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3.「被害想定」の実施目的と活用状況 地震被害の想定は、実施主体の様々なニーズに応じ実施されるが、その政策目的は主に以下に分類されるものと考えられる。 -1-地震に強い施設・都市整備など予防対策への活用 -2-応急対策の需要量の推計・把握 -3-初動体制の整備等に向けた地震発生直後の被害の早期推計 -4-地震防災訓練の状況設定 -5-復旧・復興計画の事前の策定 -6-結果の公表等による啓発
以下、それぞれの実施目的とその活用状況について概説する。
-1-地震に強い施設・都市整備など予防対策への活用 個々の施設整備や都市整備において地震防災対策を進める際には、被害の発生可能性を想定した「地域危険度」等を活用することにより、事業や規制を優先的、重点的に実施すべき地域を明らかにすることが可能となる。
また、個々の建築物の不燃化や耐震化、街路・公園等の都市基盤の整備が、被害を軽減する効果等についても被害想定手法を用いて測定することができる。例えば、木造建築物の地震による被害は建築基準の1959年の見直しの前後で、倒壊率が1/3以下(地震動の最大速度100kineの場合)となっており、建て替え若しくは補強をすることで、被害がどの程度軽減されるかが被害想定によって量的、地域的に明らかとされる。
国士庁が作成指針を示している液状化マップにおいては、建設時に個々に詳細な地質調査を行うような大規模施設以外の、住宅等小規模な建築物の建設や、ライフラインの管渠などの整備において参考とされるものと考えられる。
また、東京都においては、「地域危険度」の調査において、建物倒壊・火災危険度の高い地域とされた、木造建物が密集し道路や公園等が不足する地域等について、重点的に都市整備を行うものとして、「防災都市づくり推進計画(整備計画)」を策定するなど、計画的に事業を推進している。 -2-応急対策の需要量の推計・把握 地域危険度の想定が主に予防対策に活用されるのに対し、都道府県等において実施されている「被害想定」は、これまで主に、地域防災計画(都道府県、市町村に作成が法定で義務づけられている防災計画)における食料・飲料水や毛布・仮設トイレ等の備蓄計画や、避難場所の確保計画等の根拠として、応急対策の需要量を算定する際に活用されている。
「被害想定」は、こうした財政措置を伴う対策の根拠となることから、想定する地震の大きさや被害量について、対応可能な範囲に低めに設定する傾向が必ずしも無いとは言えない。
一方、対応不可能な想定をすることにも妥当性は無く、被害想定の考え方、想定している条件等をできる限り明示し、実施する対策の意味を合わせて明らかにすることが求められている。また、想定結果と対応可能量に格差がある場合も、それを明らかにすることで、別途の対策等の必要性を指摘することが求められる。
例えば、東京都では、平成9年に行った「被害想定」の結果、交通の途絶等により約370万人に及ぶ「帰宅困難者」が発生することを推計している。これは、東京圏等においては、鉄道網等により広域に通勤、通学等をしている人口が極めて甚大であるという都市圏の構造により生じるものであるが、こうした帰宅困難者は、公的な避難場所に収容・保護することは困難であり、各事業所、就学先等における対応や、帰宅を支援することによって収容需要を軽減する等の対策が検討されている。
さらに、「被害想定」は、消防部局における消火活動の計画や、自衛隊による支援活動の計画等、応急対策を行う個々の防災機関における事前計画を策定するための根拠として活用されている。
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