jishin

EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国における地震被害軽減に関する公共政策
 

XIII. 地方自治体
 州政府は、市・郡当局に対して土地利用や建築基準、州政府ビルの建設やインフラの建設に関する権限の大半を委譲している場合が多い。一部の州は、土地利用や建築基準などの措置を義務付けているが、こうした措置について市・郡当局に任せている州政府もあり、まったく関知していない州もある。

 地震対策やその被害軽減策に真剣に取り組んでいる地方自治体の例として、カリフォルニア州バークレー市を挙げることができる。同市は市民投票で、地震及び火災における被害軽減対策費として2億6200万ドルの借入れを3分の2の多数で決定した。

・ 総合計画−同市は、カリフォルニア州都市計画法に従い、安全原理に基づいた総合計画を策定する。この場合の安全原理とは、地震の危険を確認しそれに対処することを含んでいる。安全原理を含めて計画はすべて、市当局が入手する最新情報に応じその都度改定される。市当局は地滑りや火災、河川の氾濫、液状化現象の危険性がある地域の地図を保有する。
・ 建築基準−同市は、カリフォルニア州法に従い、同州建築基準及び同基準の地震条項を適用、執行する。
・ 同市は、市内のURM建築物を特定し、その所有者にこれを通知すること。市条例は、所有者に対してこれら建築物の改築を義務付けるものである。
・ 耐震性で問題のある建築物−同市は、補強工事を実施していない石造建築物のみを大規模地震での耐震性に問題があると特定しているわけではない。当局は、コンクリートの傾き(concrete tilt-up)やフレームに構造的な傾き(moment frame construction)のある建築物すべてに加え、耐震性を欠いているとみられる1階部分の強度が弱い建築すべて、地震の際の耐性に問題があるとみられるような建物に典型的に使用される材料や外形などについて、戸別 調査を実施した。同調査リストは約2000件を収録しており、将来、民間部門での改築計画の指針となるだろう。
・ 公共建築物−バークレー学区連合会は、父兄らの不安に応える形で建築専門家による各学校校舎の強度評価を実施、強度補強計画を完了した。市当局は、市所有の建築物の耐震性も考慮に入れ、市当局による補強工事が消防署7カ所で実施されたほか、新たな安全建築物1棟を建築中のほか、基盤隔離技術による市庁舎の改築や市立図書館の補強工事が実施されている。
・ 民間住宅−市当局は市内の住宅が震災を受ける危険性を認め、新規購入者が住宅購入時に強度補強工事を実施するよう奨励する制度を設立した。市当局は、増強工事を実施した所有者に対し、住宅譲渡税1.5%のうち半分を返却することとしたのである。
・ 市民訓練−同市の「市民緊急対応訓練」(Citizens Emergency Response Training=CERT)計画により、多数の住民が震災、火災、洪水への対応と被害軽減訓練を受けている。

 同市の災害対策を記すことができるのは喜ばしいことであり、また、これにもし不満があったにしても、これ以上進んだ政策を取っている他の多くの市や郡についてここで述べることはできないが、連邦や州政府はなお、地方自治体の大多数がこうした行政を推進するように政策的な働きかけの努力を続ける必要がある。地方自治体との協力が非常に重要な理由は、こうした地方自治体が存続することこそ、災害時の対応や復旧への適切な対処にとって必要な機関である。また、市当局は、大半の建築物に大きな影響力を持つ建築基準法規の制定に責任があり、このことも地方自治体との協力が重要な理由となっている。このことは、今後の災害対策の方向性を考えるうえで強調すべきである。

 

前へ 】【一覧へ 】【次へ


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.