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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
地震被害額推定の利用
 

被害額推定の方法に求められる改善点
 
被害額推定の方法はそれを開発した人達が持つ理解力と同じ程度にしか良くならない。この分野でのコンピュータのハードウェアとソフトウェアは、被害を計算するための工学や地質科学の基礎知識、あるいは被害の度合いを基準や広がりによって測るための社会科学や緊急対応分野での基礎知識に比べると、めざましい進歩を遂げた。FEMA-NIBS HAZUSプロジェクトが始まった頃と同じ値段の卓上型コンピュータは今や10倍もの記憶能力と速度を持つが、この分野の信頼のおける専門家の中で、5年以前と比べて我々が被害や損失額の推定に関して、10倍の知識を持っていると考える者はいない。

震源に近い地表の変動 1994年のノースリッジ地震、1995年の兵庫県南部地震の2つの地震で「余分の一服」が強い効き目を表わした。震源に非常に近いところで激しい地表変動が起こったのである。従来の理論では地域によっては地表が変動し、構造的な反応が起こると類型的に考えられていたが、「雄牛の眼」と呼ばれる最高震度地域では甚大な被害が起こりうる。このテーマについてはさらに研究し、信頼できる予測情報を出せるようにする必要がある。

非構造物の損害 HAZUSの手法ならではの建物の目録を作るのに居住形態を28の種類に分けている。例えば、軽工業と重工業とは分けられ、医院や診療所は病院とは別分類になる。建物の種類毎の代表的な建設費明細に基づき、HAZUSの手法では1つの建物について構造物の買い替え費用と非構造物の費用とを別に算出している。28種の居住形態の殆どについてこの2つの費用の比率はおよそ構造物25%非構造物75%になる。つまり非構造物の地震に曝される度合いは構造物の3倍となり、またその損失を受けやすい点からすると、ある地域で震度の小さい地震が発生した場合、構造物に被害が全くなくても、非構造物が深刻な被害を蒙ることもありえる。非構造物の被害は機能に関する面でも重大である。たとえば緊急用の発電機が動かなくなったり、給水用の配管が破裂したりすれば深刻な事態になる。災害の厳しさの点からは、非構造物被害は最も軽度のものとされてきた…負傷の原因としては数えきれなくても、負傷の程度は比較的軽い。死者の多くは構造物が倒壊して発生する。我々は非構造物被害の重要性は認識しているにもかかわらず、HAZUSや現在使われている他の被害額推定の手法では、この種の被害は構造物被害に比べると余り吟味されておらず、地震の実績値や試験データによる裏付けも少ない。

構造上の被害 構造的な行動に関する我々の知識が地震による被害を予想したり算定するうえでまだ信頼できるものでないという事実は、1994年のノースリッジ地震で実証された。これまでの被害算定手法や建築分析手法、技術者が使用する基準条項などを適用しても、鋼鉄フレームの建築物については円柱の梁の継手に被害が出るケースが多いことが判明した。さらに木造フレームの建物への被害は予想外に多かった。

標準化された経済対策 HAZUSプロジェクトは、一連の標準定義や立証された予測、誰もが使用することができる算出方法などを適用し、地震による被害額を推定するのに大きく貢献しているが、震災を分析する方法に矛盾点がまだかなりある。修復、再建、治療費、災害救済、事業、消費減退などの地震による経済的損失を示す数字は多く出されている。しかし地震による被害額を推定するのは、これまでの震災と比較したり、将来の地域ごとの被害や被害軽減戦略などを判断するうえで非常に重要だ。過去の地震による経済的な被害額を推定したり、地震に対する適切な対策を打ち出すのは簡単なように見えても、実際のところは難しい。

 

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