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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国における地震被害軽減に関する公共政策
 

VI. 国家政策
 連邦政府は、地震に対して大きな責任を持っており、全国の被害軽減の対策に対して多額の支出をしている。しかし、個人主義、「ホームルール」、州の各種権利などにより、中央政府による厳格な管理の統一された地震安全計画の実施は不可能になっている。こうした状況から、地震の危険への対策の成功には連邦政府の指導力や唱導の役割が重要となっている。命令よりもインセンティブや情報の提供、関連政策の構築の方がより効果 的な政策となっている。したがって、連邦政府の役割は、調査や技術移転により知識を高めること。理解を高めることにより州、地方自治体、民間部門の被害軽減努力を振興すること。誤解や無知を解消し、手法や助言を提供すること。被害軽減のためのインセンティブを提供すること等になる。インセンティブとしては、復旧の一環としての被害軽減を促進する被害復旧政策や、被害軽減のプロジェクトを実施する州や地方自治体の支出に見合う危険被害軽減資金の供与である。

 さらに、連邦政府は、被害を被り易い施設や計画に対応することによって、他分野に被害軽減の重要性の模範を示すことや、耐震技術の先駆者となることが可能である。連邦政府は、連邦援助を受け入れた機関に対して、耐震基準を満たすことを義務付けることによって、その投資を守ることが可能である。例えば、州がフリーウェイ建設のために、連邦交通 基金を使用する場合には、連邦運輸省の承認した基準に適合するか、それを上回る基準の耐震基準を使用しなければならない。米国で建設される実質的にすべての高架ハイウェイは、耐震基準を満たす必要がある。連邦政府の政策では、連邦政府から資金を受けたり、支持を受けたり、監督されるすべての新規建築物は、耐震基準を満たすことが義務付けられている。

 

VII. 国家地震災害軽減計画(National Earthquake Hazards Reduction Program)
 連邦政府は過去数十年にわたり、地震防災策を積極的に進めている。中でも、米地質調査所(US Geological Survey=USGS)、国家科学基金(National Science Foundation=NSF)、その他の機関による調査への資金援助に力を入れている。米議会は1977年に全米地震災害軽減法(National Earthquake Hazards Reduction Act)を可決し、目標設定と予算承認の上限がある計画として、全米地震災害軽減計画(National Earthquake Hazards Reduction Program=NEHRP)を作成した。NEHRPの目的は、地震による人的・物的な危険を軽減することにある。NEHRPは、NSF、USGS、FEMA、全米規格・技術協会(National Institute for Standards and Technology=NIST)の活動を一つの共同計画に統合したものである。    NEHRPはこの20年間で、地震予知に重点を置いた調査専門の計画から、工学技術の移転や地球科学、行動科学に重点を置いた多角的な調査計画へと発展した。

 NEHRPの機関は現在、戦略計画を作成中である。この計画は、「地震被害軽減のための知識の活用:全米地震災害軽減計画」(Using Knowledge to Reduce Earthquake Losses: The National Earthquake Hazards Reduction Program)と題されている。この計画は草案段階にあり、承認されてはいないが、この計画の長期的な戦略方針が示されている。この活動は使命により明確化されている。

NEHRP戦略計画草案には、以下の4項目の長期目的が含まれている。
・ 地震被害軽減のための業務や政策実施の促進
・ 施設やシステムの地震脆弱性低減のための技術向上
・ 危険認識・危険評価手段やその利用方法の向上
・ 地震や、地震による影響や結果への理解を深める

現会計年度のNEHRP計画への予算は以下の通りとなっている。

機関
1999会計年度予算配分(ドル)
USGS
48,773,000
NSF  
29,400,000
FEMA
18,902,000
NIST
2,060,000
合計
99,135,000

 連邦政府の地震政策は、調査に重点を置いている。NSFとUSGSの調査は、基礎調査と実施の応用調査に基づいた新たな知識と予測の開発の中心となる。両機関は、ワークショップ、教育計画、民衆への情報提供活動などを主催あるいは資金援助したり、調査内容を専門家が活用しやすい文書形式で作成するなどして、知識の移転に大きく力を入れている。 NSFは地球科学、工学、行動科学を調査する個別 の研究家や調査機関に対する援助も行っている。

 

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