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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国地震被害軽減プログラム(NEHRP:The National Earthquake Hazards Reduction Program)の戦略プランについて
 
クレイグ S. ウィンゴ
連邦緊急事態管理庁(FEMA)災害防止局
米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)室 室長

マイケル・マホーニー
連邦緊急事態管理庁(FEMA)災害防止局
米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)室 上級地質専門官
 

はじめに
 
地震は、米国が直面する自然災害のうちで、人命、資産損失の点で、最大の被害を引き起こす可能性を有するものである。発生地は各地に広がるものの、そのパターンは常に同じである。すなわち、地震は、前触れもなく突然やってきて、都市を瓦礫の山と化し、数万人から数十万人の人命を奪ってしまう。20 世紀だけでも、50,000 人以上の人命が犠牲となった地震は 10 回発生しており、1,000 人を越える人命損失の地震は 100 回以上も発生している。

 米国では、ここしばらくマグニチュード7 以上の大規模地震が都市を直撃したことがなく、この点はただ運が良かったと言わざるを得ない。1964年のアラスカ大地震以来、米国では合計 26 回の大地震が発生しているが、どれ一つとして65人以上の人命損失は生じなかった。このように被害が最低限にとどまった理由の一つは、これらの地震のほとんどが、アリューシャン列島やモハーヴェ砂漠など、人里から遠く離れた地域で発生したからである。最近の最も名の知れた地震である 1989 年のローマ・プリータ地震(M7.1)と 1994 年のノースリッジ地震(M6.7)も、都市圏のはずれで発生し、しかも発生時間が人々の活動時間帯を外れていたため被害がそれほどではなかったのである。

 米国では、人々が密集する大都市を直撃する地震は、いつ起こってもおかしくない。米国全州のうち 7州を除いた全ての州は、多くの大都市圏を含め、かなりの地震危険性にさらされている。連邦緊急事態管理庁(FEMA)の推定によると、地震を原因とする現在の年間損失額は 44 億ドルとなっている(FEMA資料#366, 2000 年9月)。しかしながら、この推定額は、長い年月で割った平均額でしかない。もし大規模地震が都市圏を直撃すると、実質被害額はこのような額にとどまるものではない。

 それほど大きくない地震でも、もしも都市を直撃したらどうなるかは、1995年に日本の神戸で発生した兵庫県南部地震を見れば、よく分かる。兵庫県南部地震はマグニチュード 6.7で、強度の点でも、揺れの時間の点でも、我が国のノースリッジ地震と同クラスであったが、被害額は 1,000-2,000 億ドル、人命損失については 5,500 人にものぼった。兵庫県南部地震の被害は、米国でこれまで最大の自然災害となったノースリッジ地震の被害(400 億ドル、57 人)とは比べようもなく大きい。兵庫県南部地震がこれほどの被害になった原因は、地震が人口の密集した大都市で発生したからにほかならない。ノースリッジ地震は、ロサンジェルス都市圏の北のはずれで発生したため、被害があの程度ですんだのである。米国はただ運が良かっただけである。

 米国の地震に対する脆弱性は、驚くべき速度で高まっている。人口の増加、都市化、インフラの拡張がその主要要因であり、米国は尽力を尽くして地震対策を取っているものの、その速度に追いついていない。もしも大都市圏のどこかで大型地震が発生すれば、数千人の人命と 1,000-2,000 億ドルの損失が生じる可能性がある。今日、このような傾向に歯止めを掛けるべく大胆な行動を取り、効果的、長期的、かつ達成可能な地震戦略を作り上げていかなければならない。そのような目標を達成するための行動計画が、この報告の主要テーマである。

 

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