中央防災会議議事次第

(1) 被災後から新たな住居の再建・確保に至るまでの段階区分

自然災害によって住居を失った被災者は、恒久的な住宅の再建を一挙に成し遂げられるものではない。これを時系列的に見ると、大別して、

  • 第I:避難所への入居等の避難生活の段階
  • 第II:仮設住宅への入居等の仮住まいの段階
  • 第III:恒久的な住宅の確保の段階

の三つの段階に概ね区分できる。なお、これらの段階については、被災者の多様な住宅再建のパターンに対応するため一律に時間で区切るのは必ずしも適当ではない。第I及び第II段階は、恒久的な住宅の確保に至る前のやむなく経過せざるを得ない段階であるという観点からは、できる限りその期間を短くすることに努める必要がある。なお、被災者の中には、避難所や応急仮設住宅等の応急住宅に入居しない者、本格的な恒久的な住宅にたどり着いて住宅復興を完了することができない者等がいることについても十分に留意しなければならない。
 各段階の基本的な考え方については、以下のとおりである。

  • 1) 第I:避難所への入居等の避難生活の段階

災害直後の避難生活の段階においては、被災者が当面生きていくための手段を緊急に確保することが重要であり、居住の場所、食糧や水、必要な医療等の提供が必要である。その際、所得や資産の多寡に関係なく、被災者全員を平等に支援することを基本とすべきであるが、避難者の内、病人、高齢者、障害者等の要援護者等に対しては、その状況に応じた特別な対応を行うべきである。なお、被災者の安定した生活を確保する観点からは、できるだけ速やかに第II、さらに第III段階に移行することが必要である。

  • 2) 第II:応急仮設住宅への入居等の仮住まいの段階

この段階における仮住まいの形態としては、応急仮設住宅、公営住宅空家への一時入居、親戚の家、民間賃貸住宅等への入居、あるいは、屋根、トイレ等自宅の応急修理をして自宅や自宅の敷地内で当座の生活を送るものなど様々であろう。
 この段階においては、第I段階における平等な取り扱いと比較すると、被災者の置かれた状況やニーズを反映した支援を行うことが必要である。また、この第II段階は、恒久的な住宅の確保に至る前のやむなく経過せざるを得ない段階であるという観点から、できる限りその期間を短くすることに努める必要がある。

  • 3) 第III:恒久的な住宅の確保の段階

この段階は、被災者がそれぞれの判断により、恒久的な住宅を確保する段階である。被災者の住居に関する意向、所得等経済的能力、被害の程度等によって、持家の再建、修理、新規購入、民間賃貸住宅や公営住宅等への入居といった恒久的な居住の形態が異なってくるとともに、第III段階に移行できる時期についても被災者間でかなりの差が生じるものであるため、これに十分に留意して支援を行うことが必要である。

  • 4) 平時

以上に述べた災害後の対応に加えて、平時における個人の自助努力に対する支援のあり方も、災害予防の観点から極めて重要である。平時におけるこのような努力によって、災害時における支援の必要の程度が大きく異なってくる。このため、住宅の所有者においては、その耐震性や耐火性の向上措置の実施による被害の回避、軽減等を進め、また、行政においても、このような自助努力を積極的に評価し、推進していくことが重要である。

(2) 住宅再建・確保支援に当たって配慮すべき事項

  • 1) 支援の多様性の確保

第II段階以降においては、被災者は、その所得等の経済的能力、住居スタイルに関する個人的な意向等により、多様な住宅の再建・確保の手段の中から、様々な形で選択を行い、その意向を実現すべく努力する。被災者の置かれた状況は多様であり、且つ、個別性に富んでいる。このため、避難所から応急仮設住宅さらには災害公営住宅といった画一的あるいは単線的な支援策に留まることなく、被災者が状況に応じて適切な選択ができるよう、その選択の幅を広げることが必要である。

  • 2) 支援の程度についてのバランスの確保

被災直後の段階を除けば、自らの住居の確保については、個人個人の受けた被災の程度と住居スタイルに関する意向、それに経済的な再建能力等に応じて、支援の程度、態様等について適切妥当な差が生じることはやむを得ないところがある。
 それぞれの被災者が新たな住まいの確保のために負担しなければならないもののうちどれほどを実質的に軽減すれば、円滑に恒久的な住宅への移行が可能になるかも考慮に入れた上で、それぞれの被災者に対する支援は相対的にバランスのとれた合理的なものとしなければならない。
 支援の基本は、支援が必要な者に対して合理的な範囲で行うというものであり、例えば、自力で持家の再建が可能な者に対しては、それがより迅速に実現できるような支援を、公的な借家や民間賃貸住宅を必要とする者に対しては、被災に伴う支援を講ずる期間と自助努力に期待する範囲を明確にした上での支援を、それぞれバランスの取れた形で実施すべきものと考える。

  • 3) 被災による支援と社会福祉上の支援との区別

災害により住まいに打撃を受けた被災者が、それぞれの置かれた状況に応じて新たな住居の確保に努力し、行政側がこの努力に対して必要な支援を行うということに関連しては、いつまでこのような支援を行うべきかという問題がある。例えば、災害に際して公営住宅の家賃に関し特別の家賃軽減措置が実施されることがあるが、特別の低家賃で公営住宅に入居した者が、被災者であることを理由に他の公営住宅の入居者とのバランスを失した形で支援を続けることには問題があろう。即ち、被災後一定期間経っても、自助努力で生活の再建が困難な者に対しては、被災に伴う支援に代えて、本来の社会福祉上の措置の対象として支援を行うべきものと考えられる。

  • 4) 支援における公共性の確認

被災に伴う住居の再建・確保のための公的支援の形態には、低利の融資、低家賃の公的賃貸住宅の供給、応急仮設住宅の提供等現在でも様々なものがあるが、いずれの場合も、その原資は国民の税に他ならず、国民がその個別の意思に関わりなく義務として納付したものである。
 しかしながら、大規模災害時の住宅再建の支援は、対象となる行為そのものに公共の利益が認められること、あるいはその状況を放置することにより社会の安定の維持に著しい支障を生じるなどの公益が明確に認められるため、その限りにおいて公的支援を行うことが妥当である。

  • 5) ストックの活用

住居に被災を受けた者にとっては、できる限り安定した住まいを確保できることが望ましい。また、仮の住まいを提供する側にとっても、できる限り、応急仮設住宅のような将来のストックとして活用することが難しい形での対応を少なくすることが妥当である。
 これらを踏まえて、今後の住宅再建・確保に至る過程においては、公的賃貸住宅の空き家の活用にとどまらず、民間賃貸住宅の空き家の活用方策の充実等既存ストックの活用を図る施策の展開が必要と考える。

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