XII.既存建物の危険度 これまでは政府所有の建物に対する被害軽減が焦点となっているが、米国内の建物の大部分は民間所有である。地震対策条項が数十年にわたって義務付けられているカリフォルニア州でさえも、被害が多く発生するのは民間の建物になることを予測する必要がある。こうした民間の建物の大半は、近代的な地震対策規約の恩恵を受けないで設計・建築されている。年数による基準(the date code)は、制定されたものの、その基準や施行の厳格度は州ごとや、州内でも地方自治体ごとに異なる。「潜在的に危険がある」とみなされている建物の形態は、よく知られている。これは、地震に対する耐震性が低く、居住者に大きな脅威を及ぼす形態である。これらの建物は、補強されていない石造壁の建物、補強されていない石造壁の有無に関係なく非延性のコンクリートフレームがある建物、コンクリートごと傾いた建物、規定に大きく違反して建築にも欠陥構造がある建物や、地面 が破損する可能性がある地域に位置している建物などが挙げられる。
FEMAは、既存建物の分析や補修に関するガイドラインの作成を支持することで、指導力の責任を行使している。FEMA273と274(NEHRP Guidelines for the Seismic Rehabilitation of Existing Buildings and its Commentary)として知られるこれらのガイドラインは、35カ所の建物で試験されている。また、米民間工学者協会(the American Society of Civil Engineers=ASCE)は、そのガイドラインの内容を一定のフォーマットに変更する作業を開始して、全米規模での票決を準備している。これらが完了すれば、この新基準が全米の建築基準に組み込まれる。