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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国における地震被害軽減に関する公共政策
 

VIII.NEHRP協力
 NEHRPは共同計画である。その目的は、各機関がこの計画を他の機関の支援となるように実行すれば、より効果 的に達成することができる。4つの独立した機関が異なった技術、知識、資源、関係などを提供している。これらの機関は互い協力することによってその製品の価値を高めた。

 この協力の例として、米国の地震設計地図の作成が挙げられる。NSFの地球科学計画とUSGSは活断層を確認し区分したり、断層から地震の振動の波が伝わるにつれて、ゆれが小さくなる特徴をつかんだり、地質と地震のゆれ関係を理解したりするため、調査を実施した。USGSの科学者は、同じ発生確率での地震危機地図を作成した。この地震危機地図は最高の科学と判断を駆使した科学的製品としてコンセンサスを得ている。地震地図は危険度分析の研究に利用することができるもので、工学設計による建築の基準を作成するのに使うものではない。

 FEMAはまた、この科学的な地震地図を震災に対する建築の基準や構造的な工学設計に適合するようなフォーマットの設計地図に変換するため、BSSCにも資金を提供した。   BSSCは民間の技術者を使って、この地図に手を加え、変更した部分が建築基準に反映されるようにした。例えば前にあった5つの地震「ゾーン」に関する概念は、2つの期間のスペクトル加速(低くてがっしりした建物は0.3秒、高くて柔軟性のある建物は1.0秒)を示した地図に置き換えられた。大地震の再来の周期についても米東部と西部地域間の状況の違いについて言及された。米東部地域における建物の倒壊の設計基準として、50年内に2%の可能性で起きる地震(2500年に1回の確率の周期で発生するもの)が採用された。大地震が頻繁に発生しているカリフォルニア州については、50年内に10%以上の割合で発生する地震(475年に1回の確率の周期で発生するもの)が採用された。断層近くにある地域の大きなゆれをしめす反応価値(Response Value)は「シーリング」、つまり最大となっている。一部の地域については、すべての建物が満たす必要があるゆれの水準は「フロア」、つまり最低となっている。この設計地図は、近く発表される予定の「国際建築基準2000」(International Building Code 2000)で用いられている。

 

IX.広範な政府計画
 地震の被害軽減に関する連邦政府の計画や政策は、NEHRPの政策や計画よりも広範なものになっている。多くの機関は地震による危険に対応した計画を実施しているが、連邦機関が所有する施設や計画は地震による危険にさらされている。計画向けの調査や支出、施設への投資などは、HEHRPの年間支出を上回っている。この点を説明するため、いくつか例を挙げる。

・ 米陸軍工兵隊は、ダムを設計、建設、管理するものの、これらのダムの多くは地震による危険が懸念される地域にある。
・ FEMAは被害からの復旧や被害軽減のための資金提供計画、プロジェクト効果構想(Project Impact initiative)などに資金を提供している。
・ 退役軍人局は退役軍人のための病院や住居を全米に建設し、運営している。
・ 共通役務庁は事務所ビルを建設し、所有するほか、リースしたり、運営したりしている。
・ 連邦エネルギー規制委員会は発電のための民間ダムの免許を発行している。
・ 運輸省は州に対してインターステート・ハイウェイを建設し維持するため、各州に資金を提供しているほか、向こう6年間にわたって国内の陸上輸送システムの地震に対する耐久性の改善に向け調査を実施するため、MCEERに年間200万ドルを支出している。

 ホワイトハウスにある科学技術政策局(Office of Science and Technology Policy)は1996年に、これらの広範な連邦政府の利益や政策を認め、FEMAに対し地震計画に対する利益を最大にするため、指導力を行使する指示を出した。全米震災被害軽減計画(National Earthquake Loss Reduction Program=NEP)がそれで、作成段階にある。FEMAとNEHRPの機関は他の複数の機関と協力して、共通 の関心事項を定義し、各機関がNEHRPの関係機関によって開発された技術や各機関の経験から利益を得るためのメカニズムを開発している。連邦政府の政策は地震に対する責任を持つすべての機関に対し、被害軽減に向けた計画の策定に参加し、任務を果 たすよう動機付けることを目標にしている。

 

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