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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
公益企業による地震後のデータ及び情報の迅速な利用
 

パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック社地球科学部門
(Geosciences Department, Pacific Gas and Electric Company)
ウイリアム・U・サベッジ
(William U. Savage)
カリフォルニア州サンフランシスコ

 

はじめに
 
現代社会は、電力、天然ガス、通信、上下水道を含む公益産業によって提供される安全で信頼できるサービスへの依存度が増している。これら公益企業は輸送管(主にパイプライン、電線、光ファイバー・ケーブル)ネットワーク及び、供給源と目的地とを結ぶ無数の補助設備から構成される。近年の大地震は、公益企業ネットワークの地震への脆弱性が顧客サービスの中断を引き起こす可能性があることや、これが生命と財産にとって危険であり、企業にとっても破壊的であり、コストもかかることや、被災したコミュニティと住民に長期的な苦難を与えかねないことなどを実証したのである。耐震設計法の改善や耐震プログラムの改良などの長期的措置によって被害の確率を軽減できるが、多くの公益企業のシステムには、最新システムよりもずっと地震に脆弱な旧式の部分が含まれている。そこで、今後はそれらシステムの被害やサービスの混乱を見込んでおく必要があり、公益企業は有効な対応を準備しなければならない。

 情報化時代において公益サービスへの依存度が高まるにつれて、地震データの収集、分析、データ処理の分野に重要で新しい展開があり、データとその結果として生じる情報の通信も出現した(カナモリ他、1997年)。デジタル強震記録計、ブロードバンド地震計とデジタル・データロガー、信頼できる高速テレコミュニケーション、大容量コンピュータとユーザーフレンドリーなソフトウェアが組み合わさって、地震の発生とその影響を緊急対応機関に迅速に通報できるようになっている。最新の強震動データが他の地震データとともに、公益企業の地震への有効かつ迅速な対応に果たす役割はますます重要になっており、この報告はそこに焦点を絞っている。

 
 

公益企業が必要とするもの
 
被害をもたらす可能性のある地震が発生した場合、運用、メンテナンス、緊急対応に責任を負う公益企業の職員は次のことを知りたいと思う。

・ 何が起きたか:地震、爆発、飛行機事故が起きたのか? 大規模な公益企業では、重要な職員は遠く離れているために地震を感じることはできないが、それでも何が起きたかを知る必要がある。
・ 被災地域はどこか:被災場所は対応に着手するために必須の情報である。
・ 発生被害及び障害の規模:これは公益企業の職員にとって最も重要な情報である。被害の程度は彼らの対応努力に影響するだけでなく、職員の家族や家庭に脅威を与える可能性があるために職員自身も影響を与える。

 公益企業の職員は、消防署と警察署からの報告、現地職員や顧客からの現場報告、マスコミ発表などの従来の情報源から前述のような緊急対応情報を集めることに熟練している。しかし、公益企業の対応は、公益企業(及び他の緊急対応機関)の意思決定プロセスをスピードアップするために迅速に提供される追加データや情報によって大幅に改善することができる。必要なことは、リアルタイム及び準リアルタイムの地震データに基づく最新の科学・工学情報を利用して、公益施設、さらには主要輸送ルート及び顧客の建物など、その他の関連建造物被害状況の正確な記述を速やかに明らかにすることである。このような知識によって、公益企業の意思決定者は自らの組織が直面している被害状況に対処するために最適な措置を講ずることができる。

 基本の地震データ(強力な地震動の記録や地域のブロードバンド地震計ネットワークの記録など)は、場所の座標、焦点深度、局地マグニチュード、焦点メカニズム、モーメント・テンソルとモーメント・マグニチュード、余震場所と発生率、構造上の関連などの地震情報を引き出すために使われる。また、強震動データの分析によって、各計器が置かれた場所のピーク加速、速度、ずれと反応スペクトルの縦座標、さらに地震動パラメータの等高線地図、事象に特有の減衰などが追加される。これらの情報は直接利用するか、あるいは地震によって影響を受けた公益施設や構造環境の一部にじかに対処する追加情報に変換することができる。図1は地震データ及び情報と、次のセクションで論じられる公益企業の連続した対応の関係をわかりやすく説明するものである。

 

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