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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
日本の震災対策における「地震被害想定」の活用について
 

-3-初動体制の整備等に向けた地震発生直後の被害の早期推計
 地震発生時には、できるだけ迅速に初動体制を整備することが求められる。阪神・淡路大震災では、地震発生からしばらくの間、政府や周辺の地方公共団体等、支援を行うべき防災機関には、被災地からの情報が極めて限定的にしか伝えられなかった。震災規模が大きくなるほど、広域的な応急対策を迅速に立ち上げる必要がある一方、被災地の状況の把握に時間を要することから、実情報が入るまでの間に、観測情報や推計情報を基にした対応をできうる限り進める必要がある。

 こうした教訓を踏まえ、国土庁では、被害想定技術を活用し、地震観測情報から早期に被害の発生状況を推計するシステム(地震被害早期評価システム(EES=Early Estimation System)を開発している。
 このシステムは、被害想定手法の地震動推計と被害推計の2段階のうち、地震動推計については、全国600箇所の気象庁の地震観測点とそれにネットワーク化された約900箇所の市町村の地震計の実観測情報を自動受信し、観測点の間を内奏して地震動分布を求め、それに応じた被害を推計するシステムであり、平成8年から24時間自動的に運用している。被害推計までの時間は、確認作業も含め30分以内であり、政府の緊急災害対策本部の立ち上げの判断などに活用されている。

 また、平成10年8月には、応急対策活動のうち、被災者の生命の維持・確保において特に迅速な対応が求められる重傷者の被災地外の医療機関への広域的な搬送活動について、EESによる患者の発生数の推計情報を基に、対応する医療機関を確保する等の計画を策定したところである。

 今後さらに、緊急輸送活動等、他の応急対策活動においても、対応を迅速化するためにEES等被害想定手法を用いた推計情報を活用することが検討されている。

-4-地震防災訓練の状況設定
 「被害想定」は、応急対策の事前の備えに活用されるのみならず、各種の訓練に活用される。政府では、例年9月1日に防災訓練を実施じているが、平成9年、平成10年(豪雨災害により中止)の訓練では、EESに活用されている被害想定手法によって状況設定を行っている。

 訓練における被害想定では、備蓄計画の策定等に活用する際のスタティックな被害想定と異なり、時系列による被害状況の変化や、突発的な被害の発生など、応急対応の機動性や応用力を高める動的な被害想定も必要となる。

 こうした被害想定は、応急対策活動を行う各機関において必要であり、国土庁においても検討を始めてきているが、政府機関全体として実施できているとは言えない状況にある。

 このため、実動及び机上の訓練等に活用できるシナリオ型の被害想定手法について今後さらに検討を進める必要が指摘されている。

-5-復旧・復興計画の策定
 施設・構造物等については、被害想定等により重点化を図りつつ耐震性の強化を進めているが、大規模震災では一定の損壊は免れ得ない。このため、応急対策上の重要施設である病院、学校、ライフライン施設、緊急輸送路等について特に迅速な応急復旧を図るとともに、経済・社会活動を早期に正常化するための諸施設の本格復旧や、被災後の復興都市整備を円滑に進める必要がある。このためには、予め被害想定を実施し、必要な復旧体制の整備を進めるとともに、事前に被害想定を踏まえた復旧・復興計画を策定することが必要である。

 国土庁では、平成8年度に被災後の復興対策の進め方に関する「復興対策マニュアル」を作成しているが、この中でも事前の被害想定の実施を求めており、さらに平成9年度に検討を進めてきた「事前復興計画作成指針」においては、被害想定の実施が重要なステップとされている。また、東京都を始め地方公共団体においても復興計画の検討が進められている。

 当該指針における復興計画の計画内容としては、都市基盤施設の復興(道路、公園、港湾等)、被災者の生活再建支援(がれき処理、住宅対策、雇用確保等)、地域経済の復興、復興に関する計財政計画などが含まれており、被害想定の項目としても、これに相当する事項の想定が必要となっている。

 

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