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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
日本の震災対策における「地震被害想定」の活用について
 

2.「地震被害想定」手法
 1.でみたように我が国においては地震を経験する度に、地震被害の想定手法を検証し、地震対策の強化に役立ててきている。

 地震が発生した場合にどのような被害が生じるかを想定する手法は、様々にあり得るが、一般に「地震被害想定」といわれる手法は概ね以下のような一連の作業による。 ①必要データの収集(地形・地質・標高、人口分布、建築物その他施設分布、等) ②想定地震の設定 ③震源からの距離、地形・地盤による増幅等を考慮した地震動分布の推計 ④既往地震等から得た被害率による地震動に応じた被害の推計  上記③、④のように、「被害想定」は大きく2つの部分の推計から構成される。一つは、 地震動分布の推計であり、もう一つは被害の推計である。被害想定の目的によっては、特定の地震による地震動分布推計を行わず、想定地域の基 準地盤全体に同一の地震動を与え被害を推計することも行われる。これは、我が国においては至る所で地震発生の可能性があり、現在の地震学では震源を 予測することが困難な中で、特定の地震による被害の態様のみを提示すると、震源から遠 いことにより被害が少なく示された地域において、誤解に基づく安心情報を与えることに なりかねないという問題があることによる。このため、地域ごとの地震被害の発生可能性を、客観的に相互比較する場合などには、特定の地震を設定した地震動分布の推計を必要 としていない。こうした、地域の地震危険度の推計は、「被害想定」というよりも「ハザ ードマップ」として表されることが多いが、広義に考えれば一種の被害想定といえるもの である。  そこで、本論においては、我が国において一般的に「地震被害想定」と呼ばれる被害推計手法のみならず、ハザードマップ等の関連する政策ツールについても言及することとする。
(1)一般的な「地震被害想定」のプロセス
 以下、国土庁が地方公共団体向けに作成した「地震被害想定支援マニュアル」等で示されている一般的な「地震被害想定」手法のプロセスを示す。
-1- 必要データの収集
 各地点毎の地震動推計に必要なデータとして、地形、地質、標高など、地震動の増幅要因となるデータが必要となる。国土庁のマニュアルでは簡便な方法として、想定する各地点における標高と8種類の地形分類(山地、台地、扇状地、自然堤防、砂州、谷底平野、三角州・旧河道、埋立地)のデータを用意することを求めている。

 また、被害推計には、推計する被害に応じたデータが必要となるが、基本的な想定項目として、死傷者数等人的被害においては昼夜間の人口分布が必要であり、建築物の倒壊数では、建築法制の改正の前後ごとの築年別・構造別の建築物の分布などが求められる。

 この際、建築物の分布については、課税関係で行われている調査以外にデータが無い場合が多く、非課税建物が含まれないこと、情報保護上の課題があることなど、データ収集においていくつかの問題が生じている。

 これらデータは500メートル若しくは1kmのメッシュデータや、行政界データに加工され利用される。

-2- 想定地震の設定
 「地震被害想定」における地震の震源の設定は、概ねその地域において蓋然性の高いとされる海溝型、直下型タイプの地震の震源や、近傍の活断層、あるいは最大被害をもたらすと想定される中心都市直下などを震源として設定される。また、設定する地震規模については、海溝型の地震では、関東大震災のマグニチュード7.9や、直下型地震では、阪神 ・淡路大震災のマグニチュード7.2程度を参考としているケースが多い。

 設定の仕方は、震源を長方形の断層面として、経度・緯度、深さ、長さ、走行、幅で設定する方法が一般的である。

 

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