーメントを図ること,さらにグローバルな行動を強化しこれまでの経験をさらに一歩進めることが期待されている。」というビデオメッセージが続いた。引き続いて,ヤン・エグランド国連事務次長のあいさつ,天皇陛下のおことば,村田日本政府代表団長(防災担当大臣),井戸兵庫県知事からの歓迎のあいさつが行われた。この後,村田日本政府代表団長が議長に選出され,議事手続規則と議題の採択,さらにNGOの認証手続,主要委員会(起草委員会)の設置手続が行われた。

さらに,この日の午後の政府間全体会合では,小泉内閣総理大臣の開催国ステートメントが行われた。


 

〈小泉総理開催国ステートメントの要旨〉
○インド洋地震津波災害に対し,同じアジアの一員として,被災国の復旧・復興に向け積極的な役割を果たしていく。
○世界で使われているtsunamiが日本語であることを紹介。150年ほど前の「稲むらの火」のエピソードを紹介し,災害の知識や教訓を身につけること,災害時の迅速な判断・行動,日頃からの災害への備えの重要性を訴える。
○阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた防災体制の強化を説明。
○津波防災に関する国際協力の例として,アジア防災センターによるパプアニューギニアにおける津波防災パンフレットの普及啓発プロジェクト,モルディブにおける日本のODAを活用した海岸護岸整備が今回の津波被害の軽減に役立ったことを紹介。
○1960年のチリ地震津波により地震発生の約1日後に津波が日本を襲い,多くの犠牲者を出したのを教訓に,太平洋の津波警報システムが構築されたことを踏まえ,インド洋の津波早期警戒体制の構築の必要性を訴えつつ,JICAによる研修や国連国際防災戦略(UN/ISDR)への財政的支援などをはじめ必要な支援を行うことを表明。
○我が国における防災訓練への市民参加,地震予知の取組など,「備え」についての活動を紹介。
○日本の国際防災協力に関する資料を配付し,災害による被害,人命の損失を防ぐことは人類共通の願いであり,我が国は,情報や知識の共有,人的技術的貢献,財政面からの復興支援の全てにおいて最大限の国際協力を行う旨を表明。


[2] 一般討論(各国ステートメント)
政府間の全体会議では,引き続き4日間にわたり,各国の政府代表や国連機関等国際機関の代表等からの声明が行われ,会議成果への意見や各国の防災対策の取組みなどが発表された。我が国からは,日本政府代表団長代理の江渡内閣府大臣政務官がステートメントを行った。
 

〈江渡内閣府大臣政務官ステートメントの要旨〉
○災害が持続可能な開発の大きな障害となっており,災害予防の文化の普及が重要であることを訴える。
○インド洋地域の津波早期警戒体制が速やかに構築される必要がある。
○我が国は,会議成果の実施とフォローアップを重視しており,「防災に関する情報集(ポートフォリオ)」といった,情報共有の仕組みを設けることを提案している。我が国の具体的な国際防災協力の行動事例として,我が国に拠点を有するアジア防災センターや国連人道問題調整部(UN/OCHA)神戸事務所,国連人間居住計画(UN/HABITAT)アジア太平洋地域事務所との連携事業を展開していること,また,防災活動の優良事例として,有珠山噴火災害時における事前のハザードマップの周知や災害情報の住民への迅速な提供による被害軽減の成果を紹介した。また,我が国が有する防災技術のリストをとりまとめたことを紹介し,具体例として,100ドルで日干しレンガ構造の建物を耐震化する技術など安価でも効果が上がる技術を説明した。


