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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
地震被害額推定の利用
 

被害額推定を利用するユーザーに改善が必要
 おそらく被害状況に関する分析でもっと効果を上げる基本は、それらを多く利用することだろう。

 緊急対策担当マネジャー、都市の計画担当者、技術者、建物管理者などの末端のユーザーは、常に多くの種類の被害について知りたがっているようである。例えば「地震発生後に何頭の犬や猫がさまよっているか」、「骨折者は負傷者のうちどのくらいを占めるか」、「精神的被害を被る可能性がある人数の割合」等である。このような事柄は一見役に立ちそうだが、物事を実際的に考える必要がある。筆者の体験によれば、地震調査によって骨折者が多く出る可能性があるとの結果が出されても、被災地の病院は整形外科の専門家をすぐに雇うことは考えられないうえに、地震が発生しても建物への被害はなく、少なくとも最小限の機能は果たすとして、コストを極力抑えた対策でうまくいくと判断している。ユーザーは詳細な事柄をもっと多く求める傾向が強い。例えば「大きな震災を被る可能性がある家屋の区域は知りたくない、最も震災を被る可能性がある家屋を印した地図が欲しい」という。ただユーザーは、要求がすべて満たされたとしても、不透明感が一段と強くなり、要求したものがあまり役に立たなくなることに気づいていない。地図上に震災を受ける可能性がある区域でなく、家屋が具体的に印されても、ユーザーは震災地の被害状況から将来を正確に予測することはできないだろう。状況が改善して、ユーザーの要求がもっと満たせるようになるだろうが、使用頻度が少ない震災測定に関する情報が非常に多く存在しているという基本的な見地に変化が生じることはないないだろう。

 もっと質の高い仕事ができるよう多くの予算を得ようとしている緊急担当管理者や建物の管理者など多くの末端ユーザーは、公共や代理店管理者に必要な資金をあてる必要がある。新聞の見出しに、「大震災に関する研究報告」があった場合、研究の動機や結果などははあまり問題にはならない。しかし地震を描写するのに使われる2、3の主要な統計に関する正確さや他の地震との比較などについて注意を払う必要がある。ただ研究の動機については、現在ある被害額を推定する手法、特にHAZUSはすでに必要以上にずっと多くの情報を提供している。建物の評価を所有者に義務づける市の条例を策定しているような他の末端ユーザーにとっては、必要とされるこれらの情報を建設の形態や区域ごとに区別して考える必要がある。したがって震災報告については、大きな問題点の発見に利用することと、その問題の原因を特定するために利用することを区別するのが重要である。

 ワシントン州プゲットサウンド地域の震災に関する研究に関与した緊急担当管理者は、「ユーザーは情報を利用することを義務づけるべきだ」との結論を下した。震災情報の利用を義務付けられると、多くの形式を取ることができる。例えば調査が行われる地域の建物について震災を削減にする必要があるとの調査結果が出された場合、関係者は対応策を協議することになるだろう。また公共輸送機関は、調査が完了した後にセミナーを開き、輸送機関が停止した際の対応策を協議することもできるだろう。

 震災報告のユーザーや対策担当者で構成される小委員会は、HAZUZプロジェクトを立ち上げた際、「震災調査を完璧に行うことはできない。したがって完全な被害調査が行われるまでは震災削減計画を打出したり、あるいは緊急対策を実施することはできないとの主張は行動に移さないことに対する口実にしかならない。州の機関であれ連邦機関であれ、震災に関するデータを多く必要としているが、現在ある情報がすべて利用されていることを意味するものではない」との見方で一致している。

 震災調査報告を効果的に利用するための実際的な手法は、ある地域について既に行われた調査報告を集めて検討することから始める。米国の多くの都市については最低1つ以上の調査報告があり、各調査にかかった費用は少なくとも25万ドルとなっている(図1参照)。調査費用は連邦政府が払っており、報告はほとんど州当局あるいは地区当局が利用している。このため震災調査の改善に向けたプロセスには根本的な弱点はある。プロセスとして第1は、調査報告を活動する者はコストを払う必要がない。第2は、末端のユーザー・グループを集め、過去の報告や地図、在庫、最近収集した情報などを使って彼らに説明が行う。第3は、ユーザーにこの情報について考えてもらい、市議会、公共サービス会議、専門家会議で関係者と協議する。第4は、後日会合を再開し、震災報告を充分に利用したか、被害削減計画や緊急対策計画で利用できそうな情報があったかどうかを報告させる。これら4点は、数ヶ月以内に効果的に達成できる。だがプロセスがこれ以上ある場合には、結果は改善せず、コストのみがかさむ公算が大きい。震災調査を新たに実施することが必要で、コスト的に正当化される場合、第5のステップをとる。これは前の4つのプロセスでまとめられた調査計画を実施することが含まれる。第6のステップは調査が完了した後、その結果を反映した震災削減計画を実施する。

 震災調査報告を効果的に利用する第2の方法は、調査を実施する過程で潜在的な末端ユーザーを増やすことである。地域の建物の耐震性や工学技術などについて特別な専門知識を得るが必要がある状況にあって、緊急担当管理者や市の対策担当者が行える業務もある。震災調査を実際に行う以外に、末端のユーザーに調査が準備されていることを知らせたり調査について説明したりして、計画に関与させる必要がある。私は前述の4つのステップ震災調査を行ううえで適切な第1段階にすることを提案する。このセミナーによって震災調査に関する土台が築かれるだろう。震災調査が完了し、地域のユーザーが調査結果を多く利用することを期待している。

 

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