1989年のロマプリエタ地震ではサンフランシスコ-オークランド・ベイブリッジの一区間が崩壊し下部デッキに落下し、橋は約1ヶ月間使えなくなった。FEMA-NIBUS HAZUS プロジェクトの初期に作成された報告書「被害額推定の目的」に記載してあるように、このベイブリッジの弱点はすでに以前からの研究によって明らかにされていたので、閉鎖時の緊急対応策は1989年までに検討されていて然るべきであった。「それがベイブリッジそのものへの直接的な損傷であろうと、アプローチの充填材や構造の破損であろうと、ベイブリッジは大地震には脆弱な設計になっている」と1972年のNOAAの「サンフランシスコ湾地域の地震被害額推定に関する研究」(Study of Earthquake Losses in he San Francisco Bay Area)は述べている。サンアンドレアス大地震によるサンフランシスコ地域の地震被害額推定について、鉱山地質省カルフォルニア支局 (California Division of Mines and Geology) が1982年に行った研究では、ベイブリッジは72時間またはそれ以上使用不能となる最長被害のカテゴリーに入っていた。橋が閉鎖されるや、橋の所有者であり運営者であるカルトランス社、2本のバス系統、1本のフェリーボート系統、湾底を走るバート社による地下鉄道などの関連主要機関は慌ただしく活動を始めた。「その対応ぶりは困難な状況の中で迅速かつ能率的であったと評価されてきた。この評価を否定しようというのではないが、一方では我々はこれらの関係機関の対応は、殆どがその場かぎりの無計画なものだったと指摘することができる。…その前に刊行されていた被害額の予測は(最初の版は17年前に利用できるようになっていた)、サンフランシスコ湾域の関連輸送機関が連携してベイブリッジの閉鎖に立ち向かうための役には立たなかった。この地震のすぐあと、首都交通委員会はカリフォルニア州緊急サービス局の支援を受けて、ロマプリエタ地震によって明らかとなった弱点を改善するために、関係機関の間での地震対策を審査督励するための研究を開始させた。このケースでは、地震予測は利用可能であるにもかかわらず、利用されなかった。地震に備えるべく行動を起させるのには、地震が実際に発生することが必要だった。