b テーマ別会合
[1] ハイレベル・ラウンドテーブル
18〜19日にかけて,国連防災世界会議に集まったハイレベルのオピニオンリーダーの意見交換を行い,参加者全体の防災への関心をより高め,会議を通じて高度な知見を広く全世界にアピールするため,政府閣僚,国連加盟国及び関係国連機関の代表者等が参加する3つのハイレベル・ラウンドテーブルが行われた。
i )災害リスク:今後の開発課題(18日,15:00−16:30)
 スチーブンスOCHAジュネーブ事務所長,緒方JICA理事長,トーマス英国国際開発政務次官,テプファー国連環境計画事務局長ほかが発表し,緒方JICA理事長は,災害対策で重要なポイントは,地方公共団体が地域と中央との間をいかにうまくとりもつかであることを呼びかけた。
ii )リスクとの共存へ向けて(18日,16:30−18:00)
 井戸兵庫県知事,松浦UNESCO事務局長,ヒンケル国連大学学長ほかが出席した。この中で兵庫県知事は,阪神・淡路大震災からの復興に関して,被災前の状況を回復するではなく創造的復興を目指したこと,都市計画による復興を進めるにあたっては市民参加のまちづくりを推進したことを発表した。
iii)新たなリスク:明日は何が起こるのか?(19日,10:00−11:30)
 ブリセーニョISDR事務局長,李中国民政部部長,ジャローWMO事務局長,ビウUN-HABITAT事務次長ほかが出席した。ジャローWMO事務局長は,防災への1ドルの投資で7ドルの被害を防げること,2010年までに気象災害による死者を半減することを目標としていることを述べた。

[2] テーマ別パネル
 テーマ別パネルでは,政府間会合で議論される会議の成果と直接関連する次の5つのテーマについて専門的な議論が展開された。
i)ガバナンス:リスク削減に向けた制度的・政策的枠組み
 議 長 国:南アフリカ
 主導機関:UNDP,UN-HABITAT,UNV,Provention Consortium
ii)リスク特定,評価,監視,早期警報
 議 長 国:アメリカ合衆国
 主導機関:WMO,EC/JRC,UNU
iii)知識と教育の活用: 災害に強いコミュニティの構築
 議 長 国:チリ
 主導機関:UNESCO,IFRC,UNICEF
iv)潜在的なリスクの削減
 議 長 国:ルーマニア
 主導機関:UNEP,WHO,UNCRD
v)適切な対応への備え
 議 長 国:バングラディシュ
 主導機関:OCHA,WFP
[3] テーマ別セッション(専門的分科会)
 テーマ別パネルにおける5つのテーマのもとに,46のテーマ別セッション(専門的分科会)が国連加盟国,関係国連機関,認証NGO等の主催により行われた。このうち,日本政府としては,インド洋災害に関する特別会合のほか,次の9のセッションを主催し,いずれのセッションも多くの関係者の参加のもと,さまざまな情報・知見の交換が行われることとなった。
これらのセッションの議論の結果は,それぞれのテーマ別パネルの議長国によりとりまとめられ,議長国の代表者から政府間会合の閉会式において報告された。
テーマ2 リスク特定,評価,監視,早期警報
      2.1 国土交通省「総合的な河川管理:技術とコミュニティ活動」
テーマ3 知識と教育の活用: 災害に強いコミュニティの構築
      3.3 文化庁「文化遺産リスクマネジメント」
      3.5 内閣府「21世紀の地震防災」(日本地震工学会等と共催)
      3.6 文部科学省「防災に関する研究開発の適用戦略」
      3.8 文部科学省「新しい国際防災科学・能力構築イニシアティブ:IPLとIFI/P」
テーマ4 潜在的なリスクの削減
      4.6 国土交通省「災害に安全な住宅・建築」
      4.9 内閣府「災害復興:教訓,課題と将来の道」
      4.10 農林水産省「田園の防災機能と持続的なコミュニティの災害に強い生活」
テーマ5 適切な対応への備え
      5.6 消防庁「効果的な対応のための事前準備についての事例研究」
c パブリックフォーラム
 国連防災世界会議では,その一環として,一般市民が参加可能なパブリックフォーラムが行われた。神戸国際会議場を中心に公開シンポジウムが,神戸国際展示場等では総合防災展(展示ブース,ポスターセッション)が開催された。また,NPO/NGOや地域団体をはじめとする一般参加者へ政府間会合やテーマ別会合の情報提供等を行うため,神戸国際展示場にサービスセンターが設置され,その模様が公開された。
日本政府は,国連や,地元地方公共団体等で設置された国連防災世界会議推進協力委員会と協力しながらパブリックフォーラムの準備を進めてきた。公開シンポジウム,展示ブース,ポスターセッションの主催者は,各国政府,国連機関,国際機関,NGO,研究機関,民間団体から公募され,66の公開シンポジウム,189団体による展示ブース,82のポスターセッションが行われることとなった。
 また,日本政府は,「減災社会にむけて」をテーマに,地元地方公共団体等と連携し,10年前の阪神・淡路大震災やその復旧・復興の過程を通じて学んだ経験や教訓,強化してきた防災対策の知識や技術を国内外で共有することを目的に,9つのセッションからなる阪神・淡路大震災総合フォーラムを5日間にわたって開催した。
公開シンポジウムには約15,000人,総合防災展(展示ブース,ポスターセッション)には約25,000人,合計約40,000人の参加者があった。
これらを通じて,国連機関,国際機関,各国政府,NGO,民間団体などそれぞれの主体による活動が共有・議論され,具体的な活動に向けたパートナーシップ,ネットワークの強化・構築に非常に有意義な場となった。

