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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国における地震被害軽減に関する公共政策
 

XII.既存建物の危険度
 これまでは政府所有の建物に対する被害軽減が焦点となっているが、米国内の建物の大部分は民間所有である。地震対策条項が数十年にわたって義務付けられているカリフォルニア州でさえも、被害が多く発生するのは民間の建物になることを予測する必要がある。こうした民間の建物の大半は、近代的な地震対策規約の恩恵を受けないで設計・建築されている。年数による基準(the date code)は、制定されたものの、その基準や施行の厳格度は州ごとや、州内でも地方自治体ごとに異なる。「潜在的に危険がある」とみなされている建物の形態は、よく知られている。これは、地震に対する耐震性が低く、居住者に大きな脅威を及ぼす形態である。これらの建物は、補強されていない石造壁の建物、補強されていない石造壁の有無に関係なく非延性のコンクリートフレームがある建物、コンクリートごと傾いた建物、規定に大きく違反して建築にも欠陥構造がある建物や、地面 が破損する可能性がある地域に位置している建物などが挙げられる。

 FEMAは、既存建物の分析や補修に関するガイドラインの作成を支持することで、指導力の責任を行使している。FEMA273と274(NEHRP Guidelines for the Seismic Rehabilitation of Existing Buildings and its Commentary)として知られるこれらのガイドラインは、35カ所の建物で試験されている。また、米民間工学者協会(the American Society of Civil Engineers=ASCE)は、そのガイドラインの内容を一定のフォーマットに変更する作業を開始して、全米規模での票決を準備している。これらが完了すれば、この新基準が全米の建築基準に組み込まれる。

 米国では、耐震に必要な鉄骨を持たない石造の建物が多数建設されてきた。これまでに発生した多くの地震は、これらの建物に損害を及ぼし、マグニチュード6を下回る地震においてさえ、生命に危険がある打撃をもたらす可能性があることを示した。これは全米規模の問題で、特に米国の中部と東部で顕著である。米中部と東部では、1993年にロングビーチ地震が発生して、カリフォルニア州ではこの種の建物の建築が禁止された以降も、この形態の建設が引き続き行われた。

 カリフォルニア州議会は最初、1979年にこれらの建物の使用継続についての懸念を表明した。同年には、地方自治体にこの問題を対処することを促す法律が成立した。これらの建物の耐震性の低さが懸念されるものの、カリフォルニア州は、広範囲な計画を制定して地方自治体の行政に干渉することは控えている。6年を経ても、進展はほとんどない。これらの建物の約25,000戸が使用されており、数カ所の都市だけで大きな進展があるに過ぎない。

 この結果や、1985年のメキシコシティー地震による被害の報道がきっかけとなり、1986年には新法案が通 過した。この法律は、カリフォルニア州で最も危険な地域における366の地方自治体、337の都市、29の郡に対し、すべてのURMを確認し;所有者に危険があることを通 知し;1990年1月1日までに被害軽減計画を採用することなどを要求している。各都市と郡は、義務付けられている規約とこれを順守する計画からなる、被害軽減計画のレベルを設定することが許可されている。現時点で、366の地方自治体のうち321が、この法律の最低基準を達成している。約243の地方自治体は、被害軽減計画を施行しており、施行されている計画のうちの130は義務化されており、順守期限を設定している。1万戸を上回る建物が、30億ドル超の民間のコストで補強されている。また、さらに1万戸が被害軽減計画の適用を受けて、向こう数年間で強化されることになる。州法はまた、強化されていない石造物件を売却する所有者に対し、建物の危険性を潜在バイヤーに明らかにするよう求めている。危険の開示は、耐震性の向上面 での価値を与え、所有者に対しては、各自の決定面での危険を考慮させることになる。この計画は、連邦レベルでの調査と指導力の重要性、公共面 の安全に対する州の責任の遂行、地元で容認できる被害軽減計画を作成するためにそれぞれの権限を行使している地方自治体などの状況の好例である。

 

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