しかし,真の減災社会の実現のためには,行政による公助のみならず,個人個人の自覚に根ざした自助,さらには地域コミュニティ等における共助の取組みが不可欠である。
地震防災戦略に掲げられている人的被害,経済被害を軽減させる具体的な対策である,住宅・建築物の耐震化や家具の固定,津波避難意識の向上,企業の業務継続の取組みの推進等は,行政による様々な支援,促進策の充実強化が必要であるが,最終的には,個人や企業,地域コミュニティ全体が,いつ起こるかわからない巨大地震により降りかかる被害を自らが直面するリスクととらえ,実際の行動に移さない限り,成果は現れない。
その前提となるのは,国民一人ひとりの防災意識であり,地域コミュニティの防災力である。近年の多発する災害において,例えば,大雨や暴風の警報が出されている際に戸外で犠牲になるなどのケースも見られた。過去に比べ国土保全施設の整備や気象観測体制の強化などにより災害リスクの軽減は大幅に達成されてきているが,その分,自然の恐ろしさに対する危機意識が薄らいできているとすれば問題である。改めて,災害の知識を事前に身につけ,家具の固定,非常持出しの用意や最低限3日分の食料や水の備蓄,避難場所や避難路の確認などの備えに努め,災害時には自らの身は自ら守る,初期消火に努め,車では避難しない等の適切な行動をとるという身の回りからの災害対策の基本に立ち戻る必要がある。
その上で,特に喫緊の課題である迫りくる巨大地震に立ち向かう地震防災戦略に掲げた「今後10年で死者数及び経済被害額を半減させる」という「減災目標」を達成するためには,社会全体でその目標を共有し,生命,身体,財産を守るための具体的な行動を実践する国民運動を展開しなければならない。
そのために残された課題はまだまだ多いが,個人や企業,地域コミュニティに期待される行動としては,以下のような課題を中心に,それぞれの関係主体が一体となって重点的に取り組むことにより,減災目標を達成することは可能である。