(4) 会議成果

   22日午前,政府間全体会合の閉会式が行われ,まず5つのテーマ別会合からの報告がそれぞれの議長国から行われた。その後,パブリックフォーラムの報告が内閣府大臣官房審議官(防災担当)より行われた。
引き続き,起草委員会において同日未明にまとまった,会議成果文書となる「兵庫行動枠組2005−2015」と「兵庫宣言」の草案が,フェラーリ起草委員会議長から報告された。これに対し,各地域グループの代表等から支持が表明され,村田議長は両文書の全会一致での採択を宣言した。
最後に,エグランド国連事務次長から,全ての開発計画において災害予防の観点を組み込むことが必要であること,兵庫行動枠組の取組みにより今後10年間の災害による死者の数を半減させることが可能であること,さらに,兵庫宣言と兵庫行動枠組2005-2015には法的な拘束力はないが,フォローアップを確実に行うことで実効性のある成果を得ることができるという旨の閉会の辞を述べ,5日間にわたる会議は幕を閉じた。
今回の会議の成果として,1994年に開催された国連防災世界会議である横浜会議において策定された「横浜戦略」の点検結果を踏まえ,「兵庫行動枠組2005−2015」と「兵庫宣言」の2つの成果文書がまとめられた。
a 兵庫行動枠組2005−2015(Hyogo Framework for Action 2005−2015)
 この文書は,防災分野における今後10年間の優先的な取組事項をまとめたものであり,「災害に強い国・コミュニティの構築へ向けて 兵庫行動枠組2005-2015」という表題が示すとおり,単なる合意文書ではなく,より行動指向的な内容となっている。
過去20年間,災害による被災者は毎年平均2億人以上にのぼる中,防災を持続可能な開発や貧困削減の取組みに体系的に取り込むことが不可欠であるという,世界全体のテーマを背景に,世界共通の今後10年間の防災目標として,
i)持続可能な開発の取組みに減災の観点をより効果的に取り入れる
ii)全てのレベル,特にコミュニティレベルで防災体制を整備し,能力を向上する
iii)緊急対応や復旧・復興段階においてリスク軽減の手法を体系的に取り入れる
ことを掲げ,最終的な成果として災害による人的被害,社会・経済・環境資源の損失が実質的に削減されることを求めている。
さらに,これらの目標達成に向けた優先行動として,
i)防災を国,地方の優先課題に位置づけ,実行のための強力な制度基盤を確保する
ii)災害リスクを特定,評価,観測し,早期警報を向上する
iii)全てのレベルで防災文化を構築するため,知識,技術,教育を活用する
iv)潜在的なリスク要因を軽減する
v)効果的な応急対応のための事前準備を強化する
といった5テーマごとに優先行動メニューを設定し,各国や各機関の取り組むべき行動を具体的に定めている。
さらに,今回の会議成果をより意味あるものとするためには,成果文書の採択にとどまることなく,国際社会が一致団結して,会議成果の実施とフォローアップに取り組んでいくことが重要であるという考えから,実施とフォローアップの方針についても予め採択文書に盛り込んでいる。具体的には,防災に関わる多様な分野の関係者による多部門間調整の促進,コミュニティに根ざした組織やボランティア等の民間主体,研究機関の関与,国境を越えた災害への対応体制の支援といった一般的配慮事項を定めた上で,関係主体ごとの取組方針を次のとおり設定した。
i )各国は,強い自助の精神の下,市民社会その他の関係主体と連携しつつ,各国の実情に即して,自らの防災能力を評価し,本行動枠組に関わる防災プログラムの概要を公表する等の取組みを実施する。
ii )国連等国際機関は,本行動枠組に位置づけられた人道分野及び開発分野に防災の観点を取り入れるための総合的な取組みの推進,被災国の復興を支援する国際的な仕組みの強化等を実施することが求められる。
iii)地域機関は,本行動枠組に掲げた目標を地域レベルで達成するための域内各国の防災能力の向上,災害の監視手法の開発等の地域プログラムの推進,地域レベルでの達成状況や障害の検証,津波等の早期警報体制の整備支援等を実施することが求められる。
iv)国連国際防災戦略(UN/ISDR)パートナーは,本行動枠組のフォローアップのため,関係主体の防災行動実施上の課題の特定やガイドライン,政策ツールの整備を通じた調整,防災に関する優良事例や教訓,技術,行動についての情報集(ポートフォリオ)の整備等を実施することが求められる。
b 兵庫宣言(Hyogo Declaration)
「兵庫行動枠組2005−2015(Framework for Action 2005-2015)」として取りまとめられた会議成果の具体化に向けた行動をあらゆる主体に呼びかけ,世界全体の一般市民に向けても分かりやすいメッセージとして伝えるために,「兵庫宣言(Hyogo Declaration)」として,宣言文書が次のとおり採択された。
 

