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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
地震被害情報を効率的に収集するためのフレームワークの提案
 

2 地方公共団体における地震被害情報の効率的収集のためのフレムワーク
(1) 時系列的フレームワーク(図1)
-1- 地震直後には強震動による甚大な被害が広範にわたるため、要員の参集が困難になるとともに、地域の被害概要の把握も困難な状況が想定される。その中で、地方公共団体は速やかな災害対策本部の設置、広域応援要請の判断等が早期に要求される。そこで前回報告の簡易型地震被害想定システムを用いて、気象庁から地震後5分程度で入手できる震源情報、震度情報ネットワークで得られる計測震度に基づき地震被害の大略を推定する(図2)。参集した本部員はこの推定結果を見ることで被害イメージを共有できる。この段階ではあくまでも想定であり、その想定結果の精度は実際の被害数と比べてオーダーで合っているという程度でよい。

-2-  地震後1〜2時間後には何割かの職員の参集が見込める状態となろう。その際、参集時においても情報収集することが重要となる。参集途上で周辺の状況を観察することで、①における想定精度の大凡のチェックが可能となり、被害イメージをより現実に近い形で持つことが可能となる。また、火災、通行障害箇所等の直接消防活動等に関係する情報に限定した確定情報を優先的に収集し、緊急・応急活動のための情報とする。その他、高所カメラ、ヘリコプターによる情報収集、住民の駆け込み情報や電話等による収集も利用することとなろう。

-3- 実被害情報が五月雨式に入ってくる状況の中で、これらの情報を統合して市町村内全域の被害を把握するのはまだ困難であろう。そこで、限られた要員によって予め定めた地区の被害状況を収集することを考える。ある地区内の被害情報が把握できた場合、その実情報と上記被害想定システムの結果とを考慮することによって、市町村全域のより精度の高い被害推定を行う。

-4- その後は、少し時間をかけても正確な実被害情報の収集に務める。その際の収集方法は後の整理効率をも考慮に入れた方法が望まれる。復旧・復興対策立案等をも視野に入れるならば、GISを用いて被害箇所等の表示ができる形式にしておく必要がある。そのための収集手段の一つとして、GPSを装備し市町村内の地図を搭載した携帯端末機を開発した(図3)。

(2)空間的フレームワーク(図4)
 前節で述べたシステムが導入されても、都市化の進んだ人口の多い地方公共団体では、被害の全容を早期に把握するには困難がある。そこで、人口の少ないほど被害情報の収集は迅速に行えるという調査結果に基づき、例えば小学校区程度の広さを一区画としてそれぞれの中で被害情報を収集・整理するという体制をとることを提案する。東海地震で甚大な被害が予想される静岡県清水市では地域を19のブロックに分け、公民館等の施設を利用した防災拠点をブロック毎に置き、情報の収集伝達等の活動を行う体制を構築している。

 このような自律分散型の体制をとることにより、その地区内の情報がいち早く把握されることが期待される。この防災拠点でいったん集められた情報を災害対策本部に送信し、更に災害対策本部で集約された被害情報を各防災拠点にフィードバックする。これによって、住民はいつでも最寄りの防災拠点で全体の被害状況を知ることができ、被害情報に関する住民からの災害対策本部、消防本部などへの問い合わせの集中が避けられる。

 このような空間的な収集体制をとるためには、現場-消防本部、防災拠点-災害対策本部を結ぶ通信手段が必要となる。特に、現場-消防本部、防災拠点間の情報の送受信が重要であるが、電波資源の不足による輻しんがおこり通信に支障をきたすという大きな問題がある。そこで、PHS(Personal Handy Phone System)を用いた高機能型携帯無線機を開発した。これによって、通信の輻しんや混信を著しく低減できる。更にこれをベースにネットワークの構築を図っている(図5)。そこでは、基盤技術にコンピュ一夕ネットワークの回線技術を取り入れて標準的なLANのプロトコルを採用していることから、次章で述べる国レベルのFire-D Net構想と容易に接続できることにな る。また、マスメディア等への情報の配信も可能となり、取材活動による防災活動への影響を避けることができる。  

 

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