中央防災会議議事次第

阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえて、我が国の住宅再建に関する諸制度について検討したところ、大都市における大規模災害に対して現行制度の枠内で対応することには、次のような課題があると考えられる。
 先ず、応急仮設住宅の大量建設については、用地や資材の確保が難しく、時間と多額の費用を要する一方で、ストックとしては全く残らないという問題を抱えている。また、災害公営住宅については、阪神・淡路大震災において建設にほぼ4年の歳月を要した。
 阪神・淡路大震災においては、被災地周辺に相当数の民間賃貸住宅が残されており、既存のストックの活用が十分ではないとの指摘がある。さらに、地震保険についてはその加入率が伸び悩んでおり、平時からの耐震性の強化を促す諸制度もまだ十分には普及していない。
 これらの経験からは、都市型の大規模災害においては、従来の「避難所→応急仮設住宅→災害公営住宅」といった単線的な支援のみによるものではなく、迅速で多様な複線型の復興の手段を用意していかなければならないことが認識されたところである。
 具体的には次の点について検討する必要がある。

1) 住宅再建支援策の体系化

阪神・淡路大震災は、既存の災害関係諸制度の想定を超えた事態をもたらしたため、実質的にはかってない規模で支援策を講じたにもかかわらず、事前に施策が明らかでなく、また、施策が散発的・後追い的になったため、被災者が主体的に住宅再建のシナリオを描くことを困難にし、また、被災者にとってその効果を十分に感じさせないものとなったのではないかと考えられる。
 また、復興基金による支援策は、民間借家の家賃補助や個人住宅の大規模補修への利子補給を始めとして、被災地の状況に応じて弾力的に追加、拡充できる長所がある一方で、新たな制度を被災者が理解するまでに時間を要し、結果的に所期の成果が十分挙げられなかったという側面がある。
 被災者が早い時期に支援の全体像を理解し、自主的に住宅の再建に取り組むことができるよう体系的な支援のメニューを提示し、これを被災者に十分に周知することが重要である。

2) 持家再建支援の促進

個人住宅の再建に関しては、住宅ローンの利子補給等が措置されているものの、被災者の中には喪失した住宅のローンに加え再建した住宅のローンの二重の負担に堪えなければならない者も多く、種々の理由でローンを組めない者も少なくない。また、地震等の損害に備える個人住宅の所有者の自助努力の手段としての地震保険については、加入率が低く、十分に普及しているとは云い難い状況にある。
 これらを踏まえると、今後、持家再建のために必要な支援を促進していくことが肝要である。

3) 「共助」の精神に基づく相互支援

大規模災害における住宅再建については様々な公的支援が実施されているが、それは住宅が基本的には個人財産であるとともに、住生活の安定が社会的に重要な意義を有するためである。しかし、大規模災害のように広域な地域が一度に被災する場合においては、個人の自助努力やこのような公的支援のみでは対応できないのも事実である。
 雲仙岳噴火災害や北海道南西沖地震においては、全国から多くの助け合いの義援金が集まり、住宅の再建支援に大きく寄与したところであり、このように災害が国民共通のリスクであるとの認識に立って、国民が相互に助け合うという「共助」の精神に立脚した相互支援の充実を図ることが重要である。

4) 平時の自助努力の促進

平時における住宅所有者の災害に対する備えは必ずしも十分とはいえない。例えば、事前に耐震性の補強がなされていれば、阪神・淡路大震災の場合でも、これだけ多くの住宅の倒壊を生じさせることもなく、事後的に多額の支援経費がかかることもなかったのではないかと考えられる。また、震災後には、耐震性の強化を目指す諸制度が整備されたが、耐震改修については、平時における住宅の機能の向上につながらないこともあり、その実効は期待どおりには上がっていないように思われる。
 また、もう一つの事前対策である地震保険制度についても、個々の建物の有しているリスクが必ずしも保険料に反映されておらず、所有者の自助努力が反映される仕組みとなっていないなどの問題がある。阪神・淡路大震災後においては、一時的に加入率が向上したが、その後、伸び悩んでいるのが現状である。
 これらの平時からの災害に備える自助努力について、その支援方策を検討することが必要である。

5) 賃貸住宅入居被災者に対する支援

阪神・淡路大震災においては、前述のとおり、応急仮設住宅や災害公営住宅への入居者と比較して民間賃貸住宅への入居者への支援が相対的に薄かった。特に、低所得の被災者を対象とした災害公営住宅への入居者の場合は、所得等に応じて家賃が減額されているが、民間賃貸住宅入居者は支援が少ないとの指摘もある。
 民間賃貸住宅も住居を確保する上で重要な役割を果たすものと認識し、そのあり方について検討することが必要である。

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.