兵庫宣言(Hyogo Declaration)〈要旨〉
国連防災世界会議への諸国代表団は,阪神・淡路大震災から目覚ましい復興を遂げた兵庫県神戸市に集い,国の持続可能な開発を実現し,強化していく上で,災害被害を軽減することは国際社会が直面する最重要の課題のひとつであることを確認した。
世界の災害被害を軽減することを決意し,国連の果たす重要な役割を確認し,次のとおり宣言する。
1.21世紀の世界的な防災活動を強化するため,国際的に合意された発展の目標に取り組む。
2.防災,持続可能な開発,貧困撲滅の三者の密接不可分な関係を認識し,すべての関係者を防災に関与させることが重要である。
3.個人から国際的なものに至るあらゆるレベルにおいて,災害予防の文化を強化する。災害横断的で分野横断的なアプローチを防災サイクルに組み入れることを通じ,災害に強い国,コミュニティを構築する。
4.すべての国が領域内の国民と財産を災害から守る第一義的な責任を持っている。コミュニティにおいて災害リスクを軽減する能力を高めることが極めて重要である。災害を受けやすい途上国が災害に対応できる能力を,その国自身の努力,二国間,地域間,国際的な協力の強化を通じて高める緊急な必要性がある。
5.今後10年の防災の指針となる枠組として「兵庫行動枠組2005−2015」を採択。
6.「兵庫行動枠組」があらゆるレベルにおいて実際の行動に移され,その達成度がISDRによって点検されることが極めて重要。
7.国連防災世界会議の成果の実現は,世界を安全な姿にして将来の世代に引き継ぐ我々の弛まぬ努力にかかっており,あらゆる関係者に行動を呼びかける。
8.国連防災世界会議を開催した日本政府,国民及び兵庫県民に感謝する。

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