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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
地震被害額推定の利用
 

 緊急対応のもう一1つの例として、この地域のダムの地震被害状況は、決められた偵察航路を飛行する航空機によって迅速に伝えられた。しかしサンフランシスコ半島ダム系統に関しては、実際はよくある水が染み出る程度のものであるにもかかわらず、あるダムが破壊され水が漏れていると伝えられた。実際には問題のダムは下流域に洪水を起す可能性はないダムだったのだが、これをコンクリート製の破損すると下流域の10万人の住民に大災害をおよぼす怖れがあるダムと、航空機が取違えたのである。「迅速な情報」はコンピュータ化した被害額推定の手法がもたらす恩恵の1つであるとよく言われるが、多くの場合現場の偵察や無線報告の方が正確な情報を提供することができる。我々は「迅速にしかつ正確な情報」が得られることを実際に証明しなくてはならない。

 1994年のノースリッジ地震は、地理情報システム(GIS)が広範に使用された米国内の最初の地震で、地震後の段階で地震被害額推定が災害救助の目的から二度にわたり使用された。まず地震直後に、カルフォルニア州知事の緊急サービス局が予想される災害救助のドル金額の費目リストを作成し、予備的な被害アセスメントをFEMAに報告するのに使用された。この連邦救助計画には損害を受けた市庁舎のような公共財産のための資金提供、住宅やアパートを失った住民への個別援助、その他の損失を補う資金提供が含まれている。この予備的被害アセスメントの提供にはコンピュータ化された地震被害額推定プログラムEPEDATが使用されたが、これにより算出されたドル金額は州幹部の判断で2倍に増額された。このドル金額を2倍に嵩上げしたことで、結果的には実際の金額により接近することになり、一見して精緻なコンピュータのシミュレーションが如何におおざっぱであるかを示すことになった。もう1つの被害額推定ソフトウェアの利用は、地震後数カ月から数年にわたって行われた。これはこの地震のデータを組織化し表示することが主力で、その表やデータベースからGISのフォーマットで地図を作ったり、地形的な関係を計算することができるようになった。将来地震が起これば、更に多くのデータが更に迅速に得られ、それがデータベースに蓄積され、GISのソフトウェアを操作することによって、地震の影響をありありと描写し、復旧への意思決定に役立つことになるだろう。

 現在民間プロジェクトとして、鹿島建設の資金提供でカルフォルニア大学が行っている地震工学の研究では、大企業の地震復旧を助けるソフトウェアの開発中である。その手法は、地震被害額推定方法に基く地震発生前のデータとアルゴリズムを、地震発生後に観察した損害や被害のデータを使って修正し置換して行うものである。「こうなったら、どうなる?」式の分析で企業の最高幹部が求めるであろう様々な復旧戦略を試験することになる。地震後の状況においては、多くの生産現場を有し複雑な取引を行う大企業であろうと、市、州、県の地方政府であろうと、その国の政府であろうと、どんな立場から見ても途方に暮れるような問題(例えば、天文学的な損害件数)を抱え込むことになる。そこにはまた復旧のために多数の選択肢のある決定(例えば、工事、修理への資金割当て、生産輸送手段の切換、社員の配置転換などについて)をしなくてはならない。企業がどのように地震被害額推定の技術を利用したらよいかについては、アナゴスらによる提案もある。

 

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